敗北者の末路
どうもAランクにして、ブルジョワにして、プラチナ会員にして、工場長の赤木英雄です。
最強つよつよパワーモードを手に入れて見事にシロッコ氏を撃破しました。
代わりに千葉市民会館が犠牲になりましたが、まあ、それはそれ、これはこれ。僕はなにも悪くありません。はい、この話題終了ね。
「ってやばいって、吹き飛んだ市民会館の破片が町に降り注いどる!」
ふざけてる場合じゃないくらいやばいです。
チカラいっぱい地面を踏み切って空へ舞いあがり、指を鳴らしまくって瓦礫どもを吹っ飛ばし、あるいは蒸発させまくる。
あとは我が原初の相棒『選ばれし者の証』のチカラでなんとか被害者をださずいい感じにまとめてくれるだろう。
サイレンの音が町に響き渡ってます。
まるで大災害みたいですねぇ(※大正解)
いろいろ、現場がとんでもないことになっていたので、面倒なことに巻き込まれるまえに経験値工場に逃げ込むことにしましょう。
──しばらく後
逃げ込んで来ました。
久しぶりに帰って来た気がしますね。いやあ、激しい戦いだった。
千葉市街の入り口は市民会館跡から離れた下水道のなかにつくりました。
なのでバレることはないでしょう。
「はあ、死ぬかと思ったわい……」
『経験値のなる木』の植えられた菜園で、憔悴したドクターが膝を抱えてます。
経験値設備を自慢するパートに移りたいんですけど、それどころじゃなさそう。まだちょっとお預けかな。お預けなのかな?
「指男、おぬしとんでもない探索者だったんじゃのう」
「ふっふふ」
「まさか異常者の集団とうたわれるSランク探索者を打ち破ってしまうとはのう」
ドクターはやつれた顔を向こうへやります。すぐそこで黒沼の怪物たちに拘束され、ひざまづかされているロン毛の男がいますねシロッコです。はい、捕まえました。
シロッコの頭のうえにはシマエナガさんが乗っていらっしゃいます。
「ちーちーちーっ!」と、てしてし足先で意趣返し。まあね、シマエナガさんはいくらでも踏んづける権利ありますよ。
にしても死んじゃった時は焦ったけど、相変わらずふっくらしているようでなにより。デスペナルティとかあるのかなって思ったけど、特に変化はないですね。レベルも下がってないし。ただただ、白くてふっくらしていらっしゃいます。ふっくら。
ちなみにウラジーミル氏はすでにぎぃさんの触手プレイを受けたあとなので、すぐそこで棒立ちしています。洗脳済みです。今ならなんでも言う事聞いてくれます。一声かければ、ミニスカート履いてパンチラさせながら千葉市街を走り回ってくれることでしょう。いや、別にさせないけどさ。
「指男、いったいなにをするつもりなんだ……!」
おや、シタ・チチガスキーが威勢よく吠えてますね。
あ、彼も捕まえました。
「なにをするかなんて決まっているでしょう」
「ちーちーちー!」
「ぎぃ!」
話を訊く限りこいつはとんでもない大悪党らしいです。
生かしておく必要もないでしょう。
「外に出たらのらりくらりと上手くやりすごすんだろ」
そう言ってシタ・チチガスキーの目の前で指を鳴らすジェスチャーをして突きつけます。
「ぐっ……」
「あんたを裁くのは俺の指だ」
──パチン
我ながら軽やかな音。
「うぎゃああああああ──」
はい、消し炭。シタ・チチガスキーご臨終。
ちなみに燃えカスはしっかり魔法陣のうえです。
『貯蓄ライター』はデイリーくんの暴挙のおかげで、嬉しい事にパンパンになってしまっているので、俺がじっくりこっそり吸わせていただきます。プライベート経験値です(?)
「ちーちーちー♪(訳:謹慎解除したから経験値はちーのものちー♪)」
意気揚々とシタ・チチガスキーの経験値を取りに来るシマエナガさん。
待ったをかけるのは、この後輩、黒触手が空飛ぶ豆大福を捕獲します。残念エネガ。
「ち、ちー?!(訳:こ、後輩なんのつもりちー?!)」
「ぎぃ(訳:謹慎、別に終わってないですけど、先輩)」
「ちちちーち、ちーちちー!(訳:そんなはずがないちー! 絶対に解除されているちー! 英雄に確認するちー!)」
「シマエナガさん」
「ちー……!(訳:お願いちー……っ)」
「……今回だけですよ」
「ち~♪」
「ぎぃ(訳:行ってヨシ)」
という訳でシマエナガさん、謹慎解除です。
頑張ったからね。今回だけよ?
シマエナガさん経験値を獲得して大変に嬉しそうです。
でもレベルアップはしませんね。うーん。
こいつ経験値大したことないんじゃねえか?
シタ・チチガスキー使えないっすねぇ。
「う、ぅぅ、く、くる、しい……!」
おや、おやおやおや。
消し炭に変えたはずのしたシタ・チチガスキーが灰から復活しようとしています。どうにも指にはめている指輪が起点になっているようですねぇ。ん、って、これ異常物質じゃね?
「博士の蘇生系異常物質さ」
シロッコの声が涼しく響きました。
ロン毛の隙間から、鋭い眼光を通してこちらを見てきます。
「蘇生系異常物質?」
「博士のそれは俺のより高品質だ。より少ないペナルティで何度でも蘇るだろうな」
「情報どうも。何度も倒せるなんてお得じゃないですか(へっへへ、何度でも経験値とれるってことっしょ? なら、搾りかすになるまで搾れんじゃん)」
「……(お得、か。大犯罪組織を率いている割に、友人の名誉のためにそれほどに苛烈に怒りを表し報復をするか……義理堅いやつなんだな)」
あ。そうだ、どうせ復活するなら──いいこと考えちゃった。
メタル化させたら経験値増えるんじゃないかい?
「ぎぃ」
「ん、ぎぃさん?」
ぎぃさんが黒い触手をだして……復活したばかりの素っ裸のシタ・チチガスキーをぶん殴って臨終させましたよ。南無。
「あの……ぎぃさん? メタル化したいんですけど。シタ・チチガスキーが」
「ぎぃ」
あ、また、復活した博士をワンパンで……。
博士が声もあげずに即死しては復活して、ぎぃさんに経験値を吸われていきます。
ん-。頭脳派のぎぃさんのこと。俺の考える事なんてきっと思いついてるだろうし……なにか考えがあってやってるってことだろう。もしかして、博士は、というか人間は『メタルトラップルーム Lv2』には収納できないってことかな。
「ぎぃ(訳:人間をメタル化してもダンジョンダックスフンドをメタル化しても結局1日の経験値生産量は変わらない。ならここで叩いてしばいた方が気持ちよきな分、お得)」
まあ、シタ・チチガスキーって経験値的に大したことないっぽいし、全部ぎぃさんにあげちゃってもいっか。
「ちーちーちー!(訳:独り占めさせないちー!)」
そうは問屋が卸さないっとシマエナガさん。
はいはい、ふたりで仲良く分けてねっと。
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