盗品披露会



 シマエナガさんとぎぃさんが何やら見知らぬ異常物質アノマリーをもっています。ぎぃさんはポケット異空間に隠していたらしいです。シマエナガさんはもふもふの中かな? よくわかりません。謎です。


「こらこら、まったく何を持ってきたんですか」

「ちーちーちー」

「ぎぃ」


異常物質アノマリーは一点物の稀少性抜群の品物じゃ。奪ったとしても、財団探索者が使えば足が着くぞ」

「ですよね」

「売るにしても財団に査定にだした段階でデータベースと照合するから、一発でバレるしのう。金に換えるならやはりブローカーに流すしかないわい」


 なんかやたら場慣れしたコメントくれるドクターがいるんですけど。


「ドクター、ました?」

「え? な、なんのことじゃ。何知ってるのか全然わからんのじゃけど。じゃけど?」

「ぎぃさん、お願いします」

「ぎぃ」


 黒触手がドクターをぶっ叩いた。


「研究費を稼ぐために……ブローカーに『ムゲンハイール』の前身……『チョットハイール』を売ったことがある……」


 ぎぃさんの洗脳状態に入り、虚ろな眼差しでドクターは自白する。

 やることやってます、このじいさん。


「でも、一回だけじゃ……本当じゃ……そのあと、『チョットハイール』が爆発してブローカーに殺されかけてからは……悪い事しとらんのじゃ……」 


 ふむふむ。

 洗脳状態で語っていることと、爆発したあたりが真実味あるので許してあげましょう。てか、俺も他人のこと言えた義理じゃないので。


「ぎぃ(訳:洗脳解除)」

「はっ! わしは今いったい何を……!」


 さて、この異常物質アノマリーたちどうしますかね。

 大賢者修羅道さんの言葉に従えば、シマエナガさんとぎぃさんの養育費として、100億円ほど貯める必要があるので、お金をつくるためにダンジョンブローカーに売りに行ってもいいんですけどね。

 せっかくなんで『大ムゲンハイール ver6.0』の『合成』機能をもっと使ってみようじゃありませんか。


「ほう、これは銃かな? シマエナガさんが古そうな銃持ってました」

「ちーちーちー」

「ほう、それはトンプソン・コンテンダーじゃな」

「コンテンダー? あ、そういえば俺これに撃たれたんだった」

「ああ。じゃが、これはアレじゃな、あの忌々しい天才発明家が暇つぶしに組み上げたとかいうダンジョン仕様のコンテンダーじゃな」


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 『ダンジョン・コンテンダー2001』

 後装式シングルアクション拳銃

 多様な弾丸を放てるのが特徴

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 どうやら、コンテンダーという名前の銃があるらしいです。

 ドクターいわく、いろいろ撃てるから魔法銃を使う探索者は、状況への適応のためにこれを一丁忍ばせておくことが多いみたいです。シロッコも基本に忠実で一丁持ってたらしいですね。


「ちーちーちー」

「あ、まだ、なんかぶんどって来てますね」


 シマエナガさんがくちばしにベルトのような物をくわえていました。

 ベルトには沢山の銃弾がはまっています。映画でカウボーイがでこんな腰に巻き付けてるの見たことありますなぁ。

 シロッコの所持品で間違いないでしょう。

 スーツの下にこんな物つけてたのか。いや、あの四次元ポケットみたいなジャケットほうかな? もう帰っちゃったし、服も燃え尽きたので確かめる方法はないですけど。


「なかなか凄いレパートリーじゃな。この弾の種類、普通はこういう揃えかたはしないものじゃ」


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 『トニ・デスペラード燃焼弾』

 猛烈な火属性ダメージを与える

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 『トニ・デスペラード冷却弾』

 猛烈な氷属性ダメージを与える

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 『トニ・デスペラード爆裂弾』

 猛烈な爆破属性ダメージを与える

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 『トニ・デスペラード雷光弾』

 猛烈な雷属性ダメージを与える

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 『トニ・デスペラード発狂弾』

 猛烈な発狂系精神ダメージを与える

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 『トニ・デスペラード喪失弾』

 猛烈な喪失系精神ダメージを与える

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 全部同じに見えるんたけど、ベルトにはまっている弾丸はさまざまな効果を持っているらしいです。共通してるのはダンジョン用の弾丸ということだけ。


 シロッコから奪ったのは以上かな?

 思えばあいつのジャケットをまさぐればもっといろいろあったんだろうなぁ……みぐるみ剥がして全裸にしてから消し炭にするべきだったかな? 


「ちー(訳:鬼畜外道なこっとを考えている顔ちー)」


「ずいぶん種類があるのう。通常のダンジョンに挑む探索者はここまで多様な攻撃手段を用意しないものじゃ。対人を想定しているからこその精神系ダメージを狙った弾丸も持っているのじゃろうな」

「属性弾も対人ですか?」

「じゃろうな。防御系スキルを使われた時、氷の盾なのか、炎の盾なのかで有効な属性攻撃は変わってくるものじゃ」

「でも、俺は特に撃たれませんでしたけど」

「わしは戦闘のことはなんも知らんからのう。精神系なら対人に有用なきはするが……シロッコはおぬしが並外れた精神力の持ち主だとわかっていたのかもしれんな」


 やはり、パワー仲間だった。

 パワーとパワーは共鳴しあってたんですね。完全に理解しました。


 ところで、ドクターが心なしか賢く見えます。気のせいでしょうか。気のせいだね(即断)


「ぎぃ」


 ウラジーミルのほうからは、主にぎぃさんがぶんどってました。

 

 『魔法剣 フォトンエディション』1点

 『デスペラードの強靭剤 25』1点

 『マッスルPP』3点

 『回復薬 3,000』8点

 『回復薬 4,000』5点


「ぎぃ♪」


 めちゃくちゃ奪って来てました。

 本当に仕方のない子です。


「どれもダンジョン財団のダンジョン装備じゃな。どうやら、こやつは不安定な異常物質アノマリーに頼らず、効果のはっきりしたアイテムだけを使った戦闘を好んでいたようじゃ」


 へえ、そういう人もいるのか。

 性格出ますね。使っても安定して補給できる範囲で戦う堅実さ。

 たぶんFFだとエリクサー使わないんだろうね。わかる。


「まあ、単にダンジョンに愛されていなかっただけかもしれんがのう」

「愛されてないと異常物質アノマリー使えないんですか?」

「そもそも発見できないじゃろうな。それに、長く自分の手元に残らないのじゃ。いろんな運命のめぐりあわせで、どこかへ行ってしまう」

「俺は異常物質アノマリー無くしたことないですよ」

「おぬしはダンジョンに愛されているタイプの探索者じゃからな」


 何度か修羅道さんにも「愛され探索者さんですね!」とか言われたっけ。


「ちー!」

「ん、シマエナガさん、まだなにか持ってるんですか?」


 シマエナガさんが口のなかをもぐもぐさせている。

 こら、ぺっしなさい、ぺっ。


「ちっ!」


 それ舌打ち? 厄災の反抗期とか、パパ勘弁してほしいです。


 シマエナガさんの口から吐き出されたのは、得体のしれない物質でした。

 アイテム名は『魔女の枯指』となっています。

 

 指? これ指ですか?

 名前的に特級呪物の危険性もありますね。

 それとも対人侵入アイテムかな。

 有識者ドクターの意見をうかがいましょう。


「なんということじゃ……まさか『魔女の枯指』がシタ・チチガスキー博士のもとにあったとはな」

「なんか凄い物なんですか」

「詳細で十分に威力はわかるはずじゃ」


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 『魔女の枯指』

 隠匿はすでなく、すべて暴かれた

 ならばこそ泥の底に沈めるのだ

 二度とただ人の目に触れないように

 対象者を呪い、最後に使ったスキルを永久に封印する

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 うわあ。


「恨みを抱いている相手に対して、それを握りしめ、呪うだけで、その者のスキルを封印することができるのじゃ」

「恨みってどの程度の?」

「顔が気に食わない! と思っただけで、で十分発動条件を満たせるらしいのう」


 威力のわりに条件軽いな、おい。


「ただ、代償に使用者はなにかを支払うとされておる」

「なにを?」

「不明じゃ。使用者にしかわからないことじゃろう。だが、大切ななにかだとは言われているな。この手の話は、たいていろくでもないものじゃ」


 俺は『魔女の枯指』をかかげる。

 シマエナガさんの唾液が乾けば、これが骨と皮だけの枯れた人差し指だとわかる。根本から先は当然無く、爪は黒く変色して、鋭く尖っている。


 うむ、確かに、見た目からして邪悪な感じだ。

 これは使わないほうがいい気がするな。魂が呪われそうな気がする。


「それは、財団内でもわりと有名な呪われた異常物質じゃ。わしでも知ってるくらいじゃからな」

「へえ、なるほど……ブローカーに流したらお金になりそうな……」

「やめておけ。絶対にろくな場所に流れないぞ」


 確かに。

 こんな邪悪な物は合成して、もっと楽しい物に変えてしまいましょうかね。


 というわけで、クッキングタイム。

 さて、さっそく『魔女の枯指』を『大ムゲンハイール ver6.0』に放り込んで、クリスタルを十分に放り込んでっと。


「もうひとつの素材は何にしようかなぁ~。いっぱいあるから迷っちゃうなぁ。なんか面白い組み合わせないかなぁ」

「ちー!」

「「え?」」


 シマエナガさんが『大ムゲンハイール ver6.0』のなかに!

 そして、羽を器用に動かして、蓋を閉めただって?!


「し、シマエナガさん?!」

「なにを考えているんじゃ、この豆大福は……?!」

「ぎぃ」

 

 シ、シマエナガさーんっ!!!

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