ひたすらに進む者
こんにちは。
Aランク第61位探索者にして、総資産10億円越えブルジョワ探索者にして、プラチナ会員にして、経験値工場工場長をしております赤木英雄です。
本日は素晴らしい収穫があったのでご報告させていただきます。
はい、ドン。
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『貯蓄ライター』
経験値は貯蓄する時代です
507億5,253万4,744/9,999億9,999万9,999
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「ぢーっ!」
「ぎぃ!」
500億の経験値を獲得いたしました。
シマエナガさんもぎぃさんも大興奮です。
つい先ほどぶっ倒したメタルモンスターくんがこんだけ持ってたわけですが、いやはや、本当に悪い子ですねェ。気持ちよくなれる光る粉をこんなたくさん隠し持っているなんて、いやはや、本当に悪い子でしたよ、ええ。
ちなみに結構強かったです。
メタルなので生半可な攻撃が効かないと知ってたので、最初に『冒涜の眼力』で見てもらってから、攻撃しました。
HP 1,000万
DEF 1,000万
という驚異的なスペック。
防御1,000万とか頭イカれぽんちでしたね。
でも、まあ、スキルも成長していたので、キツくはなかったですけど。
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『スーパーメタル特攻 Lv6』
強靭な盾は厄介な武器である。
されど絶対に貫けない訳ではない。
15秒間、相手の防御力を100%ダウンさせる。
168時間に1度使用可能。
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まずこれ使いますね?
はい、防御力1,000万ダウンです。おつかれした。っす。っす。
あとはHP20,000を『フィンガースナップ Lv5』にぶち込むだけです。
ATK500:HP1
ATK10,000,000:HP20,000
はい、これでおしまい。
対戦ありがとうございました。
ご自慢の防御力ゼロにされて叩きのめされる気分とかインタビューしてみたかったですね、ええ。
おかげでスキルがちょっと進化しました。
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赤木英雄
レベル156
HP 11,151/32,523
MP 4,125/5,743
スキル
『フィンガースナップ Lv5』
『恐怖症候群 Lv8』
『一撃 Lv6』
『鋼の精神』
『確率の時間 コイン Lv2』
『スーパーメタル特攻 Lv8』
『蒼い胎動 Lv2』
『黒沼の断絶者』
『超捕獲家 Lv3』
装備品
『蒼い血 Lv3』G4
『選ばれし者の証』G3
『迷宮の攻略家』G4
『アドルフェンの聖骸布』G3
『ムゲンハイール ver5.0』G4
『血塗れの同志』G4
『メタルトラップルーム Lv2』G4
『貯蓄ライター』G3
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何が進化したかわかりますかね。
そう『スーパーメタル特攻』くんです。
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『スーパーメタル特攻 Lv8』
強靭な盾は厄介な武器である
されど絶対に貫けない訳ではない
15秒間、相手の防御力を100%ダウンさせる&最大防御力の20%HP上限をダウンさせる。
168時間に1度使用可能
解放条件 防御力10,000,000(防御力1000万を超える敵をキルする)
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防御力に特攻しすぎて、もはやHPを下げはじめるという意味わからない逆転現象が起きてます。防御力高いほど、HPダウン喰らうという悪魔の仕様です。使うのが楽しみですね……(暗黒微笑)
しかし、魔法陣のなかで倒せなったのはつらいです。
500億の経験値が2倍、つまり1,000憶になっていたと思うと、悔しい。
なんとか、経験値工場に引き込もうと頑張ってけど、向こうも結構腕っぷしがあって、しかも逃げまくるものだから、もう殺すしかなくなっちゃったわけです。
巨大なクリスタルもドロップしました。
査定が楽しみです。持ち運びが面倒なので経験値工場に放り込んでおきました。
ついでに
アイテム名は『千式メタルキット』です。
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『千式メタルキット』
メタルの機兵に搭載されている異次元機械
使用者の防御力を飛躍的に向上させる
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こちらは腕輪型の
とりあえず装着してみますかね。
何が起こるのかな。
ほう、腕輪が蠢いて、なんだか牙のような物がグワっと展開、俺の手首に突き刺さって体内に入ってきて……って、うわぁぁああああああ?!
なんじゃこりゃあああああ!
「ちーちーちー!」
「ぎぃ!」
「くっ、あ、どんどん体内に入ってくる……!」
皮膚の下を這いずりまわって、前腕から、上腕、肩、胸へ移動し、やがて心臓の近くで止まりました。
「はぁ、はぁ、はぁ……なんだ? 大丈夫か……?」
「ぎぃ」
ぎぃさんが俺の手首に触手を突っ込んできます。
とてつもない光景ですけど、意外と俺は冷静です。
「ぎぃ」
「え? 診断結果は?」
「ぎぃ」
「大丈夫? 本当ですか?」
「ぎぃ」
ぎぃ先生いわく問題ないとのことです。
傷口に唾つけとけば治るとか。適当かな?
「指男……いまとてつもない光景を見たような気がするのだが」
「気のせいですよ。それより傷は大丈夫ですか」
「ああ、おかげさまで快調だ」
暴力の人がむくっと起き上がってきました。
シマエナガさんが『冒涜の再生』を使ったことで、暴力さんもすっかり元気になりました。よかったよかった。
「指男……君はこれからどうするつもりなんだね」
「どうするもなにも、ただ探索をつづけるだけですよ」
「っ、まだ、先に行くつもりか?(訳:その強さでまだ満足していないのか?)」
「え? まあ、そりゃあ。まだまだこんなステージで満足できるわけないですよ(訳:ここ18階層ですよ? 全然まだ潜れるんで先行きますよ、そりゃ)」
「そうか……夢中こそが最強とは、よく言ったモノだな……指男、君にこれをあげよう」
暴力の人はルビーブローチの横の小さなバッジを外し、俺に渡してきます。
その真剣な眼差しから、大切なモノだとわかります。流石の俺でも。
「私の名は長谷川鶴雄。かつて国会議員だった者だ。このバッジは議員バッジ。長年の着用で、私の信念が宿り、
「そんな大切なものくれるんですか?」
「ああ。君のような探索者に持っていて欲しい。……それにもう私には必要のないものだ」
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『夢の跡』
志は堅牢で、されど脆い
だからこそ夢を抱き続けるのだ
あらゆるダメージを20%カットする
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『アドルフェンの聖骸布』に『夢の跡』を装着する。
黒と、赤と、血に錆びたブローチの横で、年季の入った議員バッジが静かに映える。結構胸元が賑やかになってきました。
「さて、では私はほかの探索者たちを助けるとしよう」
「俺も手伝いますよ」
「いいや、必要ない。君は君の道をいけばいい。人は走れるうちにしか走れない生き物なのだからね。だから指男、走りたまへよ」
「……わかりました。それでは。バッジありがとうございました。またどこかで」
「ああ! 応援しているよ、指男!」
こうして俺は18階層を抜けて、19階層へと降りた。
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──長谷川鶴雄の視点
指男が駆けていく。
背中を見送り、長谷川鶴雄は救助活動に移行した。
身体の方は問題なかった。
(『冒涜の再生』、欠損した魂に生命を吹き込まれるような、不思議な感覚だった。かと思えば麻薬型回復薬の使いすぎで壊死した細胞が、みるみるうちに蘇っていくのだから不思議なものだ。既存の回復理論とは大きくかけ離れた手法だな)
「指男はあんなスキルを回復として常用しているのか? ……はは、ははは、なるほど、なにもかもスケールが違うようだ」
長谷川鶴雄はその後、メタルモンスターとの戦闘で倒された探索者たちに応急処置を施した。
のちに救援がかけつけ、奇跡的に死者はひとりも出さずに探索者たちは無事に地上へと帰還することができた。
その晩、長谷川鶴雄は夜遅くに帰宅した。
居間では彼の好物の肉豆腐が、よく煮えた鍋で用意されていた。
「おかえりなさい、鶴雄さん」
「ああ、ただいま」
正義の議員はルビーブローチをそっと心臓のうえから降ろした。
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