第2話 初デート!?

まだ会って一日も経っていないものの、俺はよく彼女に話しかけられるようになった。丹比 琉偉、山城先生に負けず劣らずのスタイルをしていて、くりくりっとした青く輝く綺麗な目と少しゆるふわな長い髪が印象的だ。性格は真面目で運動はあまり好きではないらしい

なぜ俺にこんなに話しかけてくるのか…ぼっちな俺に同情してるのか、気を使っているのか…隣の席だからという理由なのか?よく分からないがまぁ、彼女は他の奴らとは違って向こうから話しかけてくれるから楽だ、だから素っ気ない態度ではあるが一応受け答えはすることにしている。


「今更なんだが…俺は周りから嫌われてるんだ。俺と居ない方がいいぞ?」


俺の事情を彼女は知らない…だからこうやって普通に話せているのだろう?そう思っていたが彼女は首を横に振った。


「過去のことは私も聞いた!先生からっ!でも、別に私は同情なんかしてないし、過去のこととかそんなのどうでもいいよ?」


「おまえ、変わったヤツだな?」


「多重人格の子が変わってないやつだと思う?」


「確かにな。」


と俺は久しぶりにわらった。いつぶりだろうな…人と一緒に笑ったのは。信じる気はサラサラないがな。


そして午前の授業も終わり、昼休みになったので俺があくびをして昼飯を出した。そしてパンをかじろうとした時急に話しかけられた。


「そういえばようちゃんって好きな人いるの?」


「ようちゃん?それって俺の事か?」


「そだよ?」


首を傾げて、そうですが何か?という顔でこちらを見てくる。この距離のつめかたはやはり普通の女子高生って感じがあるな。それにしても、あだ名で呼ばれたのは初めてだ。なのに妙にしっくりくるのは気のせいだろうか…うん、気のせいだろう。


「うーん、好きな人…ねぇ。幼稚園の時の担任の先生に…」


「それはみんな通る道でしょ?今は?」


人の初恋を登竜門みたいに言うな!まぁ、あながち間違ってはないだろうけど…

まぁ、小さい頃はいた。先生が結婚をしていることを知って、ショックを受けて忘れようとしてた頃、近所の実家に帰ってきたという金色の髪をした少女に出会って…


「その顔からするにいたんだねぇ〜」


「そうだな、お前みたいな金髪のかわいい女子だったよ。」


「ふ、ふーんそうなんだ。」


横髪を人差し指でクルクルしながらそう言う。なんだ?聞いておいて顔を真っ赤にするんじゃないよ。俺まで恥ずかしくなる。というかお前の事じゃねぇよ。たぶん。


「ねぇようちゃん、今日暇? 」


「今日か?まぁ、暇っちゃ暇だな。」


家帰ってもゲームするか今日出された課題するくらいだしな。


「じゃあこの街のこと紹介してくれる?さっきも言ったけど私ここに来たばっかりだから色々知っておきたいんだよね!」


「それもそうか。」


「というわけで案内してよ!!」


「ことわる。」


「なんでよ!友達でしょ!?」


俺は速攻で断った。しかし彼女は納得いかな買ったらしい俺に顔を近づけてむーっ!という顔をした…なんか可愛いな。


「と、友達…か。」


そんなこと言われたこと無かったなぁ…というかいつの間に俺とお前は友達になってたんだよ…


「友達だから出かけるのは当たり前!じゃあ放課後すぐ行こう!」


俺に拒否権ないの?


ーー


授業も終わり、部活に行く人、だべって時間を潰す人、いろいろいる学園ではあるが、俺は帰宅部で喋る奴もいないし帰る…てか俺自虐しすぎてね?泣きそう…


「行こっか!」


「!?」


急に丹比が席をバンっと叩き、目の前に現れたので驚いた。あぁ、そういえばこの街を紹介てほしいだのなんだのって言ってたなぁ…気がのらねぇけど、まだ顔を近づけられたらたまったもんじゃねぇから観念した。


「じゃあどこから行くか…。どこに行きたい?」


「うーん、とりあえずショッピングモールみたいな感じのところかな。シャーペンの芯とか消耗品とか結構少なくなってきてたし。買い物するところも覚えておきたいし!」


「じゃあ、あそこか。」


そして俺たちは教室を一緒に出た、俺はこの時周りから出る色んな視線に気づくことが出来なかったのだ。


この街の言わずと知れた大型ショッピングモール!その名もNEON!服屋、飯屋、ゲームセンター、カラオケ、ボウリング場、映画館など老若男女全ての層が楽しめる人気の場所だ。今日は平日なので割と少ないが休日はかなり多い。

まぁ、今の時間帯学生もいるのでまぁまぁ、多いのだが…


「うわぁ!広い!前の家はコンビニしか無かったし、車で片道1時間半くらいでやっとちょっと大きいスーパーがあるくらいだよ。」


「そうなのか」


「文具屋さんは…ここまっすぐだって!これ、案内ついてるから便利だよねー!」


まるで初めて海外に来た子供みたいなはしゃぎっぷりだな。悪いとは言わねーけど


「そうか?あんま使わねぇけど。」


「えー!だってすぐ行きたい場所がわかるんだよ!?」


「歩いてりゃ見つかんだろ。」


まぁ、俺も親に何度か連れられて覚えたって感じだし…しゃあねぇか。


「それだと時間かかっちゃうじゃん!」


まぁ、そうだけどな。とまぁ、そんなこんなで俺たちは文具屋さんに行き、ついでに本屋さんにも寄った。そして2階へあがってほかの店に行こうとすると丹比さんがたちどまった。


「あっ!ラッキードナルドまである!ここのラッキーナゲット食べて見たかったんだぁ!」


「お、おい!」


ラッキードナルドはファーストフード店でハンバーガーやアップルパイなど小腹を満たしたい人もよし満腹になりたい人もよしの学生に人気のお店だ。夕方からだったし、あんま時間ねぇんだから…まぁ、いっか。俺も小腹空いてきたしな。


「そういえば丹比さん、ちゃんと注文とか出来んのか?」


「私を誰だと思ってるのさ!まぁ見ときなさい!」


さすがに失礼だったか…丹比さんの後ろに俺が並んでいて、ついに丹比さんの番がまわってきた。


「いらっしゃいませ、こちらでお召し上がりですか?お持ち帰りですか?」


「お召し上がりです!」


俺のいる方へふりかえってふふん!という顔をする…なんでそこでドヤ顔なんだよ。お召し上がりですて…店員さんもちょっと笑ってるし…まぁ、いいけど。


「では、ご注文をどうぞ。」


「へっ!?えっと…ラッキーナゲット1つ!」


「ラッキーナゲットのセットですか?単品ですか?」


「えっ?えっ!?どゆこと!?」


「ラッキーナゲットはセットもございまして、サイドメニューはこちらでドリンクも選べてソースもこの中から選べます…」


「????」


店員さんのスラスラと早口で話す言葉に、目をくるくるさせながら頭にクエッションマークが出てるのが後ろからでもわかる。はぁ…さてはこいつ慣れてねぇな?



「すんません、ラッキーナゲットのセット1つ…ソースはバーベキューでサイドはポテトで。ドリンクはオレンジでいいか?」


「う、うん…。」


あまりにも見てられなくて俺は後ろからフォローに入った。よかった…先にやってなくて…いや、先にやった方が見本になったのか?難しいところだ。


「あと、ライスバーガーの焼肉単品1つ、それとホットコーヒー。」


「でしたらセットメ…」


「あっ、大丈夫です、ポテトはシェアして食うんで。」


毎回セットメニューにするとポテトがつきますがとか言われるのめんどいんだよなぁ…まぁ、そっちの方がお得ですよーって言いたいんだろうけど…


「かしこまりました」


「…他、なんかいる?」


「う、ううん。大丈夫です…」


なんで急に敬語?まぁ、どうでもいいが。


「以上で。」


「ではご注文を確認させてもらいます。ラッキーナゲットのセット、サイドメニューポテトでドリンクオレンジが1つ、ライスバーガーの焼肉が1つとホットコーヒーがお1つ…以上でよろしかったでしょうか?」


「はい。」


「では横にずれてお待ちください。」


店員さんは優しい顔で対応してくれた。その後に俺にだけ聞こえるようにこっそりと「可愛い彼女さんだね」といわれて思わず顔が真っ赤になってしまった。誰が彼女だ!


ーー

席は割とすいていたので端の席に座った。あまり人に見られるのが好きじゃないんでね。


「…慣れてるんだね。」


「そりゃ、常連だからな。」


ナゲットをぱくつきながら琉偉はそう言った。まぁ、ここには週3くらいでくる。高校一年の時まであんまり親が帰ってこないかったからな。最近は帰ってくることが多くなってきたからあんま来なくなったけど…ここで済ませた方が楽なんだよなー。ライスバーガーだとご飯、肉、野菜一気に取れるし。


「逆にお前は初めてだろ?」


「そりゃそうだよ。ファミレスの時もお母さんに頼んでもらってるし。」


「どこのお嬢様だよ。」


「そういうようちゃんはどうなのさ?」


「おれは逆にファミレスなんて行ったことねぇよ。」


親が忙しいからな…1人でファミレス行くのってなんか嫌じゃない?俺だけかなそう思うの。


「ふーん?子供だねぇ?」


「注文できないやつに言われたくはないな」


「ひどっ!!」


まぁ、家族で集まることなんか滅多にないからという理由もあるがくどくど聞かれると面倒なのでやめておこう。


「ポテト貰えるか?」


「んっ。…あっ!お金!」


何かを思い出したように財布を取り出す動作をしたので俺は手を横に振る。


「いいよ別に」


「そういう訳にはいかないよ。」


「ここは俺にかっこつけさせてくれ。」


女子に金を払わせるなんてかっこ悪いことできるか。転校初日のりきった記念にでもしとけ。


「わかった、じゃあゴチになります〜!」


「そらどうも。」


「…これからどうしよっか?」


さて、買うものもかったし…まだ時間あるからなぁ。おっ?と視線の先にゲームセンターが見えた。


「ゲーセンに行くか?」


「いくいく!!」


ーー

ここのゲームセンターはショッピングモールの中とは思わないほど大きい。クレーンゲームや小さい子が遊ぶところ、ちょっとしたミニゲームやプリクラやメダルゲームもある。少しぶらぶらしてると琉偉は立ち止まってひとつのクレーンゲームに釘付けになっていた。


「あっ!これ私の好きなやつ!」


よく見ると三本爪のクレーンゲームがあってそこには血だらけのうさぎのぬいぐるみが倒れていた。


「なにあれ…」


「ジサツウサギだよ?知らない?」


なにそれ初めて聞いたんだけどてか怖すぎね!?こんなの好きなの!?女子ってほんとわからん!


「よし!これ絶対とる!」


「丹比さ…」


「ようちゃんは手を出さないで!これは…私とこのクレーンゲームのたたかいだから!」


財布を取りだしそのクレーンゲームの彼女の周りが炎でもえてるような感じになっていた。

なんだその昔の親友が敵に回って先を急いでる時に準キャラが言いそうなセリフは!…まぁいっか。


「俺はその辺ぶらぶらしてっから、あんま無理すんなよー。」


「うん!!」


そして俺は音ゲーが好きなのでそこで数十分遊んで合流しようと丹比さんの元へ向かう。久しぶりに音ゲーやるのは楽しかった…しばらくゲームセンターに行ってなかったのもあって体がなまっていたが…次はエクストラに挑めるようにしておこう。


「あぁぁあ!取れない!こんなの取れるわけないじゃん!!インチキだよっ!!」


ん?あいつの声がする。いた…まぁだやってんのかあいつ。


「インチキじゃねぇよ。」


俺が後ろから話しかけると、うぅぅっとしゃがんで唸っていた。


「だって!こんなにアーム弱かったら取れるものも取れないよ!」


「これは確率機だから何回かやったらアームが強くなることがあるっていうパターンだからあんまりおすすめはしないな。」


「…それ先に言ってよ!!」


「お前が真っ先にやり始めたんだろが!」


すぐ辞めるだろうと思ったら意外とやってたから暇だったし音ゲーやってたけどまだ取れて無かったのかよ…


「ぷふっ…」


「何がおかしいんだ?」


俺が笑うところなんだけど何故か先に琉偉の方が笑っていた。


「いや、なんか最初は距離感じてたけどいまはそうでもないなって。ようちゃんってこんな感じの人だったんだね。」


「俺の第一印象どんなだったんだよ。」


「なんかなぁんにも興味無さそうな人?っていうか、人生捨てた人?みたいな顔してた。」


「そんなに酷かったのかよ。まぁ、あながち間違っちゃいないが。」


俺にも色々あるんだよ。てか顔に出してなかったのによく気づいたな。…顔に出てるのかな意外と。


「まぁ、あたしの目はごまかせないってね!」


「調子の良い奴だな。」


「あっ!これならとれる!?」


「そうだなぁ、やってみたら?」


やっと諦めが付いたか。このクレーンゲームか…この位置なら確率機でも簡単にとれそうだ。


「いい!やって!」


「まぁ、いいが。」


そういえばクレーンゲームなんていつぶりだろうな。子供の頃はよく友達と遊んでたけど…嫌な思い出まで思い出しそうだ。右にアームを少し移動させて…奥はあまり行きすぎないようにギリギリを攻める。そしてアームが開き、そのアームはぬいぐるみを掴み持ち上げるが寸前で離れそうになる!


「あっ!落ちちゃう!」


「大丈夫!」


このアームは結構揺れる仕様なんだけどその揺れを逆に利用してブランコのようにぬいぐるみが飛んでそのまま穴に落ちた


「ほらよ。」


「凄い!ありがとー!大事にするね!」


可愛い猫のぬいぐるみだったからこれなら女子が持っててもおかしくないだろ。それから特に用もなかったので、俺たちは色んなところをまわった。服屋さんや、電化製品が売ってるところ。驚いたことはこいつがブラックカードを持っていたことだ。ホントにどこのお嬢様だよ…。いつの間にか手を掴まれてるし。この子ドキドキとかしないの?俺マジで緊張してんだけど?下着売り場に行こうとしたから俺はさすがに外で待っとくといい、少しの間待った。


「いやー、いっぱい買えてよかったァ!」


両手に袋を持ち満足げにしていた。喜んでもらえてよかった。


「そうかよ…もう遅くなるしここできりあげるか。」


「えっ!?もうそんな時間!?」


まだ遊び足りないという顔だったがこれは仕方ない。


「また付き合ってやるよ。」


あれ?なんで俺こんなことを言ったんだ?まぁ、いっか…たまには人と遊ぶのも悪くないって思えたし。


「ん、わかった、じゃあ!HINEやってる!?」


「やってるが?」


「じゃあ交換しよ!」


「あ、あぁ。」


スマホを取り出して彼女のQRコードを読み込んだ。女子…っていうかクラスメイトの連絡先貰ったのこれが初めてだなぁ。


「今日はありがと。」


「あぁ、俺も久しぶりに楽しかったよ。」


「はいこれ!」


そう言って紙袋を俺に渡してきた。なんだ?


「なに?」


「プレゼント!今日付き合ってくれたお礼!」


「お、おぉ。」


女の子の初プレゼントが丹比さんからだとは…なんか照れるな…親以外からプレゼントをもらえるなんてな。


「先に渡されちまったか…ほらよ。」


「なになに?あっ!これ…」


「さっき取れてなかったやつ。」


下着売り場に行ってるあいつがあまりにも遅かったからその間にとってきたんだ。2、3回くらいやったら確率がきて落ちたから…あともう少しだったんだろうな。


「わぁ!!ありがとー!これめちゃくちゃほしかったんだぁ!!」


おわっ!急に抱きつくな!胸を押し付けるな!


「今日は色々ありがとう!じゃね!」


パッとすぐに離れてそのまま駆け足で帰っていった、すぐ離れられたので少し名残惜しいと思ったが…まるで嵐のような女だな…嫌いじゃないが。


「まぁ、たまにはこういうのもありだな。プレゼントって…!!?」


なんとびっくり!なんか可愛い袋だなって思ったら!女子物のパンツ!?そんなアニメみたいな展開あるかね!?はぁ…いや、逆にこれを使えってことか…?…深くは考えないでおこう。


「あれ!?あげたはずのプレゼントがここにある!」


俺は急いで丹比さんに追いつき渡した…


「み、見た?」


と聞かれてさすがに見てないって言ったらここにいねぇだろって感じな状況だったので正直に話し、エッチ!と言われてちょっと優しめのビンタをくらった。

ーー


丹比の心の中


『おう、今日はお疲れ様。』


そういったのは少し態度が悪そうな人格の女の子。ふぅ、と一息付きながら話してきた彼女に琉偉は返事をする。


『明日は摩耶ちゃんだよ?よろしくね。あと、ようちゃんには変な態度とっちゃダメだよ?』


『へいへい…まっ、あいつ次第だろうけどな?』


摩耶と呼ばれた少女は頭を掻きながら面倒くさそうに真ん中にたった。その光の周りに数人の人格があってその真ん中に立つことでその人がメインになる。


『もう!摩耶ちゃん!』


手をぶんぶん振りながらぷりぷり怒る琉偉。


『冗談だよ。』


『あっ、それと…』


『あん?』


『ようちゃんは…』


そこから先はモジモジとして話せずにいた。摩耶は察したようにため息をつく


『わーってるよ、大丈夫だ。』


『ならいいけど。』


『まぁ、ゆっくり休んどけや』


『うん、ふぁあぁぁ…おやすみぃ。』


そういって琉偉は一眠りついた。初日からかなり飛ばしてたから相当疲れていたのだろう。


『よし!待ってろよーようちゃん!!』


拳をぎゅっと握り締めニヤッと笑った。

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