第22話 想定外の刺客

あれから数日がたち、中間テストや期末テストも無事に終え、終業式まであと1日になった。

俺はいつもの様に寝ていた。


「おはようございます」


凛とした声で起こされでうぅん…と少しずつ目を開けると山城さんが…え!?


「えっ!?山城さんっ!?なんでここにっ!?」


「はい、山城です」


いや、はい山城ですじゃなくて!なんで!?


「えっと、本来は会長が起こしに来ていたのですが、あまりにもチキンだったので私が代わりに起こしに来たんです。」


いや、そこも気になってはいたんだけどなんで俺の家を知ってんの!?それとよく入れたね!?


「はい、お母様がいらっしゃったので挨拶をさせて頂いたのですが…『あの子っ本当に五股する気なのっ!?』と仰られていたのですが…まさかほんとうに五股されてませんよね?」


「してないしてない!てかあなた達が家に来るから変な誤解を生むんでしょうが!」


「まぁ、私は頭が良く、顔もわりといい感じのお金を持ってる人にしか興味が無いので安心してください。」


いや、意外とお嬢様的な考えなのね…。悪くないよ!お金、大事だもんね!


「まぁ、鷹木さんならべつに構いませんがね。」


「えっ!?」


と一瞬顔が赤くなってしまった。


「冗談です。さ、行きましょう。」


冗談やったんかい!男心を弄びやがって…てか久しぶりに普通に起床できたわ…今までずっと添い寝だのなんだのって色々されてきたから…久しぶりに普通の朝を迎えられた…


「そういえば誰か来なかった?」


「あぁ、丹比さんと五木さんが来られていましたね…。私が睨んだらそそくさと帰っていきましたが…」


「そうだったんですね。」


助かったような…あとのことを考えると助かってないような…複雑な気持ちだ。今日休もうかな…。そして階段を下りると琳さんが座っていた。


「耀司?あんた…」


「違う!違うから!」


さすがにそんな浮気なんてしないよ!?てか彼女も出来てないのに浮気ってなんだよ!?


「何が違うのですか!?私の下着姿…見たくせに」


「あれは会長が脱ぎ出し…はっ!」


「見たのは確かなんですね?」

「あんたって子は…ほんとうに…」


「いや、違…くはないけど!」


これ以上はやめてくれぇぇぇえ!


ーー

そして俺は校門までやってきた…周りからの視線が痛い…なんせ俺に抱きついてる生徒会長とその横には副会長がいる。異様な光景にみんなもさすがに引いてる


「あいつ…会長と副会長まで…」

「いやまて、この間五木さんと付き合ってるとか言ってたぞ?」

「てことはこの間の件で監視下におかれてるとか?」

「なんか可哀想…」


色んな意見や言い分はあるがどれも違う…俺をすきだと言ったのは会長だけだし、誰とも付き合ってない。2人に告白されたが保留というか、好きにならせると言っていたからな。


「では、また後で…耀司さん…」


「うん、また後でね…琳。」


周りに聞かれたら勘違いされてしまうので小さな声で言い合って俺たちは別れた。教室につき俺が席に着くと色んな人が俺に質問してきた。


「おい朝のあれどういうことだよ!?」

「りなちゃんと付き合ってるんじゃないの!?」

「生徒会長に監視されてるのか!?」

「お前羨ましいぞ!?」


まるで記者会見みたいになってんじゃねぇか。とりあえずちょうどいい、誤解をといておくか…会長が俺を好きなのはうちの部だけの内緒になってるらしいからとりあえず誤魔化しとくか。


「えっと、りなに関しては断ろうと思ってたんだけど、好きと言わせてやるって言われてこの間のことがあったんだ。それを注意した会長が次もこんなことがあったらダメだと生徒会長と副会長が監視してる形だ。」


さすがに苦しいか?と思ったがみんな意外とさっぱりしててなぁんだ、とか頑張れ…とか色々な言葉があったが変に勘違いさせたらまずいし…こんなもんでいいだろ。それで…気になったんだけど…


「なぁ、摩耶…席引っつけすぎじゃないか?」


「そうか?初めっからこれくらいだったぞ?」


「なわけないでしょうが…」


周りを見ろ!ある程度距離を保ってるぞ!?なんで急に席を引っ付け始めたんだ?


「まぁ、いいけど。」


「ふん…」


と横髪をいじってる摩耶を見ると自然と胸に視線がいった…


「なぁ…ボタン開けすぎじゃないか?」


「あ?別にこれ元からだし…」


「そうだったっけ?」


「…当たり前だろ?」


どう考えても第2ボタンまであいてるよね?おかげで谷間とブラの上の部分がちらちら見えている。反対側からは見えないものの、俺から見たら見えてしまってるのだ。しかも前から見てもみえてしまう…他の人に見られるのちょっと嫌だなぁ。


「なんとかボタンしめられない?」


「別に誰にも迷惑かけてねぇだろ?」


こいつ気づいてないなぁ…何とかして気づかせてあげないと!


「いや、前からも見えちゃうから…」


「私の顔なんか怖くて見れねぇだろ?」


なるほど確かにそうだ…じゃなくて!絶対視線、下に落として見るだろう!くそ…ここまで言われたら最後の手段!俺は摩耶の耳元に顔を近づけ


「俺が我慢できなくなるからやめてください…」


「…興奮したか?」


ニヤニヤしてる…やっぱり俺をからかうのが狙いだったか…分かってたけど興奮したのも本当なのでYESと言わざるを得ない。


「興奮しました…これ以上は理性がもちそうにないので…」


「しっかたねぇなぁ!そこまでいうなら?しめてやるよー。」


もったいないねぇ〜と俺の顔を見ながらボタンをとめていく…ホントはちらちら見てぇよ…でもそんなことしたら絶対変なやつだと思われるし…嫌われるからこうするしかないの!


「いいのかなぁ〜いいのかなぁ〜」


「えらいなぁ…」


「はぁ?」


ここまで言われて何もせず降参する訳にはいかない。仕返ししてやる!お前の弱点はすでに検索済みだ!


「前まで睨んだり口答えしてたけど今ではちゃんと言うこと聞いてるなぁ…えらいなぁ…」


そういいながら俺は摩耶の頭をなでなでする。

すると摩耶は顔を赤くして俺の手をつかもうとするが力が弱くてそんな程度の力じゃ俺を拒否れないぞ?


「おまえぇえ…よしよしすんな!おいやめりょって…」


どんどんとふにゃふにゃになっていく…もう抵抗もしないようになり、お父さんに褒められてる子供のような状態になっていた


「可愛いなぁ、えらいなぁ…ほんとにえらい!」


「も、もうよせっ!お前っ後で覚えてろよ〜!!」


そういって教室を出ていった。ありゃりゃ…怒らせちゃったかな?てか授業サボりになっちゃうんだけどな…


「おい!離せ!離せったら!


「おーし、HR始めっぞー。」


山城先生が摩耶の襟を掴んで教室に入ってきた。まるで飼い主につかまえられた猫だな。

先生はと言うと相変わらず際どい服を着ていた…また副会長に怒られますよ…


「明日は終業式だ、もし、教科書…ノート…特に冬休みの宿題!を残してるやつがいたら…学校まで来て特別講習してやるから覚悟しとけ。」


「「「「「はい…」」」」」


全員が絶対そんなことはしないでおこうと心に誓っただろうな…摩耶の机も確認したが何も置いてなかった。さすがにほかの四人格が上手いこと持って帰ってたんだな…。


「なんだよ。」


「いや、なんだかんだ甘やかされてんなって…」


「なんだと!?」


「あと、耀司!後で屋上に来い。」


「え…はい。」


なんだろう…特に悪いことしてないし、先生から告白!?なんてことも無いだろう…特にクラスメイトが質問してくるわけでもなくそのまま平和にHRは終わり、俺は部活に行く前に約束通り屋上へ向かった。


「ありがとな、ここの鍵借りんのめんどくせぇからお前に頼んだ方が手っ取り早ぇんだわ。」


「タバコ吸いたかっただけだろ?」


うちの学園は先生でも喫煙は禁止されている。先生は屋上の鍵を借りに行く度にタバコを吸うと思われてるのでなかなか鍵を渡してくれないらしい。


「まぁ、ただタバコを吸いたかったわけじゃないんだろ?」


「まぁ…な、ふぅ〜っ。最近は大丈夫そうだな?」


「まぁ…1度危なかった時ありましたけど…」


「出たのか!?」


「一時的にですけどね!すぐに正気に戻りましたよ。」


「そうか。」


先生は煙ををふぅ…と吹き、安心したようにそう言った。俺の事をよく知ってくれてるのが山城先生だから基本俺の担任は山城先生と決まっていて…クラス替えで先生が変わる!なんてことがないのだ。


「嬉しいだろ?」


「まぁ、いつも際どい服を着てるスタイル抜群な女性が毎日見れると考えたら悪くないかもしれないですね。」


「口説いてんのか?」


俺がノリに乗ると何故か口説いてると言われてしまった…勘弁してくれ誘惑キャラはオーバーするほど間に合ってるんだよ。でも先生となら結構楽しいと思う…さっきも言ったが俺のことをよく知ってくれてるし、スタイルもかなりタイプだ。年上というのも最高の武器だ…挙句に服装がいい…。教師と生徒ということを抜けば。


「まぁ、私もお前となら楽しい人生なのかもなって思う時があるよ。」


「口説いてるんすか?」


「口説いてんだよ、私の彼氏になってくれ…」


「おい教師!」


冗談でも生徒を口説くな!そういえば先生がいない時ほかの教師が先生のことえろいなとか付き合いたいなとか言ってたぞ?


「同年代とか年上には興味ねぇんだわ。はぁぁあ、どっかに私のことをわかってくれる黒髪で背が高くて年下のやついねぇかなぁ?」


「そんな人いるわけないじゃないですかー?」


俺の顔を見てる気がしたが絶対気の所為だろう。うん!絶対に!!


「だって合コン言ってもすぐおっぱい見てくるし、道を訪ねたらいつの間にか路地裏に連れ込まれて男どもに囲まれるし…」


「どこぞのエロ漫画だよ…よく大丈夫だったな?」


「はっ、あたしを犯そうなんざ100年はぇえよ。それに、自分の処女は一番好きな人に捧げるって決めてんだ!」


そういえば先生、聞くところによると昔ヤクザを蹴り飛ばしたんだったんだっけか?喧嘩も強いし…ますますえろ漫画の犯されキャラじゃないですか…


「年増のわりに少女趣味なんですね。」



「褒めるなよ〜照れるじゃないかー!」


「褒めてないし、煽ってるんですけどね〜」


「私からすりゃ煽りにもなってねぇよ。」


でしょうね…あんたのレベルになったら〇ね!とか〇〇〇すっぞ!!とかになるんだろうなぁ…さすがに先生に向かってそんな言動出来ねぇわな。


「じゃあ、俺行きますんで…鍵どうしますか?」


「私も行くよ…なぁ耀司!」


「なんですかい?」


俺が振り向くと先生が柵に腰掛けていた。


「もしお前が卒業してさ、恋人がいなけりゃ私がもらってやるよ。」


「はぁ…そうですね、もし俺に恋人が出来なければ彼氏でも何でもしてやりますよ。」


「うっし!言質とったからな!後で嘘ですとは言わせねぇぞ!?」


俺は卒業までに彼女を作る…でもそのためには何かを課せられなければなし得ないだろう。だから俺は先生の脅しにのってやる!


「男に二言は無いです。」


「よっしゃあ!これで私も晴れて彼氏ゲットだ!!みんなになんて自慢しよ〜?」


「おい!彼女が出来ねぇ前提で話すな!」


俺をなんだと思ってやがる!ぜってぇ彼女作って一番に自慢してやる!


「だってそうだろ?まだ歳はとってるが、見た目は若いし、スタイルもいい…お前の理解者であり、エロいとまできた!ここまで優良物件はねぇぞ?私なら卒業まで待つね!」


自画自賛しすぎだろ…まぁその通りだから何も言い返さねぇけど!てかエロいとか言うな!副会長に言いつけるぞ!


「お前一人なら一生養ってやれるし…なんならお前のエッチな命令なんでも聞いてやるぞぉ?それに、お前が脇フェチだってこともバレてるからなぁ?」


先生が…なんでも…いやいや!想像するな!てか、なんで俺の周りは変態が多いんだよ!まともな人山城さんと渡部さんくらいじゃねぇか!あれ?結構いるな…いや違う!この人たちが普通なんだ!危うく感覚が狂うところだったよ!


「まぁ、自分の担任の教師にエロい格好させて見るのも背徳感が楽しめていいかもな。」


「へぇ?言うようになったじゃん?なんでもやるよ私?」


冗談もほどほどにしないとりな、とのくだりの二の舞になってしまいかねんな。


「俺は部活に行きますね」


「じゃあ私もたまには部活に顔だそうかな。仕事もひと段落着いてるし。」


「じゃあ行きましょうか。」


そう言って俺と山城先生は一緒に部室へ向かった。


ーー

「あっ、鷹木さん遅いですよ〜!」


「おっつー鷹木さん!」


「遅かったじゃねぇか!」


部室に入ると女性陣はいたが男性陣がいなかった。はて?なんかあったかな?


「あぁ、佐久間と眞鍋は今日は二人でデートらしい。」


「いや、さすがにそういうのはアニメだけでお願いします…」


さすがにそんなことは無いだろうが今日は来ないらしい。珍しいな…いつも絶対参加してるのに。


「で、先生とようちゃんは何してたんだよ?」


そう摩耶が尋ねると先生は体をくねらせて


「えっ…そりゃあ男女が屋上に行ってやることなんてひとつしかないだろ?」


「誤解を招くような言い方すんな。」


ただちょっと俺の持病?の経過状況を聞いてただけだろうが?


『もしお前が卒業してさ、恋人がいなけりゃ私がもらってやるよ』

『はぁ…そうですね、もし俺に恋人が出来なければ彼氏でも何でもしてやりますよ。』


なんで俺と先生の会話が!?まさかボイスレコーダー!?悪趣味な!


「耀司っ!私という人がいながら…これはどういうことよ!」


「ようちゃん?どうやら絞め殺して欲しいみてぇだがどうなんだ?」


「いや、これは卒業までに恋人を作るという目標のために…」


と何とか言い訳を作ろうとしていると先生は

えぇ〜だったらこれは何かなぁ?とぽちぽちやって再生ボタンを押した


『まぁ、自分の担任の教師にエロい格好させて見るのも背徳感が楽しめていいかもな。』


「鷹木さんにそんな趣味が…詳しく話を聞きましょうか!まさかあの純粋でイケメンな人がこんなことを言うなんて!興味深いです!」


「渡部さんっ!?」


「もう…そんなこと私に言ってくれれば…そうね、全部じゃないと不満だったのね!いいわ!なんでもしてあげるわ!なんなら今すぐでも!」


「いや、りな、違うんだ!冗談だから!冗談で言っただけだから!!服を脱ごうとするのはやめようか!?」


渡部さんもりなも俺にどんどん迫ってきた…いやいや…俺そんなつもりはなかったんです…気がどうかしてたんです…許してください…


「オレだってようちゃんのためなら…ネコにでもなんにでもなってやる!これなら満足か!」


「お前までノリにのらんでいい!!」


全く先生のせいでろくな事になんねぇじゃねぇか!副会長きてくれぇええ!


「はい、山城です。」


「「「「「うぉあぁぁぁぁ!!」」」」」


まさか真ん中から出てくるとは思わずみんなが驚いて後ずさりした。ほんとに出てくるとは思わなかった…いつの間にか山城先生いないし!?何が起きたんだよ!


「風紀違反の香りがしたので駆けつけてみれば…前にも言いましたよね?」


「いや、こいつら相手にしようとするとガードマン5、6人くらい必要なんですよ!」


「はぁ…あなた達も落ち着いてください。最近あなた達は暴走しすぎです…見てて怖いです。」


「たしかに…」


こんな前半戦でここまで暴走されたら後半どうなるかわかったもんじゃない!そろそろ1回休憩しようか?


「そうですね、ここはアイドル部!私たちはアイドルヲタクとして話し合おうではありませんか!」


急にりなの目が輝き、何事も無かったかのようにほかのメンバーも席について話し合いを始めた。


「ありがとう山城さん…」


「そういえば、いくつか貸しをつくってましたね?どうしましょうかこれ?」


や、山城さん?目が怖いです…俺に何をするおつもりですか?


「そうです、私の婚約者のフリをして貰えますか?」


「…え?」


「「「「ええぇぇえええ!!?」」」」

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