第20話誘惑と告白と

「ん〜っ…」


昨日は絶対寝ないと決めていた!まさかの母さんが本当に精がつく料理を作ってたとは思わず疲れていたから何も気づかずパクパク食べてしまった…しかもその日の疲れもあって爆睡していた…


「耀司さん…ふふっ…寝ていますね…」


ドアがゆっくりと開き伽耶さんはきひひっと笑って静かに中に入ってきた…


「…ふふっ…ふふふっ…」


しかし何も手を出さない…じっと見つめるだけ。特に何かをするわけでもなければ何もしてない訳でもない。ただずっと見つめてるだけ。


「耀司っ!なにもされてないっ!?」


「どぁぁぁっりな!?うわぁぁ!伽耶さん!?」


俺は2度びっくりした!さすがに急にドア開けられたり急に目の前にいられたらびっくりしますって!


「あんた…何もしてないわけ?」


「な、なにも…」


「…もしかして…あんた…チキンなの?」


チキン?ケンターキのことか?あそこのチキンめちゃくちゃ美味しいよな。


「うっ…ち、ちがうからっ!」


そう言って伽耶さんはバタバタと降りていった。


「な、なんだ?」


「…さぁね。あんたも下に降りてきなさい。朝ごはん冷めちゃうし。」


「いや、お前もなんで来たんだよ…」


「なによ!悪い!?」


そうじゃないけど昨日のことがあってよく来れたなぁって思ったんだよ!


「ふん…急いできたのよ!?」


「そっか…お疲れ様。」


「…走ってきたのよ?」


「そうなのか?朝早くから頑張るな。」


ダイエットかな?そんなに太ってるようには見えない…というか痩せてるんだからもうちょっと肉つけた方がいいぞ?


「ちょっと、汗とかかいちゃったし…。」


「シャワー浴びるか?」


「…もういい!」


そう言ってプンプン怒りながら降りていった。なんで怒ってたんだ?女というのはほんとよくわからん。


「おはよ。」


「あれ?伽耶は?」


さっき階段降りてったけど?部屋にはいないのか?


「直ぐに出ていったわよ?朝ごはん食べないのって聞いたんだけど無視されちゃって…あんた、なにかしたんじゃないでしょうね?」


「し、してないよ!たぶん!!」


「はぁ…あんたは鈍感だからね〜。りなちゃんも大変でしょ〜?いつもごめんね〜?」


「いえ、もう慣れてますから。」


おい!慣れてるとはなんだ失礼な!…え?マジで俺鈍感なの!?ちょっとショック!


「何したのか知んないけどちゃんと謝っときなさいよ?あんたのために毎朝迎えに来てくれてるんだから。」


「ま、毎朝ですって!?」


「前にも似たようなくだりあったけど!なんでうちの身内はこんなに口が軽いんだよー!」


俺はその場から逃げるようにすぐに準備し学園へ向かった!


「ちょ、ちょっと!置いてかないでよ〜!!」


ーー

学園につくとまだ伽耶は来ていなかった。あれ?俺たちよりも先に出たはずなのに…


「HR始めるぞ〜…あれ?丹比が珍しく来てねぇな?なんも聞いてねぇけど?」


「…おれ、探しに行きますっ!」


「お、おい鷹木!まったく…まぁ、あいつに任せた方がいいかな。」


…どこだ!?どこに行ったんだよ…俺は購買や、体育館、部室などにも言ったが見当たらなかった。


「…あいつの事だったら…もしかして!」


俺は屋上まで上がると…やっぱり居た…さすがに行くところはみんな同じだな。


「伽耶さん…」


「あっ…すみません耀司さん…」


「なんで謝るのさ…何か嫌なことでもあったの?」


「私…みんなみたいに大胆なこと出来ないから…」


ん?いま爆弾発言が聞こえたような気がするんだけど…大胆ってあれだよな!決して変な意味じゃないよな!?な?


「私だって…耀司さんに喜んで欲しい…だから勇気をだして…頑張ってるんです…」


「伽耶さんはいつも頑張ってるよ?」


「それじゃだめなんですっ!!」


あっ…と我に返って俯いた。何があったのかはよくわかんないけど俺が言えるのは


「伽耶さんは自分が思ってる以上に魅力的な女の子だよ?」


「え?」


「だって、初めて俺に会った時目も合わせてくれなかったろ?前髪で隠してたしさ。でも今はこうして目も合わせてくれるし、みんなとも話をすることが出来る。俺と出かけた時のこと覚えてるか?」


「はい…」


「あのとき、伽耶さんが色んなことを教えてくれたんだ。こっちの方がいいとか、これはやった方がいいとか。おかげであの時はめちゃくちゃお得にお買い物できたし!俺の母さんも喜んでたろ?」


何で悩んでるのか…なんで俺をそこまで喜ばせたいのかはよく分かんないけど、俺は十分喜んでるし感謝もしてる。彼女がいてくれなかったらつまらない人生をつまらないまま終えてたかもしれない。


「伽耶さんが…丹比さんがいてくれたから俺は毎日楽しいんだ!だから俺はもう満足なんだよ。」


「…ふふっ、そういうことじゃないんですけど…」


「あ、違った!?ごめんなんかわかったような口聞いて!」


「いいえ…ありがとうございます。そう言っていただけただけで嬉しいです…悩んでたのがバカみたいです。」


ん〜と伽耶さんは伸びをした。良かった…少しは役に立てたかな。


「まぁ、無理にみんなと合わせなくていいよ、素のままでいいんだ。」


「そうですね…たしかに今まで嘘ついて、無理してた気がします。」


「そうだよね!前の時めちゃくちゃびっくりしちゃったよ!これが素の私ですとかいうから!」


あの時はこの先どうなるのかと思ったよ!伽耶さんは優しくてお母さんみたいなあたたかい存在であってください。いや、俺の母さんじゃないよ!?


「じゃあ、もう我慢しなくていいですね!」


「ん〜…ん?」


我慢ってなに?いや、この間まで無理してたからもう変なことしないでいいよって言ったんだよね?


「確かに私は無理してました!みんなに負けないように誘惑してました!でも自分のリミッターの我慢をやめます!」


え?そっち!?いや、そこの我慢はやめないでください!俺の理性に関わるので!


「そういえば胸を揉んだり、あ、あれを触られてましたね!!私も負けてられません!」


「胸のことは否定しないけどあれは触られてないですよ!?てか何その手!?やめて!お願いだからリミッター制限してくれぇぇぇぇ!」


結局、伽耶さんがいちばん怖いということが再確認でき、俺たちはまた反省文を書かされましたとさ…


ーー

放課後、今日は伽耶さんは買出しを頼まれているので先に帰った。部活も休みだったので久しぶりの休みだしどっか行くか…そう思って下駄箱を開けようとするとりながやってきた。


「耀司っ!今日暇!?」


「ん?まぁ、暇だなぁ。」


「じゃあ一緒に出かけましょ?」


そうだなぁ、りなとは子供の頃ずっと一緒に遊んでたけど大きくなってからは遊んでなかったなぁ…


「ん、じゃあ遊ぼうか。」


「ほんと!?やったぁ!じゃあ、少し待ってなさい!」


ーー


とりあえず出かけることになったのはいいが、特に俺は予定はない。さて、どうしたものか。


「なんか用事ある?」


「ねぇ、久しぶりに公園行かない!?」


俺たちは砂場にやってきた。来るのいつぶりだろうな…幼稚園以来か…俺はしゃがんで砂を触った。相変わらず少しザラザラして…もう少しサラサラしてたらいいんだけどなぁ…


「よくここで遊んだよね!覚えてる?よくここで2人でおままごとやってたら周りの男どもにひやかし受けて!」


「そうそう、よくラブラブとかヒューヒューとか言われてたなぁ。」


そう言われる度にりなは怒らず羨ましいでしょ〜とか言ってたな。そのおかげでいつしか誰も俺たちに何も言わなくなったんだ。


「この砂場…も変わらないわねぇ」


そういって、りなもしゃがみ込んだ。俺はあることに気づき思わず目を逸らしてしまった。


「なによ?」


「いや、別に…」


「気になるから言いなさいよ!何!!」


たしか昔もこういうことあったな。その時もこうやって…


『何よ!言いなさいよ!』


『パンツ見えてる!』


『なっ、なななにみてんのよ!エッチ!!』


とか言われてビンタ食らってたっけ?あの時はくまさん柄の下着だったけどさすがに今は違うよな…紫色のレースショーツなんて…大胆になったな…。


「お前も大人になったな…」


「どういう…ッツ!?早く言いなさいよっ!」


何をいいたいのか察したりなは急いでスカートを隠した!きっと俺を睨むが俺は悪くないぞ!!


「もう!滑り台に行きましょ!」


そしていそいそと登るのはいいが俺を後ろにしちゃだめでしょ…さっきまでチラだったのが今ではガッツリ見えちゃってるし…


「見て!いい景色よ!」


「たしかにいい景色だ…」


「でしょ…って!どこ見ていってんのよ馬鹿!」


「バカはお前だろ!気づけよ!!」


「わかってんなら先に言いなさいよ!!」


言わなくてもわかるだろ普通!っほんっとポンコツだな…


「くふふっ!あはははははっ!」


「ふふっ!あはははははっ!」


なんか変わらないなぁ…りなはなにも変わらない。小さい頃からずっと1人の俺のそばにいてくれて…怪我して俺が一方的に攻められてた時も守ってくれて…。照れ屋さんで誰かのために自分を犠牲にできる。俺はりなに憧れて今の自分が出来たのかもな。


「ありがとう。今日連れ出してくれて。」


「ふんっ、元気だしてくれたようでよかったわ!」


「俺、元気なさそうだった?」


「今はそうでも無いみたいだけど昼間元気なさそうだったから!」


こいつにはなんでもお見通しらしい。りなはと言うとふふんっ!と胸を張っている。まぁ、ポンコツではあるけどこういう時だけは無駄に鋭いからなぁ。


「かなわねぇや。」


「当たり前でしょ!幼なじみなんだし!」


「だな!」


俺がそう言うと、りなはそう幼なじみなんだよね…と言い直した。そしてよしっと決心をつけて俺の目を見た。


「耀司っ!」


「なに?」


「わたしっ!あんたのことが好きっ!!」


胸に両手をあてて勇気を振り絞ったように俺にそう言った。


「え…?」


「何度でも言ってやるわ!あんたのことが大好きなのっ!!」


「はぁ!?」


突然の出来事に俺は固まってしまった…え?りなが?俺のことを好き…なんで…


「だって…俺たち…幼なじみで…」


「分かってるわそんなこと!!だから幼なじみより先に行きたいのっ!!」


「俺は…お前のこと大切な幼なじみだと思ってる!」


「そんなの当たり前でしょ!」


はい!?幼なじみ以上になりたいんじゃないの!?ますますわからんなこいつの言動は!?


「だからこれからもっと誘惑してやるわ!!あんたを誘惑しまくって既成事実作っちゃえばいいのよ!」


何を言ってるんだこいつは?既成事実…既成事実ってあれか!!あれが…あれするやつか!!


「何いってんだ!?やるわけねぇだろ!」


「ふーん!そんなこと言うんだァ?」


そういうとゆっくり俺に近づいてきて思いっきり胸を押し付けてきた。


「お、おいっ!?何やってんだ!」


「あんたくらいの鈍感男はこのくらいしないとわかんないでしょ!?」


誰が恋愛アニメの主人公だ!!そこまで俺は鈍感じゃない…と思う!てかいい加減離れてください…この間から女性恐怖症になりそうなんですよ!あなた悪化させる気ですか!


「別に触ってもいいのよ!あたしの体好きにしていいわ!」


彼女はもう遠慮はしない。幼なじみだからこそもう照れたり、後には引かない!だから俺も本気で答える義務がある!


「じゃあ勝負だな!俺が落ちたらお前の勝ち!俺が落ちなければお前の負けだ!」


「望むところよ!今からスタートね!!」


ふふんっ!と笑う、りな。好きっと言われたからか彼女の笑った顔を見た瞬間ドキッとしてしまった。


「あれぇ?どうしたのぉ?もしかしてドキッとしちゃった?」


ニヤニヤ顔で俺を煽ってきた…くそ…このポンコツ野郎…めちゃくちゃ可愛いじゃねぇか!


「お前こそ、そろそろ離れたら?俺にこんなことして実はドキドキしてんじゃねぇか?おぉん?」


「えぇ!ドキドキしてるわ!なんなら胸の音聞いてみたら?」


そういうといきなり俺の手をもち自分の胸に押付けた!むにゅぅぅ…と自分の心臓の音が聞こえるように無理やり押し付けた


「ちょっ…おまえっ!やりすぎだぞ!」


「あんっ…もう…エッチなんだから。」


こいつ…ホント厄介な幼なじみだわ!てかお前から揉ませてきたんだろ!えっちもクソもあるかぁ!


「口ではそう言ってても身体は正直ねぇ?」


りなは人差し指を立ててある箇所を指さしていた。あぁぁぁぁぁぁぁ!


「くっ…最近理性がゆるゆるだな…おれっ…」


「あはははははっ!なに?トイレに行きたいのぉ?」


「う、うるせ!隠してんだよ悪いか!?」


「いいわよ?ちょうどトイレあるし抜いてこれば?そぉれぇとぉもぉ?抜いてほしい?」


そう言って手をグーにして真ん中を開け、手を前後に動かした…くっそコノヤロウ!煽りやがってぇ!!


「絶対負けないからな!」


「私も負けないから!明日から覚悟してなさァァい!」


今日のところは俺は負けを認め退散した。


ーー

「あらぁ?伽耶ちゃん、今日はいっぱい食べるわねぇ?なんかいい事あったの?」


「うん、母さんっ!私頑張る。」


「そう、頑張りなさい!母さん、応援してるわ!!」


「わたしだって…耀司さんのこと…大好きだから!」


ーー

心の中


『よしっ!作戦会議よ!今のところ生徒会長が耀司を好きなことは確定!りなちゃんもたぶん…』


『そうだねぇ。あれだけアプローチしてる感じだと…』


世羅と佐奈さんの言う通り2人とも耀司のことをおもっている。だからこそ私達も遠慮してられない!


『よし!私達も遠慮とか言ってらんないよ!!』


『そうだな!私達もアタック開始だ!!』


『私達も負けてないってこと見せてやるぞー!』


『『『『おぉぉぉぉ!!』』』』


『まっててようちゃん!私に夢中にさへてやるんだからぁあ!』

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