第4章...帰還作戦
康介「今そっちはどこの辺にいるんだ?」
真帆「正直分かりません、でも、現在三重県辺りに居そうなので今日の夕方出発でも全然問題は無いでしょう」
康介「なるほどな、高速道路だとバレにくいんかな?」
真帆「移動速度も早いですしバレにくいと思います、しかも上空監視は無さそうです」
康介「ほぅ、とりあえずは安心は出来たけど、なぜ今更言うのか?」
真帆「普段だったらもう捕まってもおかしくないような時期なので、そろそろ伝えておこうと思いまして」
康介「そんな厳しいのか、まぁ言われたからには全力で逃げるか」
真帆「はいっ!」
康介母「さーてもうこんな時間だし布団を片付けておきなさい」
康介「はいはい、分かってますよ」
そして布団を片付けて外へ出た。
外は相変わらず涼しい...いやちょっと寒ぃな
緊迫したような空気が続いていたから、外へ出ることによってリラックスされる。今日の夕方くらいから帰るので、地元に別れを告げる。
康介「ここもいい所だったな」
真帆「自然も多いですし、結構いい所でした」
康介「都会の風景も良いけどさ、田舎の風景もまた違った良さがある」
真帆「康介さんは土地に慣れるのがはやそうなので、その分得しそうですね」
康介「俺は確かに土地に慣れるのがはやいとかよく言われるけど、これは俺の短所だと思っているんだ」
真帆「それは何故ですか?」
康介「土地に慣れるのがはやい=元いた土地に飽きた、って事だと思っているからな...」
真帆「確かにそういう見方をすることも出来ますね...でも得はあると思います」
康介「まぁな、都会に慣れるのが早かったのは現にその力のおかげだし」
真帆「まぁ短所にも長所にも置けるって感じですかね?」
康介「せやな..真帆はそういうのはあるのか?」
真帆「私も康介さんと同じような、土地に慣れるのがはやいってことですね」
康介「そうか、なるほどな」
真帆「まぁ逃げ回っていたらこの能力は勝手に付いてきますよ」
康介「まぁ確かに俺ん家来た初日から、かなり慣れていたしな」
真帆「その能力ですね」
康介「それにしても空気が綺麗過ぎるな、東京とは全然違うな」
真帆「今更ですか?」
康介「そうだな、この心地よい朝を感じたのは今が久しぶりだ」
真帆「微妙に言ってることがわからないです」
康介「まぁ言葉って難しいしな」
真帆「そうですね」
康介父「多分今からじゃないと、今日中に帰れなくなるから2人とも乗ってくれ、荷物はまとめてあったから積んでおいた」
康介・真帆「はーい」
こうして実家と別れを告げた、車で行くとかなり時間がかかるらしい。
車は走り出した。
実家周辺は山が多いので、身体が横や縦に大きく揺れるくらいのデッコボッコした道をひたすら向かっていく。
30分くらい経ってようやく国道沿いに出ることが出来た、とりあえず高速道路まで向かっていく。ここまで出るのには歩くのと車で行くのはそんなに大差が無い、転びやすいが歩いた方が早いような道だ。
国道沿いと言っても周りにある店なんてほとんどない、スーパーやコンビニが500mくらいの間隔であるだけ。
やがて国道を抜けて高速道路に入ることが出来た。今回のルートは神戸淡路鳴門自動車道と阪神高速道路と名神高速道路と新東名高速道路と首都高速道路を通るようなルートだ。
名称の多さからわかる通りとても長い道のりだ、その間に真帆が狙われなければいいが...
一方で真帆は電波を受信しようとしている、受け取れる情報の量は数少ないと思うが、とても有力な情報を受け取れる感じだ。
真帆「現在は名古屋辺りで捜索中です、空中探査機を飛ばしてる可能性があるので、少し身を伏せる準備をしておきましょう」
康介「そんなにムキになって捕まえる必要があるのか?味川家って不思議やな...」
真帆「1人でも居なくなるとすぐに捕まえるので...父親が監禁とか好きなんですよね...」
康介「やべえ奴じゃねえか」
真帆「今までの動きを見ると、次は北陸方面に向かうと思われるので大丈夫でしょう」
康介「てか真帆って、他の機械とかは全然ダメなのになんで完璧に電波受信機は使えこなせるんか?」
真帆「全部独学です。時間があれば使い方を学んでいました、今回は電波受信機を使った初めての脱走です」
康介「すげえな、そんな壮大なのか」
真帆「まぁこんなでもしないとすぐに追いつかれてしまうですよね...やっぱり早い状況だと受信はしづらいですよ」
康介「ほーなるほどな」
真帆「はい」
康介「改めて聞くけど、真帆ってなんで家族から逃げたんだ?」
真帆「何度も言ってますけど、本当にあの環境が大っ嫌いなんです。それで逃げてきました」
康介「それもそうだけど俺が感じるには、また別の理由がありそうな気がする」
真帆「まぁ強いて言うなら本当の幸せを見つけるために家出したって言ってもいいですね」
康介「真帆はさ、俺といて幸せか?」
真帆「え?あ、はい。康介さんはここでの幸せを教えてくれました」
康介「俺が聞いているのはそういう事じゃなくて、今俺といる環境は幸せなのか?」
真帆は少しの間黙ってしまった、少し質問内容が重かったようだ。
でもしばらくして真帆が小さく縦に首を振った、なぜか俺はその時嬉しかった。
真帆「こ、この時期は寒いので...を繋いでもいいですか?」
康介「ん?なんて言った?」
真帆「だ!か!ら!そ、そのー、て、手を繋いでもいいですか?」
康介「あぁそう言ってたのか、いいよ」
真帆が珍しくそういうもんだから俺は勢いで手を繋いだ、女子の手を握ったのはかなり久しぶりの出来事のような気がする。
それにしても手が冷たすぎる。
人って緊張すると手足が冷たくなるって聞くけど、今真帆は緊張しているのかな?
まぁこんな捕まるか捕まらないかの状況なのに、緊張してない人も滅多に居ないか。
真帆「(やばい!本当に康介さんの手をにぎってる!これはドキドキしちゃう!)」
康介「ん?なんか言ったか?」
真帆「あ!いやっ!なんでもないですよ!」
康介「それにしても車のスピードがめっちゃ速い気がするけど、今どんくらいなん?」
康介父「今は130km/hくらいや」
いやめちゃくちゃ速くね?!
でもこんくらいのスピードで走ったとしても、家に着くのは真夜中になるんだよな...
それにしても何この状況。
俺と真帆は何故か手を繋いでるし、車は加速する一方だし、色々とやべえ
康介「唐突だけどさ、真帆は今やりたいこととかあるのか?」
真帆「そうですね...強いていえば夏祭りに行ってみたいですね、1回も行ったことが無いので...」
康介「まぁ今春だしな...夏の時期になるまで待つしかねぇか」
真帆「夏になる前に捕まってしまう可能性は大きいですけどね...」
康介「俺ん家の前に警察置いとけばなんとかなるだろ、そんなにやばいんだったらよ」
真帆「警察はずっと待機してくれる訳ではありません、あと一応家族なので色々厳しいところはあります、家出した身でもありますし...」
康介「なるほどな...家出したってことがバレてもいけないんだな...」
真帆「今はなんとか逃げるのみです...弟とか兄とか姉とか妹とか居ますし」
康介「そんなに居るんだ...」
真帆「えぇ、味川家は子供が14人います、私は5番目です」
康介「マジかよ、俺なんて一人っ子だぜ?ずっと寂しいだけだぜ?」
真帆「私の所は多ければ多い程、不利になります。1人逃げたら連帯責任を負いますし...」
康介「てか今逃げているのは真帆だけなんか?他にも逃げてるやつはいるのか?」
真帆「いいえ、情報によると私しか逃げていません」
康介「電波受信が凄いうめえな」
真帆「これ発信も出来ますからね、親軍団の秘密の周波数帯や兄弟の周波数帯も認知しています、なので兄弟とは連絡が出来るんですよ」
康介「てか電気ってどこから供給してんだ?これは?」
真帆「基本的に太陽光で発電しています、緊急時用にケーブルでも手回しでも行けるようになってます」
康介「なるほどな、いつ買ったんだ?」
真帆「3回目の逃走のときです。その時は兄弟達を代表して、全員分の受発信機を買ってきました、そしてそこから歴史がガラッと変わりました」
康介「ちょっと今兄弟と交信できるか?」
真帆「とりあえず、やってみます」
得意気に真帆が言うと、カバンから何やら発信機らしき物を取り出した。
すぐに繋げて兄弟に向けてモールス信号を打ち始めた、すると直ぐに返事が返ってきた。
真帆「弟が打った内容を直訳すると、「大変な事が起きた、真帆の捜索で親軍団が誰一人として家に居なくなった、その間に兄弟全員で逃げ出そうと思うんだけど、俺はとりあえず真帆の所に逃げたいから居場所を教えて欲しい」だって」
康介「なんか怪しい文章だな...本当にそれは兄弟なのか?」
真帆「はい、打ち方の癖や音色、周波数帯から確実に弟です」
康介「弟か。ならいいや、家の場所を教えるから真帆は打ち込んで」
真帆「了解しました」
俺が真帆に教えて、真帆は弟に向けて信号を打っている。
そして打ち終わり、真帆の弟から返事が返ってきた。
真帆「直訳すると「理解した、3時から全員で逃げ始めるから今日の夜には着く、頑張って向かうよ」と言ってる」
康介「そんな命懸けなんや...弟って何歳や?」
真帆「14歳です、中学2年生なのに全然まだまだ、生意気ですよ」
康介「俺にはしっかりそうに見えるんだが?違うのか?」
真帆「アイツにはしっかり物という言葉が一番似合わない人間です」
康介「弟に対して容赦ねえな...」
真帆「まぁ今日には来そうですね」
康介「3時から脱走開始って言ってたから、えーと今何時や?...今は2時55分。もうあと5分で開始するのか」
真帆「私たちにとっては、この全員脱走の出来事は大ラッキーですけどね」
康介「へー、それはなんでだ?」
真帆「捜索が分散するので全然捕まらなくなります、14人も居るので...」
康介「それは良かった、他の兄妹はどうするんのか?」
真帆「私より上や同じくらいの歳の人はバイトをして暮らして、私より下くらいの人は上の兄弟について行ったり、色々まわって過ごすらしいです」
康介「下の子が大変そうだな...」
真帆「まぁということで私たちが住んでいる所に弟が来ます」
康介「急だな、まぁ用意はできるんだけどさ」
そして3時になった。
全員が脱走し始めたみたいだ、しかし俺たちは父親の車でゆったりと家に帰っている。とりあえず弟が無事に来れることを祈る。
辺りはもう既に暗くなっていた。
時計を見ると午後の5時を回っている、この時間帯になると眠さと疲れが一気に出てくる。
外を見るともう少しで東京に入るような感じだ、着くのは夜中予定だったがめちゃくちゃ空いていたため、意外と早く着きそうだ。
康介「とりあえずこれはもう安心していいのか?」
真帆「いえ、まだ安心は出来ません。兄弟達が全員脱走を始めたことがバレましたので、今現在捜索が強化されています」
康介「それやべえじゃん?!なんで今頃になって強化されてんだよ!」
真帆「でもこれで、何処が私の家だったのかが分かりました」
康介「ほぅ、どこなんだ?」
真帆「兄弟達の位置関係から推測しますと、多分福島県です」
康介「福島県か...東京からは、近いっていえば近いんだけどな」
真帆「そこから弟は今東京に向かってきています。多分今は、もう半分位まで来てます」
康介「捕まらないで来れるかな?」
真帆「まぁサッカー部ですし運動能力は、味川家の中でピカイチです」
康介「運動能力で乗り切るんか...」
真帆「まぁ流石に運動能力だけじゃ無理でしょうけどね」
康介「当たり前だよ!」
もう既に暗くなっていた外は、空一面に星世界が見えていた。自分は星座とかに対する知識が全くもってない。そもそも俺の周りの人間に星に興味のある人なんていなかったし。でも、俺は少なくとも宇宙には興味がある。
車の中から星を見ていたその瞬間、何かが自分に向かって倒れてきた、重さからしてスーツケースだと思って直そうと思ったが、星に夢中なっていた俺は倒れている物を見向きもせずに星を眺めていた。しかも車内が暗いから全然見えないし
やがて、トンネルに入って星が見えなくなったので、その荷物を戻そうとした時に、なにかの異変に気がついた。
これ真帆じゃね?
そこには、俺の肩に真帆が寄りかかって寝ていた。
かなりスヤスヤと寝ている様子だ。
これを見た瞬間、俺は顔が一瞬で真っ赤になった。しかし脳の中はどういう状況なのかが分からずに真っ白になってしまった。
とりあえず何がともあれ、一旦真帆を元に戻す事にした。
でも女の子に触ることには未だに少し抵抗がある、これが彼女歴ゼロの弊害だ。
しかもこの状況でヤバいのは、辺りが真っ暗なことだ、ミスったらヤバい事になる。
ライトを付ければええやん、って思う人も多いと思うが、ライトも何処にあるのか分からないような状況だ。
とりあえず手探りで肩を探す。
探している時の仕草が最早変態みたいであるが、俺は直しているだけだ。
肩が見つかったので、ゆっっっくりと座席の方に戻していく。
戻し終わったが、何故か見えていないのに肩の下の方の身体の真ん中に目が行ってしまう、なんでだろうか?
身体がうっすらと見えた時、真帆の胸を凝視してしまった。
これにて本物の変態となってしまった。
いやダメだダメだ、女子高生に手を出すのは普通に犯罪だ。
でも手が伸びてしまいそうだ。
そうやって真帆の胸を凝視しながら考えていると...
真帆「...何やっているの?」
康介「え?!あ!真帆は起きていたの?」
真帆「...今起きたけど」
康介「俺はなんもしてないよ?!うん!」
真帆「...わ、私の胸を触ろうとしてた?」
康介「え?!いや、ちゃうて?」
真帆「仕方ないですよ、康介さんは男の子なんですからね」
康介「え?!べ、別に俺はそんなつもりは、な、な、な、な、ないけど?!」
真帆「...康介さんはえっちな人ですね」
康介「ちゃうてええええええ!!!」
バレてしまいました、完全にアウトでした。
どこに勝算があったのだろうか...いや無い。
真帆「男の人って、なんですぐに胸を触りたがるんですかね?」
康介「男性全員がそうって訳でもないぞ。胸を触らない人で言うと、胸自体にあんまり興味ない人や、同性愛者は大体胸に興味無いな」
真帆「そうなんですね、でもなんで触ろうとする人は少なからずいるんですか?」
康介「そりゃ視覚情報に1番に入ってくるとこだからだよ」
真帆「ちょっと分かりずらいです...」
康介「まぁ例えると、富士山と公園の砂場で作った山があったとしたらどっちが先に目に入ってくるか?」
真帆「圧倒的に富士山ですね」
康介「つまり胸は富士山のように、1番最初に入ってくる所なんだよ」
真帆「そうなんですね、つまり言うと康介さんは変態ということなんですね」
康介「なんでその答えにたどり着いたんだよ」
なんて話していたらもう家の近くであった。時計はもう6時半を回っていた。
そして家に着いた。
数日ぶりの自分の家だ、父さんにも荷物運びを少し手伝ってもらった。
康介父「じゃ、父さんはこれから帰るから、元気でいるんだぞ」
康介「分かっているよ、父さん」
康介父「じゃあ、また」
父さんの車はどんどん走っていって、やがて見えなくなってしまった。
鍵で自分の部屋を開けると、まず最初に部屋の電源をつけた。
康介「やっと戻ってきたよ、真帆は大変だったろ?」
真帆「はい、他の人の家に上がるのはやはり緊張をするものです」
康介「そうだな、俺も少し遠い親戚の家に行った時は、独特な緊張感があるよ」
真帆「緊張ってありすぎても無くてもダメなので、大変ですね...」
康介「本当だよな...」
ピンポーン
康介「お、宅配便か?」
ガチャッ
???「こんにちはー、真帆は居ますかー?」
康介「真帆なら今ここにいるけど...名前聞いてもいいかな?」
才斗「味川才斗って言います」
康介「あぁ、君が噂に聞いてた弟君だね、どうぞ中に入って」
真帆「あ、才斗じゃん」
才斗「姉ちゃんはよくこんな都会なところに逃げてこれたね、兄ちゃんや姉ちゃんは大体田舎の方に逃げていったよ?」
真帆「じゃあ、なんで才斗はここに逃げてきたの?」
才斗「とりあえず安定しているみたいだし、ここでいいかなって」
康介「俺ん家って安定してんのか?」
真帆「まぁ、安定してるしてないなんて、誰にも分かりませんし」
才斗「お兄さんのお名前はなんて言うんですか?」
康介「俺か?俺は光野康介だ、意外と普通の名前なんだよな」
才斗「光野ってかっこいいですね」
康介「確かにあんまり俺の家族以外の光野さんには会ったことが無いかもな」
才斗「味川って珍しいんですかね?」
康介「1回も聞いたことないし、珍しい方なんじゃない?」
才斗「そうなんだ、確かに家族以外で1回も聞いたことがないかも」
なんて、苗字に関する話を交わしていた。逃げてきたばかりとは思えないくらい元気である、もしかしたら俺が歳をとったのかもしれないな。
真帆「ないね」
なんで心の声がわかるんだよ、真帆ってエスパーなのかよ...
康介「とりあえず3人分のご飯買ってきているから、みんなで食べよ」
才斗・真帆「はーい!」
そうすると一斉に食べ始めた、特に才斗君は食欲が凄い。俺も中二の時はこんくらいの食欲だったなと思い出した。
何故か才斗君が中学生時代の俺に見えて仕方ない、俺との共通点も数多く存在する。
そんな人間とも今日から生活をしていく。
始めの1人暮しが、2人暮しどころか3人暮らしになってしまった。
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