第10話 本当の気持ち
「本当の気持ちが…しりたいなぁ。」
丹比母は自分の娘のことをどう思っているのかを聞いてきた。それはきっと友達としてとか、人としてとかじゃなくて…
「俺は…」
「何喋ってんだァ?オレもまぜてくれよ?」
後ろからさっきが聞こえ後ろを振り向こうとするが先に首をガッと腕で掴まれたまぁさすがに殺すまではしないだろうけどまぁまぁ力入ってていたい。
「あぁんもう!摩耶ちゃん、せっかく摩耶ちゃんのために力になってあげようと思ってたのにぃ!」
「余計なお世話だ!てか、なんの話しをしてた!!」
腰をくねらせて腕をなまめかしく動かしてる丹比母を見てさらに殺気立っていた
「えぇ〜私とようちゃんのぉ内緒〜」
「耀司ぃ〜?」
いや、そんな目で見ないで…怖い怖い。それに首を掴まれてて目をそらそうにもそらせなくなってるし…
「え…えと…」
お前のことが好きかどうかの話…なんて口が裂けても言えるか!!
「そういえば、サトレェゼのケーキを買ってきたの!摩耶ちゃんも食べるでしょ?」
「サトレェゼのケーキ!?」
やっと開放された。マジで死ぬかと思ったわ〜ナイス母さん!
「摩耶ちゃんはホントにサトレェゼのケーキ好きよねぇ?」
「うわぁ!シュークリームにいちごタルト!ショートケーキにチョコケーキ!チーズケーキまである!」
母親の言葉なんてお構い無し。もう摩耶の目にはケーキしか入ってなかった。
「摩耶ちゃん、どれかひとつじゃないとダメよォ?」
「わーってるよ!そこまで子供じゃねぇし!」
「だって1回買ってきた時に全部食べちゃってお父さん泣いてたじゃない。」
「子供ん時の話だろ!」
何その面白エピソード詳しく聞きたいんですけど!?1度も本人からそんな話聞いたことないんだけど!てか可愛すぎない!?
「うーん!悩むなぁ…よし!じゃあいちごタルト!!」
「じゃあ、私はチーズケーキ。」
「私はァ…悩みどころだけどチョコケーキ!」
順番ずつとって言ってショートケーキとシュークリームが残った。うーむ…確かにこれは悩む…
「じゃあ俺はシュークリームで…。」
そして皆黙々と食べていると摩耶が俺の事をじっと見てきた。
「な、なに?」
「いいや、別に?」
俺が聞くとフィっと向こうを見るが少ししてすぐまたこちらを見てる。何何!?めちゃくちゃ見てくるから緊張して食べられないんだけど!?
「あ、クリームついてる?」
朝にジャムがついてた時も見つめてきてたからそうかなっとも思ったがなんの反応もないところを見るとそれも違う。なに?
「こら摩耶ちゃん、2番目に好きなシュークリームだからってそんなに見つめちゃようちゃんが食べにくいでしょ?」
あっ、そゆことね!ホントにここのデザートが大好きなんだな。じゃあ、シュークリームを半分にして、口がついてない方を…
「ほい。」
俺は口をつけてない方のシュークリームを摩耶に渡した。一度は、いいとは言ったがどうしてもシュークリームが気になるらしい。
「…いいのか?」
俺が頷くとはァァァっと顔が明るくなってその半分のシュークリームを受け取って嬉しそうに食べた。うむ、口にほうばって食べてるところ見てるとリスみたいだ。
「まぁ、そんなに見つめられてたら食べにくいし、美味しそうに食べるとこ可愛いなって。」
「にゃっ!にゃにが可愛いだ!からかいやがって…!でも…ありがとな。」
そんなやり取りをしてるとうちの母と丹比母が口を揃えて「あらあら、まぁまぁっ!」と言って俺たちを見ている。
「まるで付き合いたてのカップルみたいねー。」
「甘すぎるわね。ちょっとポテチ取ってくるわ。」
「はぁ!?誰がカップルだ!!こんなやつ…こんなやつぅぅぅ!」
顔を真っ赤にして俯く摩耶。ちょっとまんざらでもないと思ってる俺自身が自意識過剰すぎだろ!っておもってしまった!
「ふふっ、でも本当にようちゃんは優しいわねぇ。」
「そうでしょうか?」
普通だと思うんだけどなぁ。そう思っていると母さんが急に口を開く
「まぁ、小さい頃からなんだかんだ優しかったわね。私がちょっと高めのブレスレットを見てて、それを横で見てたんでしょうね、数ヶ月くらい経ってこの子ったらブレスレットが売ってるお店に行って『もう少し安くなりませんか?』って涙目でお年玉の袋を取り出して!その中には今までのお小遣いとお年玉が入ってて!私、思わず笑っちゃって!店員さんに謝ったんだけどその店員さんが本当に安くしてくれたの!だからそれを買ってもらって…『どうじょ?』っていったの!まぁ、お金は自分のために使いなさいって言って払ってくれた分は返したんだけど、それが一番の思い出だわ。」
「母さん!それ言わないでって何度も言ってたじゃん!」
まだ覚えてたのかそんな昔の記憶!確かにそんなことあったな!あの時は500円のお小遣いを貰ってて、あんまり物欲とかなかったからずっとためててそしたら母さんがなんかブレスレットを見てたから値段みたら高っ!ってなって数ヶ月くらい頑張って貯めて…それでも足りなかったから女性の店員さんにまけてもらうよう頼んだんだっけ?
「いいじゃねぇか可愛いエピソードだった!」
「ホント可愛くて優しいわね!他にないの?」
摩耶と丹比母は楽しそうに話を聞いていた。いや、さすがにこれ以上覚えてねぇだろ?
「まだまだあるわよ!上司から聞いたんだけど私が風邪ひいた時、この子、会社の上司の名前知ってて、ある程度連絡の仕方教えてたから携帯開いてその人に連絡しちゃったの!」
えぇ!?まだあんの!?記憶力どうなってんだよほんと!俺をオーバーキルする気か!?
「えぇ!それでそれで!?」
「『ママ…お熱になってる…』って涙流しながら電話してたみたいで…それで上司がこの子にわかるように簡単な看病ことを教えてくれて昼から家に来てくれたの。意識が朦朧としててよく分からなかったけどね。」
「へぇ!子供の頃からしっかりしてたのねえ!」
「もうやめてぇぇぇ!!」
丹比母もとてもいい笑顔でこちらを見てくる…やめろ…そんなめで俺を見るな!!恥ずかしくてもう死んじゃう!!
「あとね、少し大きくなってからの話なんだけど!2人で海に来てこの子がトイレ行ってる間にナンパにあったの!」
「あっ!その話だけはやめて!!」
それだけは勘弁してくれ!
「まぁまぁ、落ち着けって!んでんで!?」
「おまえっ!離してくれっ!!」
俺が慌てて母さんを止めようとするが摩耶が俺の腕を掴んで話さなかった!おい!離せっ!その話だけはやめてぇぇぇ!!
「そしたらトイレから出てきたこの子、『オレのつれになんか用?』って私の肩に手を回して抱き寄せてくれたの!ほんとあの時はきゃぁぁぁってなったわ!我が息子ながらカッコつけちゃってぇ!ってなったわァ!」
「きゃぁぁぁ!私だったら息子でも結婚してるわァ!」
「うぅぅ…あの時俺はどうかしてたんです…」
トイレに行ってくるって伝えたらじゃあ私はそこら辺でぶらぶらしてるわって言ってたからトイレを出て、近くにはいねぇだろ?と思って探しに行こうとしたら出てきたら目の前でなんぱされてる女の人がいて、そんなこと言ったんだよ!そしたらまさかのお母さんだったってだけなの!
「へぇ!お母さんのためにそんなことまで!もう彼氏じゃないの!!」
「まぁ、私にとって元旦那よりも旦那だったわ。」
「もう許してあげてくださいお願いします。」
これ以上は俺の精神がゼロになっちゃう!
「そうね、まだまだあるからまたHINEで送るわ」
「ホント!?もっともっと教えて欲しいからいっぱい送ってね!」
いつの間に交換したの!?てかこれ以上俺の事話されたらもうお婿に行けないっ!
「ほんとやめてくれぇぇぇぇ!!」
その夜は俺の叫び声が家中響き渡ったという
ーー
「今日はご馳走様でしたぁ。」
玄関前で丁寧に一礼した丹比母。見ててすごく気持ちがいい!
「いいえ、むしろ手伝ってもらってありがとね!また一緒に遊びましょ?」
「是非是非!」
ママ友同士で話していると摩耶がバッと頭を下げた。
「お義母さん、ご馳走様でした!美味しかったです!また来てもいいですか?」
「えぇ、毎日でもいらっしゃい!」
「いや、毎日はいいだろ…」
毎日こんな話をされたら俺の心がいくつあっても足りるか!
「まぁたこの子ったら照れちゃって…。」
「照れてねぇよ!!」
「ようちゃん、また今回はまやちゃんに邪魔されちゃったけど…ゆっくり話させてね?」
「き、機会があれば…」
まだ諦めてなかったのかよ…。やっぱり怖いなぁ…この親子だけは。
ーー
その帰り道、摩耶はにこにこしながら話を始めた
「へへっ!あいつの弱みいっぱい握れたぜ!あのお義母さん最高に面白いよなぁ!」
「ふふっ、楽しそうでよかったわ。」
「…あっ!ま、まぁ、嫌じゃなかったし?楽しかったんじゃね?」
「ふふっ、今更取り繕っても無駄よ?それにあなただって、私が指を包丁でちょっと切っちゃった時…」
ふふっ、と笑いながら幼少期時代のことを話す母を慌ててとめにかかった!
「その話はやめろって!!」
「ほら、さっきのようちゃんだって同じ気持ちだったのよ?誰だって子供の時可愛い時はあるものよ…もちろん今でも可愛いけどね!!」
そういうと丹比母は摩耶に思いっきり抱きついた。
「あぁーもう!抱きついてくんな!!」
「いいじゃない今日くらい!」
「今日っていうかまいかいだろがぁぁぁ!」
摩耶は何とかふりきってたったっと走り始めた。
「待ってよ摩耶ちゃぁぁぁぁん!」
ーー
心のなか
『やっと交代ですね。』
『あぁ、よろしく…』
『どうしたのですか?かなりやつれてますけど…』
佐奈の言葉に摩耶はふんっ…と無視した。
『さて…少し大変そうだけど頑張りますかぁ。』
佐奈は少し伸びをしてグッと拳に力を入れた。
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