経験値生産時代突入
『経験値生産設備 ver2.0』
威圧的な風貌のそのアイテム名を指でなぞり、詳細を開く。
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『経験値生産設備 ver2.0』
異次元の匠モートンの作品
1時間に1枚、黄金の経験値を生みだす
格納数 30/100
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黄金の経験値を生みだす……『冒涜の眼力』でこの機械でなにができるのかおおよそ理解している俺は、胸の高鳴りを押さえられなかった。
コンテナの正面には扉がついていて、中に入ることができる。
中には複雑怪奇な機械が積まれている。
地球人類の理解できる装置ではないのだろう。
とはいえ、俺の脳みそにはこの装置の仕組みがわかっている。
『冒涜の眼力』の驚くべき点は、その
奥には
今ちょうど、その鋳型に黄金の液体が注がれているところだ。
注がれた液体は、うえからプレス機のようなものが押し当てられる。
プレス機の駆動部位がもちあがると、そこには金色の板がピッタリ鋳型にはまっていた。
指先でつんつんとつつく。ちょっと温かい。
手に取る。形状は四角い金紙につつまれた板チョコレートみたいだ。
「これが『黄金の経験値』か」
「ちー!」
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『黄金の経験値』
強くなりたくば喰らえ
100,000経験値を獲得
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『先人の知恵 B』二冊分といったところか。
1時間で1つ生産されるということは、1日に24個。
24×100,000=2,400,000(240万経験値)
何もしなくても『先人の知恵 B』が48冊手に入るってことかい?
俺と、俺の眷属が受け取ると、プラチナ会員のチカラで10.0倍されるので2,400万経験値が継続的に我らチーム指男のものとなるわけだ。
恐ろしい。
あまりにも恐ろしい。
もし一日中、だらだら過ごしていても2,400万経験値が手に入るとしたら?
もう俺ダメ人間になっちゃうよ。
ずっと気持ちよくなって壊れてしまうよ、うっへっへ(※末期患者)
「ちーちーちー♪」
「だめです。いったん預かります!」
シマエナガさんが黄金の経験値を食べようとしたので、俺がパクっと食べてやりました。どうだ。人間さまを舐めるじゃないぞ。
ピコンっ!
レベルアップしました。
「ち、ちー?!」
「シマエナガさんには節度が必要です!(もぐもぐ)」
「ちーちーちー!」
「シマエナガさんは異常なんです!!」
「ちーちーちー!」
シマエナガさんは中毒者だ。
経験値への執着が強すぎる。どこかおかしいのかもしれない。
「シマエナガさんはしばらく無給生活です。メタルダックスフンドを乱獲したんですから文句はありませんよね」
「ぎぃ」
「ぎぃさんも異議なしと言ってます」
「ちー! ちーちーちー!(訳:意義ありちー!)」
シマエナガさんは経済制裁としてしばらくは無給生活です。
すこし前まで、空飛ぶ豆大福さんだったのに、いまでは空飛ぶバランスボール。
成長速度を加速させれば、すぐに東京の上空を覆い尽くす謎のもふもふ浮遊物質になってしまうのは火を見るより明らかです。
「こんなふっくらしちゃって。身体は嘘をつけないみたいですね」
「ち、ちー」
ちいさく縮むシマエナガさん。
今更スリムに見せようたって遅いです。
「まさかここに来て定期的な
①『メタルトラップルーム』による一日1匹、メタルモンスター。
②『経験値生産設備 ver2.0』による一日240万経験値
ん、そういえば、メタルモンスターってどれくらいの経験値を俺たちにくれているんだろうか。気になって来た。気になりすぎてこれでは夜しか眠れない。
もしかしたら『冒涜の眼力』を使えば、わかるかもしれない。
ただ、『冒涜の眼力』はクールタイム720時間の大技。
クールタイムの解決には10,000MPが必要だ。
「シマエナガさん」
「ちー?」
「ちょっと寝てていいですよ」
──20時間後
シマエナガさんをポケットに入れ、眠っていただき、MPを回復してもらう。
その間、俺は本業である探索者としてランニング狩場ルーティンをまわし、13階層へ初めて足を踏み入れていた。
とはいえ、モンスターに手こずることはない。
「カリバー」
──パチン
『フィンガースナップ Lv5』の最弱HP1 ATK500で爆破したとしても、ダンジョンダックスフンドは4回で消し炭になってしまう。
「はーい、どんどん消し炭にしちゃおうねぇ~!」
はっきり言おう。
余裕がすぎる。まったく命の危険を感じない。
「お、君は活きががいいね」
たまに猪突猛進してくる伊之助みたいなダックスフンドがいるが、そういうやつもヤクザキックを一撃お見舞いすると、10mくらいぼーんっと吹っ飛ぶので怖くはない。なんならそのまま光の粒子になってしまうし。
つまり、俺の蹴りが『フィンガースナップ Lv5』の最弱4回分──ATK2,000くらいと同じ威力という事になる。
俺の脚力もなかなか強くなってきたなぁ。
スキルとか使ってるわけじゃないから、単純にステータスの基礎値が13階層のモンスター相手には高すぎるということなのだろう。
ふっふふ、俺、もしかして結構強いんじゃないかな?
そんなこんなでクリスタルを集めてまわりました。
ただ、20時間狩場ルーティンをまわしても一度もレベルアップしなかったことだけが気がかりです。
レベルアップするには、13階層くらいじゃ効率が悪いと見て間違いないでしょう。
「ちーちーちー」
「あ、シマエナガさん、おはようございます」
「ちーちーちー」
シマエナガさんが起床されたので体調チェックです。
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シマエナガさん
レベル36
HP 25,523/25,523
MP 24,875/24,875
スキル
『冒涜の明星 Lv2』
『冒涜の同盟』
『冒涜の眼力』
『冒涜の再生』
装備
『厄災の禽獣』
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シマエナガさん20時間の睡眠でばっちりコンディションを合わせてきました。
流石です。これはもうその道のプロ言っても過言ではないでしょう(?)
『メタルトラップルーム』の短剣をとりだして、壁を斬りつける。
扉が出現し、足を踏み入れる。
通常、侵入者が入れば、自動的にモンスターが湧いて迎撃するが、所有者の俺の場合は襲われることはない。モンスターの湧きを設定し、好きなモンスターを湧かせることができるのだ。
というわけで、この20時間で新しくメタル化されたメタルダックスフンドくんに出てきてもらいます。
湖の底から湧いてきましたよ。
湧いてきたモンスターはこちらに敵意まるだし犬まるだし。
「シマエナガさん、お願いします!」
「ちー!」
俺の頭のうえにぽふんっと着地。
『冒涜の眼力』が発動します。
うおおおおおお、わかるわかるわかる!
わかるわかるパワぁぁぁあああああ! パワぁぁぁぁ……パワぁぁぁ……(残響)
はい。
宇宙のお知恵を借りた結果、おおよそ1,000万経験値だと判明しました。
プラチナ会員のチカラで10.0べえなのでメタルモンスター1体の
メタルモンスターの経験値が判明すると、必然的に今の自分がどれくらいの経験値を必要としているのかがわかります。
「さっき30体倒して……30億経験値……シマエナガさんに70%ピンハネされて、ぎぃさんに中抜きされて、俺のところに残りカスが入ってきて、で4レベあがって……うーん」
↓ メタルモンスター×30体=
↓ 3,000,000,000(30億経験値)
↓
↓ 3,000,000,000 ×0.7=
↓ 2,100,000,000(21億経験値)
↓ シマエナガさんのピンハネ分
↓
↓ 3,000,000,000-2,100,000,000=
↓ 900,000,000(9億経験値)
↓ 下々の者へ降りてくる分
↓
↓ 900,000,000×0.6=
↓ 540,000,000(5億4,000万経験値)
↓ ぎぃさんの中抜き分
↓
↓ 900,000,000-540,000,000=
↓ 360,000,000(3億6,000万経験値)
↓ 虐げられし赤木英雄の分
ええ……嘘でしょう……こうしてみると、マジでピンハネされまくてんじゃん。
Q.これは地獄ですか?
A.いいえ、ピンハネ天国です。
ねえ、厄災さんたち、あなたたち人の心とかないんすか?
ぎぃさんは有能だからいいとして、特にあんただよ。そこのもふもふさん。
「ちー?」
「ぐぬぬぬぬぬッ! かあいいッ!(敗北)」
まあ、過ぎたことは仕方がない。仕方ない……はぁ。
手元の財を増やすにはなにをすればいいか考えよう。
だけど、一番の正解は……収入を増やす、だろう。
まあ、一番難しいところではあるけど……俺は運がいい。
心臓のうえで艶やかに輝く『選ばれし者の証』を撫でる。
「ありがとう、ブチ。俺にこの理不尽を乗り越える力をくれたんだな」
『経験値生産設備 ver2.0』に、この『メタルトラップルーム』。
現在の俺のステータスはこんな感じ。
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赤木英雄
レベル151
HP 16,593/27,532
MP 3,021/4,739
スキル
『フィンガースナップ Lv5』
『恐怖症候群 Lv8』
『一撃 Lv6』
『鋼の精神』
『確率の時間 コイン Lv2』
『スーパーメタル特攻 Lv6』
『蒼い胎動 Lv2』
『黒沼の断絶者』
『超捕獲家 Lv3』
装備品
『蒼い血 Lv3』G4
『選ばれし者の証』G3
『迷宮の攻略家』G4
『アドルフェンの聖骸布』G3
『ムゲンハイール ver5.0』G4
『血塗れの同志』G4
『メタルトラップルーム』G4
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レベルは151。
ここまで来ると、普通の手段ではそうそうにレベルはあがらないみたいだ。
ゆえに、ここからは経験値の生産へ移行しようじゃないか。
経験値は稼ぐものではない。作るものだ。
というわけで世は経験値生産時代へ突入します。
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