第15話 どうしようもないこと。

琉偉さんとのお出かけから数日が経った。俺は文化祭の準備でくたくたに疲れていた…ずっと遅くまで居残りしてたし、アイドル部のこともあって爆睡していた。そこへコンコンっと言う音の後に一人の女性が入ってきた。


「耀司ぃ〜?」


今日は世羅が起こしに来た。ツインテールにくくられた髪をクルクルしながら耀司を見つめていた。


「……。」


世羅はカメラを取り出し何枚か写真を撮ったあと自撮り機能を使ってツーショットを撮った


「ふふっ、壁紙にしよっと!…しかし、全然起きないわねー…耀司起きなさい!」


「うぅ〜ん…セラピョン…。」


「ッツ!?」


違う!今の私は世羅なんだから!動揺しちゃダメ!でも、私は…


「私は耀司だけのセラピョンだよ…耀司…」


「んぁ…セラピョン…」


俺は目を覚ますとすぐ目の前に世羅さんがいた。え?どういう状況!?


「天使が目の前にいるんだけど…」


「て、天使!?」


「あっ!?」


今の声に出てた!やばっ!絶対『何言ってんのキモ二度と近づかないで』って言われる!いや、世羅さんになら…ちょっと言われてみたいかも!


「何言ってんのよ!ま、まぁ…あんたの天使にならなってやってもいいわ!感謝しなさい!」


「お、おう。」


「ほら、早く起きなさい。今日は練習遅くまで付き合ってくれるんでしょ!」


両手を掴まれベットから起こされた。なんだろう、最近女子に起こされることが多すぎてモテ期なんじゃないかと勘違いしてしまう。ダメだな!天狗になってるぞおれ!


「おはよう耀司!朝ごはん出来てるからこれ食べて世羅ちゃんの分もあるから!私は今日も早出だからよろしく〜!」


そう言ってすぐ出ていった。てことは世羅さんと二人きり!まぁそんなゆっくりしてられないけど…


「はい、耀司!あーん!」


「いや、自分で食べられるから…」


「食べないとこのままだからねー。」


そう言われたらもう食べるしかないと観念した耀司は口を開けて焼き鮭をひと口食べることにした


「…あ、あーん…」


「美味しい?」


「美味しい。」


「良かったぁ、今日のご飯は私も手伝ったの!お義母さんが味見してるから安心よ!」


部分っと胸を張ってそう言った。少し笑えてしまった、今までの疲れが吹っ飛んだ。やっぱり彼女を見てると自然と元気になる…不思議な子だ。


「いやぁ…幸せだな俺…こんな奥さんがいてぬれたらしあわせだろうなぁ…」


「へっ!?まだそれは早いよ…まずは付き合ってから…ううん!結婚からでも大丈夫!だってお義母さんから許しは得てるんだし!それに耀司は私のこと大好きなはずだし…」


なんかさっきからぶつぶつ言っているがよく聞こえない。まぁ、いっか。俺は朝ごはんを早く食べいつものように支度して…


「じゃあ行こっか。」


「まって耀司!」


「え、な…に…」


なにか忘れ物かと思って振り向くと頬にキスをされた…え?なに!?キスされた頬を擦りながら俺は世羅さんを見た


「ご飯粒ついてたから。」


ペロッと舌を出してご飯粒をみせた…朝から心臓に悪いのでそういうことはやめてください。あと、そういうことを朝からされると発散先がないからやめてくれ!ペロッと出した舌とかめちゃくちゃ綺麗な歯とか意外と八重歯になってて猫みたいで可愛いなとか思ってないからな!


「…ほんとセラニャンだなぁ。」


「え?何か言った?」


「ううん、なんでもない。」


そう言って俺たちは一緒に学園へ向かった


ーー

学園へ行くと文化祭の準備がちゃくちゃくとすすめられていた。うちのクラスは定番のメイド喫茶をすることになった。まぁ、クラスの一部の女子と男子が手を組んで丹比さんのメイド服がみたいという私利私欲をさらけ出した結果であった。まぁ、特に先生の反対もなかったし、ほかの女子もちょっと嫌そうだったが多数決だったので仕方ないだろう。


「お前ら席につけー、HRを始める。」


いつものように山城先生が入ってきた。だが少し元気が無さそうだ。なんだろ?


「えぇ、急な話なんだが……文化祭の日にちが早まることになった。」


「え…?」


どういうことだ?なぜ急に日にちが変わった!?


「予定では今週の日曜日と月曜日だったんだが…金曜日と土曜日にした方が日曜日が休みなるからちょうどいいだろうという事だ。」


周りからは不満の声が広がっていた…そりゃそうだ。今でも少し遅れているクラスもいるのにどう考えても間に合わない!一部で火曜日休みになんねぇじゃんとか言ってるやつもいるがそんなのはどうでもいい!まずいのはと俺は世羅さんの顔を見ると表情が強ばっていた。


「色んな声があるのは分かる、だがこれは決定事項らしい。だから文化祭の日にちは日曜日、月曜日から金曜日、土曜日になった。」


HRが終わり、俺は世羅さんに話しかけた。


「世羅さん、まずいですよ…」


「そうね…でも決定事項なら…仕方ないでしょ…」


そう、一日目の午後から部活の発表大会がありそこで世羅さんが歌うという予定だった。しかし、金曜日にずれたら琉偉さんが歌うことになってしまう…同じ人格とはいえ、本人とは違うから…まして、質問コーナーやちょっとしたイベントみたいなのも考えてたから…琉偉さんじゃ…。


「どうしたんだ?」


と財前が話しかけてくるがこれは言うべきなのだろうか…発表会のことはなるべくサプライズということにしておきたい。みんなの力を借りたいけど…日にちもズレてさらにピリピリしているだろう…


「いや、なんでもない。」


何とかしなくちゃ…とりあえず放課後部室に言って話し合うしか…。しかし放課後…


「鷹木さん!手伝って!」


「げ!?俺今日部活に行かなきゃ!」


今日のために昨日頑張って作業時間倍にして進めてたんじゃん!?


「ごめん!ほんとキツキツで…」


「…わかった。」


大変なのはみんな同じ…仕方が無いと思って手伝うことにした。しかし…どうしたものか…今からじゃ琉偉さんの練習が出来ない!ぶっつけ本番でダンスもイベントも全部やろうなんて無理だ。


「鷹木!手が止まってるぞー!」


「すんません!」


ーー

そしてようやく解放された頃にはもうほとんど時間がなくて…部室ではどうするか…という話になっていた。


「んもう!辛気臭いわね!!」


ドンとテーブルを叩き世羅は怒鳴った。みんなが世羅に視線を集めた。


「確かに私じゃなくなったけど、みんな私自身なんだから大丈夫よ!それに琉偉なら大丈夫よ!安心しなさい!」


「そうだな!考えても仕方ない!」


「うん、確かにそうかもね!」


世羅さんの一言に我に返った眞鍋さんと佐久間さんがつづく、部長と草壁さんもよしっと気合を入れた!


「琉偉さんに出来るようにイベント内容を少し減らしてわかりやすいことを考えましょう!ね?部長!」


「えぇ、当たり前でしょ!私達が協力しあったらなんとかなるんだから!」


…そうだな。今難しく考えてても仕方ない。なるようになれだ!それに丹比さんにばかり負担をかけてどうする!みんなで成功させなきゃ!


「ようし!頑張るわよ!アイドル部!!ファイト〜!!」


「「「「おー!!」」」」


「やっと私ができた…」


部長らしいことを出来て嬉しかったのだろう。りなが涙を流していた。これなら…何とかなるかもな!


ーー

「ただいまぁ。」


「あれ?元気ないわね?なんかあったの?」


母さんは帰ってきた俺に話しかけてきた。そんなに元気なさそうにしてたか?


「まぁ、色々あってな。」


俺は母さんに全部話した。

文化祭の日にちがズレたこと、世羅さんが歌えなくなったこと、変わりに琉偉さんが歌わないと行けなくなったこと。


「そう…そんなことがあったのね。」


「俺なんかにはどうしようもないし、仕方がないことと言われたらそこまでなんだけど…」


「まぁ、あんたは昔っから難しく考えすぎなのよ…この世の中、なるようにしかならないの。」


「……。」


「はぁ…ちょっとこっち来なさい。」


「おう?」


そう言って母さんの元へ近づくとぎゅっと抱きしめられたそれもまぁまぁ強く…


「ちょっ!?何するんすか!!」


「考えすぎるなってこと…前にも言ったでしょ。あんたは学生なんだから色んなことを楽しみなさい!」


「母さん…。」


「誰かのためだけじゃなくあんた自身のためにあんたがやりたいことをやりなさい。」


「ありがと。」


「あ、衣装代とってなかったわね?」


「え?今それいいます?」


そういえば土下座しただけじゃダメだよな…ちゃんとしたものを返さないと…


「わたしとデートしなさい、それでチャラにしてやるわ。」


「へいへい。」


ーー

心のなか


『琉偉…大丈夫?』


『ふふっ、私を誰だと思ってるの?私に任せてよ!』


『まっ、ずっこけねぇように頑張れよ?』


『ずっこけないし!!』


『私は琉偉さんならやれるって信じてます…』


『ありがとー伽耶ちゃん!』


『……。』


『私、世羅ちゃんの分まで頑張るから!』


『当たり前でしょ!優勝しなかなったら許さないんだから!!』


『当たり前でしょ!』


『ふふっ、じゃあ私行くね?』


『あんたも頑張んなさいよ!』


『うん!』


伽耶は普段とは違い気合いを入れて真ん中にたった

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