第16話 文化祭と不安と結果。

今日は文化祭当日!俺は目を覚ましていたしかし寝たフリをしていた…なぜなら琉偉さんを驚かすためだ。きっとみんなが思ってる以上に緊張してるだろうから少しでも元気になって欲しいし!


「おはようようちゃ…ありゃりゃ…まだ寝てる。」


ふふっ、そうだ少しづつ近づいてきなさい。あなたはもう蟻地獄の巣に引っかかった蟻同然!


「もう、早く起きないと遅刻しちゃうのに…」


よし!今だ!!俺は勢いよく布団を脱ぎ捨て彼女をおどかした


「覚悟しろ…」


「んやっ…」


むにゅん…と柔らかい何かが俺の手に触れられた。めちゃくちゃ柔らかい手におさまらないほどの大きさ、目の前には琉偉さん…うん、やな予感しかしない…


「まさか…」


静かにすぐ近くのリモコンを手にして明かりをつけた。すると俺の予想通り…琉偉さんの胸を触っていた。全く…アニメみたいな事起きすぎて怖いよもう!まぁ、テンプレというかお約束というか…この後の展開が何となくわかる…


「ようちゃんの…エッチ!」


「あたぁぁぁぁ!」


琉偉さんの強烈なビンタをかまされ俺は豪快に吹っ飛んだ!そしてプンプンと怒りながら階段をおりていく


「そういうのは付き合ってから…そしたら好きなだけ触らせてあげるのに…」


なんかブツブツ言ってるが俺にはよく聞こえなかった。


「今日は豪華にしたわよ!」


いや、豪華なのはいいんだけど朝からカツ丼って…受験じゃないんだから…普通でいいんだよ普通で…


「何言ってるの!今日は受験くらい大事な日でしょ!絶対に勝ってきなさい!」


「当たり前だ!な、琉偉さん!!」


俺は母さんに勝利宣言をした!やれることはやった。少しトラブルもあったがきっとなんとかなる!


「う、うん…」


カツ丼を無理やりかっこんで食べてたから彼女の不安そうな顔を俺は見逃してしまっていた。


ーー

ついに文化祭が始まった!ほかのクラスや他の学年も大盛況だがそれよりもずば抜けて多かったのは…


「おかえりなさいませご主人様っ!」

「おかえりなさいませ!」

「こちらチョコケーキになりまぁす!」


うちのクラスである。メイド喫茶+丹比さんがいるからファンの人はもちろんメイド好きの野郎共と、一般の客を合わせるとそりゃ人気になるわな。琉偉さん率いる女性陣はホールをまわっていて俺たちは裏でケーキを焼いたり盛りつけを担当していた。俺と琉偉さんは午前の部で午後からいよいよ発表会だ!


「おかえりなさいませ!ご主人様っ!」


「丹比ちゃんに会いに来たんだよ!握手していい?」


そう言って手を伸ばそうとした男がいた。おい、それはさすがに…と思って俺が行こうとすると


「ご主人様、そういったことは遠慮させてもらえませんか?ここはそういったお店ではありませんので!」


「そっか…ごめんね!」


いつもの女子3人組がめちゃくちゃその男を睨んでいた…よかった…俺が言ったらまた面倒なことになりそうだから。


「心配すんな!丹比さんはファンクラブによって完璧に守られてる!」


「ほんとこういう時は頼もしいよ。」


財前は胸を張っていたが実際頑張ってんのはあの子たちだ。まぁ、俺は裏方なのでなんも出来ないからよかった。するとホールの女の子が裏へやってきた。


「ごめん誰かホールでられない!?一人でいいから!」


「鷹木!ここは俺に任せてお前行け!」


「げっ!?俺ですか!?」


なんでよりによって俺!?他にいるでしょ…


「悔しいがお前が一番男の中でマシな顔だ!」


「くそっ…俺が出たかった…」

「丹比ちゃんと一緒にホールに…」

「ラッキースケベで腕に触れたら…」


おい!後半になっていくにつれて酷いぞ!?それに言い方な!なんか複雑だな!でもまぁホールにいれば丹比さんがナンパされても俺がまもれる。


「俺がいけと言われたので…着替えどこっすか?」


「ありがと、さっ、執事服に着替えて!!」


うわぁ…こんなの着るのかよ…俺みたいなブサイクには似合わないんじゃないか…?まぁ、とりあえず着替えて…


「出来ました…」


「か、かっこいい…じゃない!すぐ出て!」


とりあえずホールに出ると視線が一気に集まった。うわぁ…絶対似合ってないだろうな…お前みたいなやつがカッコつけてんじゃねぇよとか思ってるだろうな…そう思ってると女性数人が倒れだした


「え!?もしかして体調くずした!?大丈夫ですか?」


と俺は倒れた人の所へ行った。食中毒!?いや、味見してるし、ちゃんと中も火が通っている…まさか俺がそんなに見苦しかったか!?そんなことよりも!すぐ保健室へ連れて…


「大丈夫…幸せすぎて気絶してるだけだから」


と言うとクラスメイトはずーっと裏へ連れていった。なるほど、よっぽどパンケーキが美味しくて幸せだったんだな。よかった。


「お嬢様、ご主人様…お騒がせ致しました…どうぞごゆっくりお楽しみください。」


そう言って一礼した…執事系のアニメ結構観てきたからこんな感じじゃね?と思ってやったけど…そーっと前を見た


「「「きゃぁぁあぁぁ!」」」


女性陣の黄色い悲鳴が上がった!なんだ!?虫か!?


「カッコよすぎ!こっち来てー!!」

「あっずるい!私のところに来てー!」

「あんたたち順番よ!私のとこに!!」


よし!せっかく俺みたいなやつをご指名してくれてるんだ!どんどんサービスするぞ!


「美しいお嬢様方、喧嘩をせずお待ちください。私は皆さんの元へすぐ参りますので」


「「「きゃぁぁぁ!かっこいいい!!!」」」


そりゃ顔がダメなら言葉とサービスでやるしかないでしょ!見せてやる!アニヲタの底力!

完全再現執事(パーフェクトトレースバトラー)!


「こっちに来てぇぇー!」

「こっち向いてぇぇー」

「かっこいいい!!!」


みんなお世辞が上手いなぁ…まぁ、やってて楽しいし!厨房もホールも落ち着いてきたし…そろそろ時間かな?


「よし、あとは午後のメンバーに任せた!」


そう言って俺は琉偉さんを連れて…と思ったらいなかった…着替えてるのかな?


「琉偉さんは?」


「丹比さん?さっき早く出ていったよ?出店にでも行ったんじゃない?」


何か気になる店でもあったんだろうか?午後のライブに向けて少し話しながら回ろうと思ったんだけど…その辺にいるだろうと思っていたが全く見つからない…まさか…そう思って俺は階段をのぼっていった。


「琉偉さん?」


「どうしたのようちゃん?」


やっぱり屋上のドアの前にいた。鍵は俺が持ってるから開くはずがないから。


「いや、いつもなら俺を誘ってくるのに珍しく一人先にいったからどうかしたのかなって…やっぱり不安?」


「あはは…バレちゃったか…私…怖いの…上手くやれるかなって…世羅みたいに私は上手にまわせるかな?」


「……やっぱり心配だよな。」


でも、今の俺には背中を押すことしか出来ない…彼女の気持ちなんて分かってあげられるはずがないし…同情なんてしたらさらにやる気をなくしてしまうし、下手に元気づけても逆効果かもしれない…


「ごめんね…こんな事じゃ…ダメだよね。」


「…俺には琉偉さん気持ちを理解することが出来ない…でもその思いを…俺に分けてくれないか?」


「ようちゃん?」


わかることは出来なくてもそれを一緒に背負うことは出来る。今の俺にはこんな月並みな事しかことしか言えないけど…元気になって欲しい。


「俺も頑張るから!頑張って応援するから!俺にはこんなことしか出来ないけど!俺にお前のおもりを背負わせてくれないか!?」


「ぷふっ、やっぱりようちゃんは優しいね…ありがと。よしっ!もう大丈夫!」


そういうと琉偉さんは立ち上がって気合を入れた!


「もう大丈夫だよ!私やるよ!」


「うん!すぐ近くで応援してる!」


「一つだけ不満だったこと言っていい?」


「ん?」


何かやっぱりあるのか?もしかしてやっぱあの執事服が似合ってなかった!?


「もうあの執事服着ないで…」


「やっぱり俺には似合ってなかったよな…見苦しかっただろ?」


「そういう事じゃなくて…みんながようちゃんの良さに気づいたらライバルが増えちゃう。」


「え?」


「べつに」


ほおをぷくぅと膨らませてぷいっとそっぽを向いた。やっぱり怒ってるよな!うん!この顔を観客に見せる訳には行かない!


「琉偉さん!いや…琉偉!」


「へっ!?よ、ようちゃん!?」


急に呼び捨てで呼んでしまったがこの際どうでもいい!


「俺は誰よりも琉偉を応援するから!琉偉しか見ないから!」


「わ、わかったから…わかったからっ…」


「分かってない!俺は確かにセラピョンのファンだから丹比さんを応援し続けられるか分からない!でも!今だけは琉偉だけのファンでいるから」


「あうあうぅぅ…」


もう目もぐるぐるし始めて限界なようだがおれも半分やけになってて全く気づかないかった!


「琉偉!お前の歌声なら世羅さんと同等…いやそれ以上のものを出せるはずだ!」


「もういいもういいからっ!」


そう言って俺の口を手でふさいだ。

よかった。元気になってくれたみたいで。


「もうそろそろ発表が始まるね。」


「あぁ、楽しもうぜ!」


そう言って俺たちは体育館へ向かった。


ーー

そしていよいよ部活発表大会が始まった!書道部といい、美術部といい…バスケ部、卓球部それぞれの大技を披露し会場を盛り上げていく。さすがにどの部活も好成績を残してるだけあってみんなすごいパフォーマンスだ!でも今年のアイドル部はひと味違うってところを見せてやらないとな!


『鷹木さん!そろそろ順番くるんでよろしくっす!』


『了解。』


佐久間さんからの連絡を受け、それと同時に卓球部の発表が終わり、次はアイドル部だ!その前に少しの間時間ができる。その間に観客全員に俺はライトを配る。同時進行で照明のテストを眞鍋さん率いる照明担当の人達が、音響は佐久間さん率いる音響チームが準備を進めていく。部長のりなは自分のクラスの担当が忙しくなったらしく急遽いなくなったが渡部さんが対応してくれるみたいだ…とりあえず俺は反対側でライトを配っていた草壁さんと合流しステージ裏にいる琉偉さんの元へ向かった。背中を押したとはいえ緊張は消えてないだろう!


「琉偉さん…大丈夫そ?」


「うん!ようちゃんとみんなが背中を押してくれたから。」


「琉偉さん」


「ん?」


「優勝なんてしなくていい…楽しんでこい!俺に…俺たちに任せろ!」


「うん!!」


『みなさん!お待たせしましたー!これよりアイドル部の発表を始めます!』


渡部がマイクをもち前の発表以上に盛り上がっていた。


「アイドル部だ。」

「どうせまたプロジェクター出して訳分からんことでもすんだろ?」

「なんかライトまで持たされたし…なにかやんの?」


そんな話が聞こえてくるがお構い無し!


『今回私たちは今後確実に有名になる期待の新人をご紹介致します!ご紹介しましょう!ルイニャンでーす!』


『ル、ルイニャンです…よろしくお願いします…』

まぁ、少し緊張してるようだけどそこまできにならない!そして曲に入った!会場は大盛り上がり!当然だ!ダンスも歌も完璧!さすがだ…世羅さんの動きをほぼ完全にコピーしてる!


『ありがとうございました〜!ここからはイベント…琉偉さん?』


琉偉さんを見るとフラフラしていてどうもおかしい…そう思った瞬間バタッと倒れた!


「琉偉ぃぃぃぃ!!」


俺はすぐに駆け寄り彼女の方をとんとんとしながら何度も呼びかけた。息が荒く、熱もある…カーテンが閉まり会場はざわめいていた。しかしそんなこと気にしていられない!俺は琉偉さんを抱えて保健室へ。


「あら?鷹木くん…と琉偉さん!?なにがあったの!?」


「すみません、俺にもよくわからなくて…曲を終えた瞬間フラフラしてて…バタって倒れちゃって…」


「すぐにベットへ!」


俺はすぐに琉偉さんをベットへ連れていき先生に診てもらった。


「うん、過度のストレスと疲れね。相当無理してたのね…。」


「そうですか…」


やっぱりストレスと疲れが一気に来たんだ…当然だ…いきなり日にちがずれて自分が歌わないといけないことになって、優勝しなきゃ行けないプレッシャーと人前で歌わなくちゃいけない緊張が全部きたのだろう…


「あなた途中で抜け出してきたんでしょ?」


「はい…でも今は琉偉さんが心配なので…」


俺のせいで琉偉さんに負担をかけてしまった…俺が力不足なせいで…!!


「大丈夫よ、私がみておくから早く戻って自分の仕事をはたしなさい。」


「はい…お願いします。」


俺は罪悪感にのまれながらも歯を食いしばって体育館へ向かった。


ーー

俺が戻ってくると全ての発表が終わっていて結果発表となっていた。今、3位まで発表されているらしい…


「もう…ダメなのでしょうか…」


「やれるだけのことはやった…あとは結果だけだ…」


そこへ、りなも合流し、みんなで願った。


「第2位は…アイドル部です!」


体育館はかなり盛り上がっていた。まさか今まで最下位辺りをさまよっていた部が2位に入ったのだから…でも俺たちは素直に喜べなかった…


「…ダメ…だったか…」


眞鍋さんの一言だけしか聞こえなかった…まるで耳がいきなり聞こえなくなったのかと勘違いさせるほどに…でもみんなよく頑張った。十分だろ…。


「みんな、お疲れ様!すまなかった!私がいても同じだったかもしれないが…一緒にいてやれなくて…」


「部長のせいじゃないですよ…みんな頑張った結果ですよ。」


「そうですよ…それに2位なんて凄いじゃないですか!今までこんな順位とったことなかったじゃないですか!」


みんな励ましあっていたが涙が溢れていた。それほどみんな本気だったんだ…俺も…琉偉さんも。よく頑張った…悔しいなぁ…俺にもっと力があれば…


ーー


「んっ…よう…ちゃん?」


「ふふっ、ようちゃんじゃなくてごめんね?」


琉偉さんが目を覚ますとニヤニヤと笑いながら保健の先生が私を見ていた。


「え…あっ!先生!」


「あらぁ、顔真っ赤にしちゃってぇ!可愛いとこあるじゃない。」


「うぅぅぅ…」


「鷹木くんは自分が戻るギリギリまであなたを心配していたわ。」


「そうですか…」


そっか…あの後私…倒れて…まだ頭が少しぼーっとする…


「それにしてもびっくりしたわ!お姫様抱っこして保健室に来るんですもの!」


「えええっ!恥ずかしい…。」


まさかそんなことになってたなんて…きっと周りから変な目で見られていただろう…ようちゃんに迷惑がかからないようにしてたのに…迷惑かけてばっかりだ。


「鷹木くんに感謝しなさい。」


「はい…」


「あっ…わたしっ…歌の後倒れて…発表大会は!?」


「今結果発表が終わった頃じゃないかしら?」


「行かなきゃ!」


寝てる場合じゃない!そう思って起き上がろうとするが体育館に向かおうとする琉偉さんを先生はとめた。


「だめっ!安静にしときなさい。」


「でも!結果が!!」


私が倒れてしまったあとどうなったの!?結果は!?色んなことが頭をよぎる…

すると、コンコンという音が聞こえた。


「鷹木くんね!入りなさーい!」


「失礼します。」


保健室に入ると、琉偉さんが起きていた…先生に手を掴まれていた。きっと体育館に行こうとしたのだろう…でも今はそんなことより!


「よう…ちゃん」


「琉偉…琉偉ぃぃぃい!」


「よ、ようちゃん!?」


俺は我慢できず琉偉さんを抱きしめた。なるべく痛くならないようにそっと抱きしめる。そしてそっと離れ琉偉さんのかたにそっと手を置いた


「もう平気か!?どこも痛いところはないか!?いつ起きたんだ!?どうもないのか!?」


「う、うん!大丈夫だよ!」


「よかった…ホントに…よかった…」


本当に良かった…顔はまだ少し赤いけど悪化はして無さそうだ。先生も大人しくなってくれたから安堵したようだ。


「それで…結果は…」


そう言われた瞬間はっとした。そうだ…結果を伝えないといけない…正直に言おう。


「……2位だった。」


「…そっか。」


「でもホントすごいよ!2位なんでなかなか取れるもんじゃない!そりゃアクシデントはあったけどそれでも凄いよ!!琉偉さんのおかげだ!」


俺は本心からそう言ったが彼女の顔は徐々に暗くなって言った。


「……。」


「琉偉さん?」


「ごめんね…私があの時倒れなかったら…」


「琉偉さんのせいじゃ…」


「私のせいなの!」


「ッツ!?」


保健室が静まり返った…。きっと彼女はずっと目を覚ましてからずっと自分を責めつづけたのだろう…


「全部…私の…せい…ううっ…あぁぁぁっ…」


その目には涙がこぼれていた…今まで我慢してきたものが溢れ出たかのように…俺はもう…彼女の悲しむ顔は見たくない…それなのに…


「琉偉さん…」


それなのに!何やってんだよ俺!あの時言った言葉は偽りか!!俺の馬鹿野郎!!

そう思ったら体が勝手に動いていた。俺はもう一度、今度はしっかり抱きしめた。


「よう…ちゃん?」


「言っただろ?お前のおもり…俺にも背負わせてくれって…。」


「ごめんね…」


「もう謝らなくていい。みんな、怒ってないし…むしろ心配してたぞ…私達のためにありがとうって言ってた。」


「そっか…。」


琉偉さんは俺の背中に手を回して抱き締め返してくれた。しかし後ろから「もしもーし」という声が聞こえてはっとした!そういやここ保健室!!


「本当はそっとしてあげた方がいいんだろうけどそういうのは保健室じゃなくて別の場所で2人っきりの時にしなさい!」


「「すみませんでした…」」


そう言うと俺と琉偉さんはあははっと笑った。


「でもやっぱり、悔しいなぁ…」


「まぁ、審査員たちの見る目がなかったってこったろ!なははははっ!」


「あははっ…うん、ありがと。でも、結果は2位だったんだね…」


「十分だよって部長が言ってた。」


とりあえず元気そうだからよかった。俺は片付けがあるからと言って戻った。琉偉さんも手伝うと言ったがまた倒れられたらたまったもんじゃないからな!


ーー

そして片付けも終わり部室に全員が集まった。


「みんな!よく頑張ってくれた!わたしはめちゃ嬉しいよ!最後の最後で2位になったんだ!最高だよ!」


「…ごめんなさい…」


「おい丹比、謝るのはなしだ!!次謝ったらしばくから覚悟しとけ。」


「…でも…」


「入って数日でこんなことになって…ゴメンな…こんな部活のために勇気を出して歌ってくれてありがとな…お前が入ってくれなかったら私達はこんな素晴らしい結果を成し遂げることが出来なかった!ありがとう!!」


りなは笑顔で琉偉さんを励ました。そのおかげで琉偉さんも笑顔になった。


「部長…」


「渡部…お前には散々迷惑をかけてきた…みんなの前で発表するのを毎回お前に任せてしまって…辛かっただろう。」


「そんなことないです、私は好きで前に出ていたので!部長のために…頑張りまじだ…うぅ…うぁぁぁっ…」


我慢できなかったんだろう…渡部さんは大粒の涙を流してりなに抱きついた。それをりなは抱きしめて受け入れた。


「泣くな泣くな…全くお前は…今までありがとな…草壁。」


「りなちゃん…」


「お前ははじめ、内気で…裏方の仕事に徹してて発言もあまりしなかったよな?でも今ではよく笑い、よく話して、発言もするようになった、私は嬉しいよ。お前がうちの部のムードメーカー的存在だった!」


「部長…泣かせないでくださいよ…もう…」


草壁さんは涙が流れそうなのを必死にこらえ笑顔を作った。その目には涙がひとつ流れていた。


「眞鍋、佐久間!」


「はい!」「俺たちは一緒かよ…」


「お前たちはセラピョンをいやらしい目で見すぎだ!と何度怒ったか分からん。フィギュアを置けばすぐスカートの中を覗くし、同人誌もセラピョンだらけだ」


「まて、なんで同人誌のことを知ってる!?」

「というかなんで俺たちだけ説教なんですか!?」


「まぁ、誰よりもアイドルが好きで誰よりもアイドルを応援してるお前らがめちゃくちゃ輝いて見えてた。今日も色々頑張ってくれて…ありがとな。」


「「はいっ…。」」


「耀司…まさかお前がセラピョンファンだったとは思わなかった。」


「まぁ、言ってなかったからな。」


「聞いてびっくりしたぞ?アクシデントがあった時のことを考えてセラニャンの映像を使うなんてな!」

「めちゃくちゃ盛り上がってましたね!」

「ほんとにライブやってるみたいでした!」

「正直アクシデントがドッキリかと思ったわ。」


「まぁ、まさか本当に使うことになるとは思わなかったですけどね。盛り上がったのなら良かった。」


そう、俺は世羅さんにお願いしてセラニャンの歌の映像を残していた。やってなかったイベントも俺たちでやれる範囲はやった。


「まぁ、仕方ないですね…もうここに来ることも…」


「最後に記念撮影でもすっか!」


「それいいですね!」


「部長!どりまじょぉぉぉ!」


「いい加減泣き止みなさいよ!てか離しなさい!」


「じゃあ俺が撮りますよ。」


「何言ってんだ?お前もうつるんだよ!カウントカメラにしてとればいい!」


「せぇの!」


「「「「セラピョンピョン!」」」」


ーー

心の中


『ごめんね…』


『ふん!あんたが優勝しないなんて当たり前でしょ!』


『うっ…』


『ちょっと世羅ちゃん!』


佐奈が止めようとするが世羅は言葉を止めることはなかった。そして世羅は佐奈の顔を見て


『もしこれが料理対決なら佐奈じゃないと無理だった!』


『え?』


『もし、詰め放題の勝負だったら伽耶じゃないと勝てなかった!』


『詰め放題勝負って何!?』


伽耶さんがなにそれやりたい!と言っていたが世羅は完全無視していた


『口喧嘩だったら摩耶じゃないと勝てない!』


『おっ?なんだ?喧嘩なら受けて立つぜ?』


『琉偉…耀司のことに関してだったら、あんたじゃないと勝てない…』


『摩耶ちゃん…』


『私たち、体は同じでも…頭の良さが同じでも、運動神経がいいのが同じでも…得意なことは違う!それを本当に好きでやってないから!そうでしょ!?まぁ、耀司を好きなのはみんな同じだけどね!』


世羅の言うことは正しかった…琉偉はプロのアイドルじゃない…ましてや急にハプニングが起きて練習もないままやらされたのだ。2位はかなり好成績だ!


『だから!謝る必要は無いの!むしろよくやったわね。お疲れ様…』


『ううっ…世羅ちゃぁぁぁん…ごめんねぇぇぇ…』


『ほんとあったって子は…馬鹿なんだから。』


『良かったね。』


そして摩耶は申し訳なさそうに手を挙げた。


『じゃあ、交代するぞ?』


『うん!よろしくね!』


摩耶は黙って真ん中へたった。絶対なくさない!ようちゃんのために!

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