第9話 部活存続の危機!?

「ようちゃん…起きろ…起きろよぉぉ…」


耀司の部屋で少し頬を赤らめ耀司を起こしている女の子。りな…ではなく摩耶だ。りなは朝から日直だからと先に行ったのだ。


「んっ…あと二十分…」


「そんなに寝たら遅刻しちまうだろ…まぁ、オレはそれでもいいけど。」


「もう少しだけ…」


「早く起きろって!うぉあっ!!」


摩耶がしびれを切らし一発どついてやろうとした瞬間その手を引かれ耀司の横に添い寝する形になってしまった。


「おい!何しやがる!!何寝ぼけたんだもー…」


そんなことを言っていると耀司は摩耶の頭を撫で始めた。


「お、おい!お前っ…やめっ…うぅんっ!」


「よーしよし可愛いなぁ…モフモフで可愛くて…むにゃむにゃ…」


顔を真っ赤にして固まってしまう摩耶、頭を撫でられることに慣れていなくてどうすればいいのか分からないのだ。


「耀司…ダメだって…これ以上はぁ…」


「んっ…あれ?…摩耶!?」


「…よう?お目覚めはいかが?」


笑っているように見えるが明らかに怒っている。そりゃそうだ!彼女を自分のベットに引っ張って頭を撫でている状況なのだから!


「最高…です。」


「いい加減離せや馬鹿やろぉぉぉ!!」


「すみませんでしたァァァァ!」

ーー


俺はとりあえずパンをかじりながら彼女を見た。摩耶は肘を着いて俺の顔をじっと見つめていた。


「なんだよ?」


「いや、摩耶が見つめてくるから…なにかついてる?」


「はぁ…ジャムがついてんだよ気になるなぁ。」


そういうと俺の唇に手を伸ばしてジャムを取りぺろっとなめた。くそっ…めちゃくちゃイケメンか!女の子にやられるとは…男として負けた…


「そういえば丹比ちゃん、この間のお礼!お菓子とお肉のお礼!」


「あぁ、うっす!母さんに渡しときます。」


お母さんに話しかけられるとは思わなかったのか辺にかしこまって返事をする摩耶。可愛いなぁ。


「よろしくね。あと、耀司、今日はなるべく早く帰ってきて。」


「なんで?」


「丹比さんのお母さんをうちに呼んで話をしたいなって思ってるの!私だけじゃおかしの準備とかいろいろかかるし…」


いつの間に丹比母と仲良くなったんだよ!?まぁ、いい事なんだけどよ!


「それに耀司くんともいっぱい話したいって言ってたから。」


「かあさん…まだ懲りてなかったのかよ…」


摩耶ははぁ…とため息をついた。まぁ、あのお母さんだからなぁ。ずっと俺の事見てきてたし…


「分かった。なるべく早く帰ってくるよ。」


「摩耶さんも一緒に帰ってきてね!色々話したいの!可愛いし!」


「う、うっす…」


顔を赤くして下を向く摩耶さん。珍しく可愛い。


「なんか失礼なこと考えてやがんな?」


なに!?摩耶さん意外と勘鋭っ!


「さ、さっ!朝飯もくったし行こっか!」


「あっ!待ちやがれ!てか歯ブラシしろ!顔も洗え!」


「うぉぁぁぁっ!あぶないあぶない!わかったから離してくれ!」


「ふふっ、摩耶ちゃん、まるでお母さんみたいね。」


「へっ!?」


摩耶は母さんの言葉に顔を真っ赤にしたまぁ、そんなことを言われたら誰だって怒りたくなる…


「そ、そんなこと…ないっすよ。」


「そーお?私あなたみたいな子が嫁に来てくれたら嬉しいけどなぁ。」


「えっと…それはまだ…早い…っつーか…」


俯きながらごにょごにょ言ってるせいでよく聞こえない。まさか俺殺される!?

とにかく綺麗に歯を磨き顔を洗い、髪も整えた。


「さっ!いこう!」


「お、おう!おじゃましました!」


「またいつでもいらっしゃーい!」


ーー

いつもの道を歩いているとため息をついて少し怒り気味に摩耶は話を始める。


「ったく…お前の親だけは…。うちの母親にそっくりだ。人の心みすかすみたいに!」


「あはは…。そういえば摩耶はアイドル部のこと…どうなんだ?やっぱり嫌なのか?」


琉偉はあぁは言ってたけどほかの人格、摩耶さんはもちろん佐奈さんや伽耶さん。それともう一人の人の考えってまた違うんじゃないかって思うし。


「1人反論してる奴もいたがみんな特に異議なしだったから。いいんじゃね?」


「じゃあ摩耶はこんな感じのフリフリ衣装着てくれるのか?」


俺はスマホでセラピョンの衣装を見せた。さすがにキレられるか?と内心ビビっていたが返ってきた言葉は意外なことばだった。


「お前が着て欲しいって言うなら…着てやるよ。」


あれ?いつもならキレられるのに…今日はやけに機嫌がいいな。


「なにかいいことでもあった?」


「べっつに。」


表情には出てないが気分は良さそうだ。良かった。これなら部活に行っても仲良くしてくれそうだ。


教室に入ると摩耶に女子が何人か近づいてきた。


「おはよう丹比さんっ!」


「お、おはよ…」


「今日はカッコイイ丹比さんだねっ!」


「だっ、誰がカッコイイだ!オレは女だぞっ!」


女子たちが丁寧に挨拶するが、そういってぎっと女の子たちを睨んだ。おい…さすがにそんなに睨んだら怖が…


「可愛い…」


「はぁ!?」


「見た目はカッコイイのにちゃんと女の子っていう自覚があるのめちゃくちゃ可愛い!」


「おいなんだ!そんな目で見んじゃねぇ!」


「よしよし!可愛いねぇ…」


「こにゃあ!あたまにゃでんじゃねぇ!」


顔を赤くして撫でられるのを嫌がる子猫のように手をやさしくこいこいっとはらいのけようとしていた。なにこの可愛い生物…ほんと可愛すぎんだけど?ほかの男子もにやにやしながら見てるし。


「摩耶さんって怖そうに見えて可愛いんだな」

「俺、やっぱり話しかけてみよっかな!」

「おい抜けがけはなしだからな!?」

「俺好きになっちゃうかも。」

「おい!最初に彼女の良さに気づいたのは俺だぞ!」


そんな声も聞こえる。おい!彼女の良さに一番最初に気づいたのは俺だぞ!誰にも渡さん!


「お前らドアの前でイチャイチャすんな。百合ならよそでやってくれ。」


「誰がイチャイチャだ!」


山城先生がポンと日誌で摩耶の頭を叩いた。ガルルルルっと先生を睨むが先生は特に怖がってないし周りの女子は可愛いってからかってるし…でもよかった。クラスのみんな…少しずつ彼女に対しての印象が変わってきてる。このまま仲良くなってくれたら…俺一人に戻っちゃう!?


「それはダメだっ!」


「おいっ!ようちゃん!?離せっ!」


俺は摩耶の腰に抱きついて泣きじゃくれた。せっかく出来た友達なのにほかの人たちと仲良くなったら俺はまたこの学園のぼっちに逆戻りだ!


「俺を一人にしないでくれ!俺を…置いてかないでくれー。」


「いや、置いていくってなんだよ!?わーったから!離せって!」


頬を真っ赤にしながら払い除けようとしてる摩耶、それを見てクラスのみんなが爆笑しだした


「俺と友達でいてくれる?俺のそばに一生いてくれる?」


「あぁもう!一生お前のそばにいてやる!お前一人置いてどっか行くか!」


俺が涙目になりながら抱きついてるのを見て面白がっている人達、まぁ、先生は呆れた顔をしているが事情が事情なので何もつっこまない


「さて、HR始めるぞ。さっさと席につけ。摩耶、その泣き虫動物も連れてけ。」


「はぁ…なんでおれが…」


ーー

HRも終わり摩耶の周りには人が集まっていた。女子たちは

「友達になろー!」

「HINEやってる?交換しよ!」

「すごく綺麗な金髪だね!」

「可愛い可愛い!」


まぁ、これって転校初日にあったはずの光景だよな。


「……」


「残念だったなぁ、転校生が取られて。」


こいつ、丹比さんと仲良くなってから結構俺につっかかってくるやつ…財前だ。


「いや、むしろみんなと仲良くしてるならそれでいいかなって。」


「強がっちゃって〜。さっきまであんなに泣いて抱きついてたくせに!」


うりうりと俺の顔に肘をあててくる。うっぜー。


「なんだお前さっきから!この間から思ったけど!」


「いやぁ、お前と仲良くなってたらもしかしたら丹比さんとお近づきになれるかもしれないし!」


なんて野郎だ!まぁ、べつにいいけど?俺ほど仲良くなれる自信があるならどうぞ?お?おおん?


「おい、ようちゃん!助けろ!」


摩耶は俺に助けを求めていたが俺は暖かい目で見守り…


「仲良くなるのはいいことだ!どんどん友達を作ってくれ! 」


「いや、そんな…おい!誰だ頭にゃでてるやつ!!」


「良かった良かった」


「嫌いになるぞ!」


「君たち、それ以上にしとかないか〜!あまり過度な接触は良くないぞー!」


どうやら俺は丹比さんに嫌われることが嫌らしい。

ーー

そんなこんなで一日中からかわれスタミナが限界の摩耶。おつかれさん。放課後になったのでとりあえず部室へ行くとどっかで見たことある女性が


「なんですってぇええええ!!」


そんな声が聞こえて急いで部室へはいるとそこに居たのは美人な女性。


「あら、あなた達も部員ですか? 」


「はい、もしかして…生徒会長の…」


「はい、四條 琳(しじょう りん)と申します。」


黒髪のショートヘアの彼女は生徒会長の四條 琳さん。運動神経抜群、テストも学年1位全国4位の成績を持つ。先生からも生徒からも慕われモデル顔負けのスタイルをしている学校一人気の三年生!


「そんな生徒会長さんが何の用だ?」


さっきの疲れきった顔はどこへやら、喧嘩ごしに彼女を睨む。


「この部を廃部にしてくださいという要望があったのでそれを言いに来たのです。」


「なんだって!?」


なぜにまた!?ここ、別に部員揃ってるし顧問の先生もいるし(山城先生だったのが驚きだったけど!)特に問題は無いはず!!


「この部はあまりこれといった大きな結果を残せていないのです。」


「…ッ!?」


「た、確かにこの部活は大した功績は残せてません!でもみんな頑張って活動してるのです!それにアイドル新聞だって結構好評なんですよ!?」


「それで、この学校で紹介できるような大きなことはしましたか?」


「そ、それは…。」


「この学園では努力ではなく結果が重視されています。何も功績を残せていない部活はあっても無駄なだけです。」


「ちょっと待てや。」


生徒会長のきつい言葉にしびれを切らした摩耶が口をはさんだ。


「てめぇさっきから功績だの結果だのって言ってっけど、そんなに学園の功績が大事か?」


「もちろんです。この学園に通わせてもらっている以上、この学園を誰もが自慢するような学園を作り上げるのが私たち生徒の役目です。」


「んな難しいことなんかわかるかよ!それにあんま知らねぇがこいつらは今まで頑張って自分たちの好きなもんをみんなに分かってもらおうとしてる!それを無駄だと?ざけんじゃねぇ!」


「なんですって?」


摩耶の口の悪さもあってさっきまでは少し優しめだった会長も少し鋭くなった。これはまずい


「おい…摩耶さ…」


「人の努力を…人の好きなもんを無駄だとか言うな!否定すんな!てめぇらに否定される権限はねぇ!みんながみんな学園のためにやってんじゃねぇんだ!自分の好きなもんを楽しむために部活はあるんだ!お前らの評価の道具じゃねぇんだよ!」


ギッと睨みながら摩耶はそう言った。すると生徒会長の目が少し曇った。


「なるほど…あなたたちの言い分は分かりました。私も言い方が悪かったようなので無駄と言ったことに関しては訂正します。ですが結果を残せてないのはいけません。ということで、猶予を出します。次の文化祭でなにか大きな功績を残してください。それであなた達がいい結果を出せたら部活はそのまま継続してください。ですが残せなかった場合…分かってますね?」


生徒会長は威圧的な態度で摩耶を睨む。しかし摩耶は全く引く気もなく彼女を睨み返した。


「上等だ!なんでもやってやらァ!」


「では私はこれで失礼します。」


そういって彼女は去っていった。


「ふん!…すまねぇ、部長さん!こんなことになっちまって」


「え!?ううん!むしろあなたがいなかったら、すぐに廃部にされてたから!むしろチャンスをくれてありがとう…それに…無駄じゃないって言ってくれて…ありがとう」


「…まぁ、その…あれだ。のりかかった船だ!廃部になんかさせねぇ!あたしも協力してやる!」


「うむ、助かるよ。まぁ、丹比くんが言わなくても私が言っていたがな!」


と渡部さんは胸を張った。しかしてが若干震えてたので少し怖かったのだろう。


「ようし!じゃあ文化祭に向けて頑張るぞー!めざせ!優勝!」


「「「おぉぉぉぉ!」」」


「ってそれ私のセリフー!!!」


草壁さんが全部もってっちゃうから部長がぷりぷりと怒った。まぁ、なんとかなりそうだ。そして部活を早めに切り上げて俺は丹比さんを連れて家に帰った


「ただいまぁ。」


「おかえりなさぁい!待ってたわよォ!」


「うぉあ!!」


急に胸が突進してきた!確かにこれは幸せだけど息が全くできない…幸せ死してしまう!


「おい母さん!いい加減ようちゃんから離れろ!」


「そうね、ごめんねぇ。さっ、早くご飯食べましょ!」


摩耶の言葉をほとんど無視し俺の腕をがっしりつかみながら俺をリビングへ連れていく。


「耀司、おかえりなさい。それと、摩耶ちゃん…でいいかな?」


「は、はい!あっ、食器とか出すの手伝います!」


「大丈夫大丈夫、夜ご飯は私と智世子さんで作ったから摩耶ちゃんはゆっくり休んでて!耀司!あんたは手伝いなさい!」


「はいはい。」


相変わらず人使いが荒いなぁ…まぁ、もういい加減慣れたけど。とりあえずテーブルを吹き、お皿を出して料理を並べていく。ステーキにちらし寿司、から揚げにスペアリブまで…誰かの誕生日かよ…


「おぉー!なかなか美味そうだなぁ!」


目を輝かせて料理をガン見している摩耶はタイムセールをやっている時の伽耶さんにそっくりだ。可愛いなぁ。


「じゃあみんな席に着いて!さぁ頂きましょう!」


「「「いただきます!」」」


「「うんまぁぁい!」」


「それは良かったわ。」


こんなにうまい料理を食ったのは久しぶりだ!橋がどんどんと進む!ちらし寿司をよそって食べていると唐突に丹比母が話を始める。


「そういえばようちゃんは好きな人とかいるの?」


「んごふっ!!」


あまりにも急な質問に驚いてご飯をちょっと吹いてしまった…


「きたねぇな!なにやってんだよ!!」


「だって急にゴホッゴホッ!」


摩耶がついでくれたお茶を貰い飲んだ。ふぅ、と落ち着いた上で質問を返す。


「なんでまた急に?」


「だって摩耶ちゃんようちゃんのこと…」


「あぁぁぁぁぁぁっ!!」


「なんだよ急に!?」


丹比母が摩耶のことについて話そうとした瞬間摩耶の顔が真っ赤になった。あれ?料理にお酒入ってたの?


「お前、ど、どうなんだよ!好きなやついんのか?」


「んー別に好きな人はいないかな。」


まず異性を好きになったことがない…セラピョン以外。


「そうなんだぁ〜良かったね摩耶ちゃん」


「母さんちょっと黙ろうか?」


摩耶の目が笑ってない!それに母親も特に悪いことはしてないみたいな顔してるし…この親子怖ぇ…それにしても…


「摩耶、さっきから顔真っ赤だぞ?大丈夫か?」


「き、気にすんな!そうか…好きな人いないのか…よかった。」


「なんて?」


「気にすんなって言ったんだよ!!」


「お、おう。」


「でもいいわよねぇ、ようちゃんって…かっこいいし、優しいし、頼りになるし。」


「そ、そんなことないですよ…」


たぶん琉偉やほかの人格のみんなが俺を持ち上げすぎなんだろ。まぁ、褒められて悪い気はしないけど。


「そう?全部真逆だと思うけどねー?」


おい母親!なんてことを言いやがる!人がいい気分になってるのを台無しにしやがって!!


「でも、琉偉ちゃんは教科書を見せてもらって学園と街を案内してくれて楽しかったって言ってたし、摩耶ちゃんも男らしくて優しいって言ってたし…」


「そんなこと言ってねぇよ!!」


ガルルルルっっと怒って睨むが丹比母は無視して話を続ける。


「佐奈ちゃんや伽耶ちゃんにも優しくしてくれたって聞いてるし。ホント、感謝してるの!これからもこの子のこと、よろしくね」


「は、はい。」


「もういい!洗いもんしとく!」


「あぁ、私も手伝うわ。」


そう言って摩耶と母さんは台所へ向かった。そして部屋はおれと丹比さんのお母さんだけになっていた。


「やりすぎちゃったかしら?」


「まぁ…少しだけ?」


「ふふっ、でもあの子も本当にあなたに感謝してるの…照れてるだけ。」


「そうですか…少しでも喜んでるのならそれは良かったです。」


「あなた…本当のところどうなの?」


「何がですか?」


「あの子のこと…好き?」


「…え?」


ーー

心の中


『あれ…まだ交代じゃない…のに。』


『まさか…あそこまで熱くなるなんてね。あんたらしくないじゃない。』


『うるせぇ。』


世羅の言葉に摩耶は嫌そうに返事した。


『でも、それって世羅ちゃんとためだよね?世羅ちゃんが少しでも好きなことを学園でできるように。』


『えっ、そうなの!?やっさし〜んだ〜!』


佐奈さんの言葉に琉偉は似たァと笑いながら挑発する。


『うるせぇ!そんなんじゃねぇよ!』


『べっ、別に感謝しないから!頼んでないし!』


『いらねぇし!おめぇのためじゃねぇから!』


『ふふっ、お互いにツンデレさんなんだからァ。』


『『うるせぇ(さいわね!)』』


『ふふっ、声もピッタリだし…明日は私の番だし、じゃあ私は色々整えておこうかな。文化祭の日確認して計算してみたらちょうど世羅ちゃんの日だし、優勝は間違いなしね。』


佐奈の言葉に一瞬ポカンとした世羅だったがすぐに理解した!


『えっ私が!?無理無理無理!』


『ええっ!だってライブに比べたらマシでしょ〜?ね、セラピョン?』


『うるさい!あたし、身バレは嫌なの!バレたら学校でろくなことにならないし!』


『じゃあどうするのよ?』


『隠すしかないでしょ!まぁ、私、ライブの時はカツラ被ってるし、声も少しキー上げてるからバレないと思うけど。』


『それじゃあ勿体ないよー。』


佐奈は簡単に言うけどこっちもこっちの事情がある!学校がバレたらマスコミにも聞かれてほかの人格のみんなにも迷惑をかけてしまう…。


『なんでそうなんのよ!絶対やらないから!』


『耀司くんの頼みでも?』


『…ッツ!?ま、まぁ、耀司がどうしてもって言うなら?やってあげてもい…って騙されないわよ!?』


『ちえーっ。』


『あんたの事だから耀司くんにセラピョンで歌うようにって仕向ける気だったんでしょ!』


『そこまでバレてたか…』


ちっと可愛く舌打ちする佐奈にきーっと睨む世羅。


『あんたの考えてることなんてお見通しよ!あんたもあたしなんだから!』


『まっ、とにかく上手いことやるよ。じゃあね』


『いーい!?絶対耀司にあたしがセラピョンだなんて言わないでね!』


『はいはい。』


『ってまだ交代はしねぇよ!もうちょっとだけあいつと話してぇしな!』


そう言って再び真ん中へたった。


「大丈夫?ボーっとしてたけど?」


「あぁ!ちょっと考え事してただけだ!!」

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