襲い来るデイリーミッション



(デイリーミッションが更新されました)


 うちの子の急成長に不安になっているところへおかしなアナウンスが聞こえました。


 デイリーミッション更新って……更新も何も、さっき壁に穴を空けて『ショーシャンクの壁に』をクリアしたばっかだけどな。


 まだ外はお昼くらいだろう。

 1日経ってるわけがないし。


「デイリーミッション」


 ──────────────────

 ★デイリーミッション★

 毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『日刊筋トレ:スクワット その2』


 スクワット 0/1,000


 継続日数:35日目 

 コツコツランク:ゴールド 倍率5.0倍

 ──────────────────


 おかしい。

 なんでだ。なんでデイリーが更新されてる。


 もしかして、一日経過した?

 

「異空間のなかだと15分くらしか経ってないけど、外の世界だと1日経過したとか……?」


 ありえる。

 ありえそうで怖い。

 

 むむ、そうなると、俺のデイリー継続記録が気が付かないうちにリセットされてしまうかもしれないのか?


 それはだめだ。

 体感的に15分くらいでデイリーが更新された。

 つまり、外の時間が昼だったことを考えても、30分くらいで1日が経っていることになる。


 え……やばくね?

 俺のゴールド会員の地位が脅かされてんじゃん!


「ちーちーちー!」

「うぉぉおお!! ゴールド会員は手放さんぞォォォオオ!!」


 ──────────────────

 ★デイリーミッション★

 毎日コツコツ頑張ろうっ!

 『日刊筋トレ:スクワット その2』


 スクワット 1,000/1,000


 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 先人の知恵B(50,000経験値)

   スキル栄養剤B(50,000スキル経験値)

   スキル栄養剤C(10,000スキル経験値)


 継続日数:36日目 

 コツコツランク:ゴールド 倍率5.0倍

 ──────────────────


「ぜはぁ……ぜはぁ……ぜはぁ……」

「ちーちー!」


 ダンジョン内で猛烈にスクワットをする狂人に成り下がることで、デイリーを秒殺した。


 古本とエナジードリンクを使う。


 急がねば。

 このダンジョンにいる限り、際限なくデイリーの猛攻が襲ってくる。

 今やるべきことは、一刻も早く祖父を見つけ。このダンジョンから脱出する事だ。


(デイリーミッションが更新されました)


「な、なに?! もう来ただと?!」


 このダンジョンのなかには時間を加速させるスタンドでも潜んでるとでも言うのか?!


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  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

  『確率の時間 コイン』


 コイントスで10連続表を出す 0/10


 継続日数:36日目 

 コツコツランク:ゴールド 倍率5.0倍

 ──────────────────


 ま、まずい……ッ。


「ちーちーちっ!?」

「……大丈夫です。シマエナガさん」

「ちー……」


 俺は慣れ親しんだ500円玉をとりだし、ゆっくりと弾いた。


 まず、1回。

 そして、2回。


 俺がいったい今日にいたるまでどれだけのコイントスをしてきたか。

 わかるか、デイリーミッション。

 66兆2,000億回だ。

 ……嘘だ。ちょっと盛りすぎた。

 だが、果てしなくコイントスをしてきたのは間違いない。


「6回……7回」


 どれだけお前が理不尽を叩きつけようと、人の心をくじくことなどできはしない。


「7回……8回」

「ち、ちー?!」


 人間とは困難を克服する生き物の名前だ。


──────────────────

  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

  『確率の時間 コイン』


 コイントスで10連続表を出す 10/10

 

 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 先人の知恵B ×2(50,000経験値)

    経験値 5,000

    スキル栄養剤C ×2 (10,000スキル経験値) 


 継続日数:37日目 

 コツコツランク:ゴールド 倍率5.0倍

 ──────────────────


 やった。

 ノーミスで、最初のチャレンジで、10回連続コインの表を出すことに成功した。


 希望を捨てなかった。

 絶望のなか一筋の光の糸を掴みつづけた。


 胸の奥から熱い感慨が体を満たしていく。


(新しいスキルが解放されました)

 

 あ、スキル開放ですか?


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 赤木英雄

 レベル111

 HP 8,392/8,392

 MP 1,571/1,571


 スキル

 『フィンガースナップ Lv4』

 『恐怖症候群 Lv3』

 『一撃』

 『鋼の精神』

 『確率の時間 コイン』


 装備品

 『蒼い血 Lv3』 G4

 『選ばれし者の証』G3

 『迷宮の攻略家』G4

 『アドルフェンの聖骸布』G3


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 増えている!

 『確率の時間 コイン』が!

 忌々しい名前のままスキルになっているだと!


 気になりすぎるので、スキル表示をなぞり、すぐに詳細を確認する。


 ───────────────────

 『確率の時間 コイン』

 50%の確率に身を委ねるのは愚かなことだ。

 しかし、その心配はもう必要なくなった。

 コイントスを行う。

 表面がでたら全ステータス5分間 20%強化、次の攻撃において最終的に算出されたダメージを2.0倍にする。

 裏面がでたら全ステータス168時間 100%弱化、HPとMPを1にする。

 168時間に1度使用可能。

 解放条件 デイリーミッション『確率の時間 コイン』をノーミスで達成する

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 とんでもない系のスキルが来たな。

 基本的には全体ステータスバフがメインで、オマケとして次の攻撃は強力になる……みたいな話だろうか。

 必殺技を放って、つよつよモードに移行するっていうのはゲームならまま見るパターンだ。


 うん、とてつもなく強い。

 それは間違いない。

 けどさ……失敗した時のペナルティえぐすぎん?

 100%弱化ってつまりステータスゼロでしょ?

 ウィンドウでは見えないけど、防御力、素早さ、攻撃力もゼロ、でしょ?

 風に仰がれたら死ぬんじゃないそれ?

 こんなの気軽に使えないよ。

 重いなぁ、俺のスキルみんな重いなぁ。


「ちーちーちー!」

「急がないと次のデイリーが襲ってきますよね」

「ちー!」


 最奥のドーム空間を目指して駆けだした。

 しかし、速すぎる間隔で襲い掛かってくるデイリーに、俺は苦戦を強いられていた。


 幸運なことはデイリーすべてが俺一人で完結するタイプのデイリーであることだった。

 これも『選ばれし者の証』ブチが俺に引き寄せてくれたイイコトなのだろう。

 だが、幸運はいつまでも続くと思ってはいけない。


 ──────────────────

  ★デイリーミッション★

  毎日コツコツ頑張ろうっ!

  『確率の時間 コイン』


 コイントスで10連続表を出す 10/10

 

 ★本日のデイリーミッション達成っ!★

 報酬 先人の知恵B ×2(50,000経験値)

    経験値 5,000

    スキル栄養剤C ×2 (10,000スキル経験値) 


 継続日数:55日目 

 コツコツランク:ゴールド 倍率5.0倍

 ──────────────────


 ああ、だめだ!!

 襲い来るデイリーが止まらねぇ!!

 やばい、いつか限界が来る!

 はやくこのダンジョンをでないと!


(スキルレベルがアップしました)


 ええ?! このタイミングで!?


────────────────────

 赤木英雄

 レベル112

 HP 8,392/8,650

 MP 1,571/1,652


 スキル

 『フィンガースナップ Lv4』

 『恐怖症候群 Lv3』

 『一撃』

 『鋼の精神』

 『確率の時間 コイン Lv2』


 装備品

 『蒼い血 Lv3』 G4

 『選ばれし者の証』G3

 『迷宮の攻略家』G4

 『アドルフェンの聖骸布』G3


 ────────────────────


 ぎゃああ!

 『確率の時間 コイン』一度も使わずにLv2になってるぅ!

 やばい。なんかヤバい気がする。

 俺の感覚と認識を置き去りにして、世界だけが先に行ってる感じがする。


 ───────────────────

 『確率の時間 コイン Lv2』

 50%の確率に身を委ねるのは愚かなことだ。

 しかし、その心配はもう必要なくなった。

 コイントスを行う。

 表面がでたら全ステータス5分間 40%強化、次の攻撃において最終的に算出されたダメージを2.5倍にする。

 裏面がでたら全ステータス168時間 100%弱化、HPとMPを1にする。

 168時間に1度使用可能。

 解放条件 デイリーミッション『確率の時間 コイン』を10回ノーミスで達成する

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 順当に進化した感じか。

 よし、いそげ、おじいちゃんを回収して早々に脱出だ!

 

「あ、メタル柴犬! カリバー!」


 ただ、メタル柴犬を逃す手はないので、しっかりと指パッチンをぶちあてていくよ。


「おじちゃん! おじいちゃぁぁぁんッっ! はやく出てきてぇえ! いつまでもここにいたら、外の世界でおばあちゃん死んじゃうかもよー!」


 めちゃめちゃ不謹慎なこと叫びながら、黒い大湿原の迷宮を駆け抜ける。


 またしても、行く手にメタル柴犬が現れた。

 けっけっけ、経験値が向こうから現れやがったぜ!

 『フィンガースナップ Lv4』を速攻で当てようとする。

 だが、ふと、思いとどまった。


 曲がり角の向こうから人影が現れたのだ。

 怪しげな黒い布を羽織った男である。

 

「くっくっく、おじいちゃんだと? 面白い。貴様はあの憐れな老人の孫か」

「っ、なんだ、こいつ、修行僧みたいな恰好しやがって」

「私か? 私はメタルモンスター研究家だ!」


 変な人でて来ちゃった。

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