蘇生スキル
指男は身体を引き裂くような膨大な力を感じていた。
自分のなかで自分の知らない変化と進化が起こっている。
自覚するのに時間はかからなかった。
おおよその原因はわかる。デイリーミッションに違いない。
恐る恐る自身のステータスウィンドウを開いた。
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赤木英雄
レベル307
HP 591/2,081,741
MP 3,123/480,123
スキル
『フィンガースナップ Lv6』
『恐怖症候群 Lv8』
『一撃 Lv6』
『鋼の精神』
『確率の時間 コイン Lv2』
『スーパーメタル特攻 Lv8』
『蒼い胎動 Lv3』
『黒沼の断絶者』
『超捕獲家 Lv4』
『最後まで共に』
装備品
『蒼い血 Lv3』G4
『選ばれし者の証』G3
『迷宮の攻略家』G4
『アドルフェンの聖骸布』G3
『血塗れの同志』G4
『メタルトラップルーム Lv2』G4
『貯蓄ライター』G3
『千式メタルキット』G5
『夢の跡』G5
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(いや、俺をバケモノに改造すんなって)
指男は心の中で叫び、スッと立ち上がろうとする。
「──動くなって言ったよな?」
(スキル発動──『銃弾の雨 Lv6』『虚弱体質 Lv4』『精密射撃 Lv4』『市街戦 Lv2』『必中』)
シロッコは必殺コンボを起動した。
スキルをかけあわせた鉛の死騒──
無数の銃弾が死にかけの指男に襲い掛かる。
(やば、いまHP591しかないんだけど? あれ死んだ?)
余裕をかましていた指男氏、いきなりの大ピンチ。
これにはデイリーミッションもブチぎれ寸前だ。
「ぎぃ」
「っ、ぎぃさん!」
銃弾の雨のまえに突如として黒い人型のモンスターたちが現れた。
黒沼の怪物たちである。怪物たちは銃弾を体で受け止める。
その数は優に20体を越え、どんどん増え続けている。
「数が増えているだと? 眷属がさらに召喚を行えたということか。だが、質量なんて関係ないんだぁ、俺の『
シロッコはトリガーハッピーになりながら、黒沼の怪物たちを次々と撃ち殺していく。
凄まじい火力を誇る
黒沼の怪物たちは厄災の軟体動物より武器を与えられ反撃をはじめる。
シロッコは火炎放射のようなマズルフラッシュを炎の刃のように形態変化させると、近接戦にも対応しだし、余裕をかんじさせる動きで黒沼の怪物たちを焼き斬っていく。近場が無理なら距離を取るしかない。
Aランク探索者をあしらうほどのチカラを備えた厄災の眷属でさえ、Sランク探索者『カターニアの砂塵』シロッコの力と『
ただ、時間稼ぎははそれで十分だ。
「ありがとうございます、ぎぃさん」
指男は黒沼の怪物たちが戦ってくれているあいだに安心してスキルを発動する。
「スキル発動──『黒沼の断絶者』」
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『黒沼の断絶者』
黒沼からの侵略に抵抗した証。
あなたは世界を保つひとつの楔となった。
即座にHPとMPを最大まで回復させる。
720時間に1度使用可能。ストック2。
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指男は祖父母の家の裏庭ダンジョンでダンジョンボス『黒沼に埋積した悪意』を倒した際に手に入れたとっておきのスキルを使用した。
全身の傷がみるみるうちに癒されていく。
『
スキル発動から再生完了まで実にまたたき一回分ほどの時間しか要していない。
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赤木英雄
レベル307
HP 2,081,741/2,081,741
MP 480,123/480,123
スキル
『フィンガースナップ Lv6』
『恐怖症候群 Lv8』
『一撃 Lv6』
『鋼の精神』
『確率の時間 コイン Lv2』
『スーパーメタル特攻 Lv8』
『蒼い胎動 Lv3』
『黒沼の断絶者』
『超捕獲家 Lv4』
『最後まで共に』
装備品
『蒼い血 Lv3』G4
『選ばれし者の証』G3
『迷宮の攻略家』G4
『アドルフェンの聖骸布』G3
『血塗れの同志』G4
『メタルトラップルーム Lv2』G4
『貯蓄ライター』G3
『千式メタルキット』G5
『夢の跡』G5
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銃声と黒い肉片が飛び散るなか、指男は起きあがり、厄災の禽獣の身体を指先で軽やかになぞった。冷たくなり、真っ赤な命がこぼれ切ってしまった身体。
白き凶鳥を見下ろす眼差しは慈しみに溢れている。
指男は新しいチカラを使うことにした。
「ぎぃさん頑張ってますよ。いつまで寝てるんですか、シマエナガさん」
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『最後まで共に』
眷属は主人のために尽くす
主人は眷属に応えねばならない
眷属を蘇生する
消費MP100
解放条件 厄災と心を通わせる
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指男の背後に黒い
凶鳥へそっと添えられていた指先から黒い稲妻がビヂリッと流れた。静電気が流れたようでいて、その勢いは雷のように力強い。
暗い波動は白い鳥のなかへ届き、超越的な力でもって崩壊してしまった魂を構築し直す。
「ちーちーちー!」
厄災の禽獣が息をふきかえし、再び空を飛びはじめた。
指男の背後の空間に浮き上がっていたハイロゥがほころびていく。
シロッコは黒沼の怪物をちょうど殲滅しをえて、その様を目撃してしまった。
「ありえねぇ……蘇生スキルだと……っ、存在したのか……!」
シロッコは驚愕に目を見開いていた。
この世に不思議な力は数あれど、ソレだけはとてつもなく貴重だ。
特に”死を覆す物”はあれど、”死を覆す者”はいない。
世界を旅したシロッコをして初めて目撃した。──本当の奇跡を。
ひと仕事やり終えた厄災の軟体動物が指男の肩によじ登る。
また空を飛べて大変にご機嫌な厄災の禽獣は「ちーちー♪」っと飛んできた。ちいさくポケットサイズに変身すると指男の胸ポケットに戻って来た。口には指男のサングラスをくわえている。拾って来てくれたらしい。
「ありがとうございます、シマエナガさん」
「ちーちーちー♪(訳:これで謹慎解除に違いないちー!)」
シロッコへ視線を移す。指男はサングラスを受け取り、ゆっくりと掛けながら尋ねた。
「シロッコ、あんた覚悟はできてるか」
「貴様はいったい……」
シロッコは首元のペンダントにそっと手を伸ばした。
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