血塗れの探索者・元チーバくん
爆炎を鼻先で突き破って、赤い閃光がタックルをかましてくる。
ATK2,000では赤い怪物を止めるには不足だったようだ。
飛び退いてタックルをかわす。
「血ィ場!」
すれ違いざまにスコップで思い切りぶん殴られた。
頬に鋭い痛みが走り、吹っ飛ばされる。
こいつもスーパーアーマーだ。体幹がめちゃ強いです。
ていうかなにより足が速い。さらになによりスコップ痛え。
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赤木英雄
レベル146
HP 13,521/22,523
MP 3,149/3,740
スキル
『フィンガースナップ Lv5』
『恐怖症候群 Lv7』
『一撃 Lv6』
『鋼の精神』
『確率の時間 コイン Lv2』
『スーパーメタル特攻 Lv6』
『蒼い胎動』
『黒沼の断絶者』
『超捕獲家 Lv3』
装備品
『蒼い血 Lv3』G4
『選ばれし者の証』G3
『迷宮の攻略家』G4
『アドルフェンの聖骸布』G3
『トラップルーム 湖』G3
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ダメージは4,000前後。
浅い階層で残りHPなんざさして気にしてないので、正確にはわからないが。
着地し、『蒼い血 Lv3』を刺してHPを回復する。
────────────────────
赤木英雄
レベル146
HP 22,523/22,523
MP 2,923/3,740
スキル
『フィンガースナップ Lv5』
『恐怖症候群 Lv7』
『一撃 Lv6』
『鋼の精神』
『確率の時間 コイン Lv2』
『スーパーメタル特攻 Lv6』
『蒼い胎動』
『黒沼の断絶者』
『超捕獲家 Lv3』
装備品
『蒼い血 Lv3』G4
『選ばれし者の証』G3
『迷宮の攻略家』G4
『アドルフェンの聖骸布』G3
『トラップルーム 湖』G3
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『蒼い血 Lv3』はそれ以前のバージョンと違って、一回の注射で全快できるのが優れたポイントだ。
「ぎぃ!」
「ちーちーちー!」
シマエナガさんもぎぃさんも狂ったように鳴きはじめました。
俺が殴られたことで、完全に敵として認識してしまったようです。
『黒沼の呼び声』で触手を召喚し、勝手に攻撃し始めてしまうぎぃさん。
「血ィ場、血ィ場」
スコップをふりまわし、触手と打ち合う赤い着ぐるみ。
重たい金属どうしのぶつかる腹の底に響く音。
火花が猛烈にまき散らされる。
これはホラーなのか、アクションなのか、コメディなのか。
どのみち狂ったような動作と速度で、スコップをふりまわす着ぐるみが怖すぎる。
「ぎ、ぎぃ」
「血ィ場」
合計150回。
ぎぃさんの触手による連撃をスコップ一本でさばききった。
血で錆びた先端は赤熱を帯びて、ジューっと煙をあげている。
「ぎぃさん、あとは任せてください」
「ぎぃ」
口もとから赤い液体をまき散らし、猛スピードでつっこんでくる。
完全に狂っていやがる。
探索者なのかもしれないが、もはや意思の疎通は不可能だ。
まともじゃない。これなら反撃しても正当防衛になるだろう。
やむを得ない。
HP200消費し、ATK100,000の『フィンガースナップ Lv5』で完全にご臨終願おう。
──パチン
爆炎に飲まれ、着ぐるみが烈火に包まれた。
ダンジョンの通路に亀裂が走り、高熱に通路の四方が真っ赤に火照る。
俺たちはその炎が燃え尽きるのを、油断なく見つめた。
「血ィ場」
その者は着ぐるみの隙間から血をだらだらと流しながら、火炎を肩で切って、どしりどしりと歩き出てきた。
ぺろんっと飛びだした舌が愛らしい、その口元を歪めている。
その時、落花生がひとつ、ころんっと地面に転がった。
まただ。さっきもこんなことがあった。
「ぎぃぎぃ」
「ん、なんですって、もしかして、落花生を犠牲にすることでダメージを肩代わりさせてるかも、ですって? 本当ですか、ぎぃさん」
「ぎぃ」
赤い犬は凶悪な笑みをうかべる。
口の中は空洞ゆえ、着ぐるみの中に詰まっているパンパンの落花生がちらりとのぞいている。
え。
なに、その落花生の数だけ倒さないと死なない、みたいな?
「血ィ場」
再び物凄い速さで接近され、スコップでぶん殴られ、宙を舞いながら、俺は絶望した。
落花生にそんな力があったなんて……。
そうだ。
思えば、落花生って名前には『落ちる花が生をなす』という意味にとれる。
おそらく昔の人が、この奇跡の豆を見つけた時「失われた命をとりもどす代償に、身代わりになるとは、まるで儚く舞い落ちる花のようだ」と思ったに違いない。
ゆえに奇跡の豆は”落花生”と呼ばれるに違いない。
「いいですよ、わかりましたよ……落花生のかずだけ命があるのだとしたら、1万回でも、10万回でも付き合いますよ。だって、撃ちまくってやればよ……いつかは限界が来るんでしょう?」
「血……血ィ場……」
着ぐるみの動きが止まる。
俺は『ムゲンハイール Lv5』を放り捨て、両手を開帳する。
こいつさっきATK2,000で落花生を1個使ってたよな。
つまり、残機が多い代わりに、HPは大したことないんじゃないのか?
──パチン
「血ィ場」
避けようと再度ステップする赤い犬。
「無駄です」
爆破される着ぐるみ頭部。
「血、血ィ場」
「俺のフィンガースナップの命中率は100%。理論上、どれだけ速く動こうとも決して避けることはできない」
「血ィ場……っ」
「さあ、ここから泥沼です。はじめましょう」
俺は最大の連続指パッチンでもって赤い犬を焼き尽くした。
──2時間後
(スキルレベルがアップしました)
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『蒼い胎動 Lv2』
人ならざる者の血を受け入れた証。
新しい命があなたの中でめぐっている。
5秒ごとにHPを1回復する
解放条件 蒼い血の浸食が進む
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『蒼い血 Lv3』打ちながら攻撃していたら、進化しちゃいましたね。
ドーピング中毒二段獲得です。本当にありがとうございました。
「血……血ィ、バぁ……」
ようやく着ぐるみは息絶えた。
蘇っては倒しての繰り返しだったが……いや、本当にしんどい。
指が取れちゃうかと思ったよ。
軽く3,000回くらいは殺したかもしれない。
「ん、これは……」
着ぐるみのぐてーん!っと伸びているところに、ひと際輝く金色のコインが落ちている。なんだろ、綺麗だな、拾おうっと(幼稚園児並みの思考)
どうやら
そのほかにもスコップにアイテム表示があったり、着ぐるみの中からクリスタルがぽろぽろ出て来たりする。
全部、この赤い犬の持ち物だろう。
「血ィ場……」
「あ、起き上がった」
着ぐるみはむくりと起き上がり、こちらを一瞥すると、しゅんと耳をさげ、諦めたように、トボトボとダンジョンの入口の方へ行ってしまった。
落花生全部なくなって、中身スカスカで、丸見えだった。
中に人は入っていなかった。
クリスタルとかスコップとか、いろいろ置いて行ってますけど……。
「ちーちーちー」
「ぎぃ」
俺が赤い犬を引き留めるよりもはやく、シマエナガさんぎぃさんが、
ぶっ倒して、装備もクリスタルも根こそぎ奪うとか。
めちゃくちゃ世紀末なことしてないでしょうか。
ここは怒りのデスロードかな?
シマエナガさん、ぎぃさん、本当にそれでいいんでしょうか?
「ちー♪」
「ぎぃ♪」
いいみたいです。
勝った者が正義らしいです。
俺は良くないと思うんだけどなぁ……。
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