第3章...高校の卒業式

東京駅で駅弁を買い、予約した新幹線の指定席に座った、しばらくして新幹線は動き出した。


康介「俺にとってはたった数日ぶりの新幹線なんだけどな」


真帆「私も数日ぶりです、家から逃げ出す時に新幹線を使ったので...」


実に贅沢な逃げ方である。

なぜ新幹線を使ったのか、別に新幹線を使う必要は無いと思うが...


外には景色が流れていく。

ビルは徐々に減っていき、トンネルがだんだんと増えてくる。

それにしても最近の新幹線は静かだ。俺が初めて乗った新幹線はもっとうるさかった記憶がある。


康介「じゃあそろそろ駅弁を食べるか、駅弁はハズレが全然ないから俺が新幹線に乗った時は毎回買ってるな」


真帆「そうなのですか?私は駅弁を買ったのが初めてなんですが、おいしいんですか?」


康介「あぁ美味しのがほとんどだな、とりあえず真帆が買ったやつはちょっと面白いぞ」


真帆「面白い?...ってどういうことですか?」


康介「まぁとりあえずそこに出ている紐を勢いよく引っ張ってみ?」


真帆「これですか?よいしょっ、わっ!急に熱くなりました!」


康介「そうそう、それは紐を引っ張って熱くすることで、熱々で食べられるというやつだ、味も勿論絶品だ」


そして俺はマグロとサーモンといくらが入った弁当を買った、これは本当に美味しい。

迷ったらこれ!ってやつだ。


そんな感じのやり取りをしている間に、新幹線は静岡県の辺りまでやってきた。前に家族で静岡に行った時にここら辺で「うなぎパイ」を買ったけどまた食べてみたいなと思う。いつか真帆と一緒に富士山にも登ってみたいな。


康介「あ!ここはよくカレンダーとかで見る、桜と富士山と新幹線の撮影スポット辺りだ!」


真帆「有名な所なんですか?」


康介「割と見た事がある人は多いんじゃないかな?」


真帆「今度その景色が載ったカレンダーを買ってみませんか?」


康介「だな」


なんて話していたら、あっという間に静岡県内最西駅の浜松駅に停車した。


康介「俺ちょっと水買ってくるけど、真帆はなんか飲みたいのはある?」


真帆「え?あ、じゃあ水をください」


そう言うと俺は一旦車両を降りて、水を2つ買い、また車両に戻った。


康介「おーけー、水だ」


真帆「ありがとうございます」


東京駅で水分を買えなかったので、仕方なく車両を一旦降りて自販機で買った。

「車内販売でいいじゃん」って思う人もいるだろうけど、俺は新幹線のほとんどの時間寝ているから、知らぬ間に通り過ぎている事が多い。だから毎回車両を一旦降りて自販機で買っているのだ、新幹線の停車時間は普通の電車の比べると大分長いからな。


ピロロロロロロロ


康介「あ、電話がかかってきたから、真帆はここで待っていてくれ」


真帆「分かりました」


俺はとりあえず車両の端っこにある、デッキで電話を受けた。


康介母「康介は今どの辺なのかい?」


康介「いまは浜松の辺りだ、新幹線はもうすぐで出発する」


康介母「さっき夫が、俺が新大阪駅まで迎えに行く、って2時間くらい前に言ってて、もう後1時間位で着きそうなんだけど、浜松の辺りならちょうど良さそうね」


康介「そうだね、俺たちは元々新幹線は新大阪までの乗車券を買ってたから」


康介母「じゃあそれでいいわね?夫が新大阪駅に着いたら康介に連絡を入れるわ」


康介「ありがとう。あ、そういえば俺明日卒業式だけど、間に合いそう?」


康介母「帰ったらすぐに寝れるように布団は敷いておくわ、女の子も来るんだよね?」


康介「そうそう」


康介母「じゃあ2人分敷いておいてあげるからね、ゆっくり休んで明日に備えなさい」


康介「ありがとうな、母さん」


康介母「気を付けてくるんだよ」


康介「はーい」


プーープーープーー


電話はここで切れた、というか俺から切った。母さんは話にスピードが付くと永遠に話が続くからな...


康介「さて、俺たちは新大阪駅で降りることになったからもう少しだ」


真帆「分かりました」


そう言うと俺はアイマスクを付けて寝始めた。その後は真帆に起こされて新大阪駅にやっと着いた。


康介「新大阪駅だー!結構使ってたなー」


真帆「そうなんですね私は初めて来ました、それにしてもとても広いですね」


康介「だな、たしか父さんが車で迎えに来てくれるらしいがどこからかな?」


プルルルルルルル


康介母「今、夫が着いたって連絡が来たから、いつものところに向かって」


康介「了解」


康介「真帆、じゃ行くぞ、置いてかれないようにな」


かなり新大阪駅を使うのでいつの間にか、いつものところで通じるようになっていた。

実は小さい頃に1回だけ置いてかれたことがあったんだよな...


康介「あ!あれだ!あの車だ!」


真帆「あれがそうですか?」


ガチャッ


康介父「康介となんていう子かね?」


真帆「私は真帆です」


康介父「おぉ!遂に康介にも彼女が!変わってるやつだが、仲良くしてやってくれ」


真帆「いえっ、私と康介さんはそんなk...」


康介「ちょい父さんが喜んでるんだから、今だけそのフリをしてやってくれ...(小声)」


真帆「え、まぁ私と康介さんは契約上の交際関係ですし嘘にはなりません、協力したくはありませんが仕方ないですね...(小声)」


康介「え、ああ!そうなんだよー!俺にもやっと彼女が出来てね!」


真帆「ワタシハコウスケサンアイシテルコウスケサンバンザーイバンザーイ」


康介「不自然すぎない?!(小声)」


真帆「だって、康介さんの事を好きとか愛してるなんて絶対に言いたくないですもの!(今までにないような大声)」


康介「真帆おおおおおおおお!!」


康介父「やっぱりそう思ったよ。俺の息子はいつも女子に向かって喋れず、話したと思ったら恥ずかしくてすぐにどっか行っちゃうしな、でもとても優しい人間だ、困っているような人間がいたらすぐに救いの手を伸ばすような、そんな子だ。でも、康介は今まで誰1人として彼女が出来なかった、そんな康介が急に彼女なんて出来るはずがないと思ったんだよ」


康介「う、うるせえー、ほっとけ...!」


真帆「...今日康介さんの事、少しは分かった気がします。私は康介さんの事を本っっっっっっ当に少しだけ、好きになりました」


康介「俺の事を真帆が少しでも好きになってくれたんだったら、俺は嬉しいよ」


真帆「べ...別にそういう訳ではないしっ!」


康介「真帆ってツンデレ属性だったんか、今までとは全然違うな」


真帆「こっ、これが私の本当の感情よ!」


康介「俺は好きだけどな、ツンデレ属性((ボソッ」


真帆「?!」


頃は3月の下旬、桜の満開が本格的に始まってくる頃だ。その綺麗な桜は車窓からでも見える、綺麗な桜を見ると花見をしたくなるが、


今年は明日あたりにできるかな?


と、思い、車で揺られながら眠りについた。

起きた頃にはもう既に実家周辺だった、懐かしい...と言えるほど久しぶりでは無いが、懐しさは少なからず感じる。10数年過ごしていた「家」が「実家」になったし。


ガラガラガラガラガラガラガラ


康介「ただいまー」


康介母「康介おかえりー、布団敷いてるからとりあえず寝ちゃいなさい」


少し前までずっとやっていたやり取りだ、一人暮らし...いや二人暮らしする家に帰ったらもう、このやり取りが出来ないとなると、とても多いなる寂しさを感じる。

とりあえず今日は母さんが引いてくれていた布団でもう寝ることにした。


翌日...


康介「おはよー、今日はやっと高校の卒業式か、一人暮らしを始めてからはもうずっと大学生の認識だったけど」


康介母「まぁ、改めて卒業おめでとう、大学生になっても頑張ってちょうだいね」


康介「いや、まだ卒業式行ってないんだけど」


そして卒業式に向かった。

引っ越しで忙しかったので、高校の母校に帰るのは実に数週間ぶりである。

もう見られなくなる通学路、親友と行った定食屋等もまだ残っている。


そして高校に着いた。


親友「おぉ、康介!久しぶりやな!元気してたか?東京ってどんなとこや?」


康介「東京はなビルとかがめっちゃ多いねんな、俺が大学生になっても遊びに来てな」


親友「おぅ、そうだな、じゃあな!」


やっぱりいつになっても卒業式は寂しい物がある、というよりも年齢が上がる事に卒業式はどんどん寂しくなっていく...

特に俺の場合は他の人はほとんど地元に残るのにも関わらず俺は東京にある大学に入学するので、「大学でも一緒やな〜!」とか「おぉ!同じ大学に行くことになったのか!」というのが一切ない、これが更に寂しさに追い討ちをかけているのだろうか。


2時間もしないうちに卒業式の全プログラムが終了してしまった。


校長「それでは卒業式を終わります」


全校生徒「ありがとうございました!!!」


パチパチパチパチパチ


最後の校長先生の〆のセリフの後、この学校の卒業式伝統の「本気感謝」とよばれるものを行う、これは開校したときからの伝統で、下級生はこの上級生を見て育つ、俺も去年、一昨年と見てきたが、これをいつかやりたかった。しかしとても暑苦しい。


いつの間にか親友との最後の写真を撮りまくっていた。しばらく会えなくなるからだ。

いつも当たり前のようにあっていた人と会えなくなるってなると、とてつもなく寂しい。


俺は卒業証書を抱きしめながら、家に向かっていった。


康介母「おかえりー、とりあえず卒業祝いと大学合格祝いって事でご馳走よ」


康介「大学祝いはこの前にやったでしょ...」


康介父「とりあえず乾杯すんぞ!」


全員「乾杯ー!」


乾杯はしたものの、俺が飲んでいるのはぶどうジュースだ。だってまだ18歳だからだ。


なんか高校を卒業したら酒を飲めそうだが20歳からだから無理だ、18歳からでもいいと思うんだけどな



康介母「それでその子はなんていう子かね?」



真帆「私は味川真帆って言います、契約上では康介さんと私は交際しています」



康介母「なるほど...康介はこの子に優しくしてやってるか?」



康介「まぁそれなりにな。真帆が俺の一人暮らしの2日目から来たから、もう一人暮らしでは無くなってるんだよな」



真帆「...私が居るのが迷惑なんですか?」



康介「いやっ?別にそう言ってる訳じゃない、俺の初めての一人暮らしが二人暮らしに変わっただけ」



真帆「つまり、私がいなければ、一人暮らしで悠々とした生活が送れた。って言うことですか?」



康介「すまん、それは俺の言い方が悪かった。俺は一人暮らしは寂しいけど、二人暮らしは寂しいないから良かったって言う意味」



真帆「そういう事ですか...なら良かったです」



康介父「真帆さんは趣味とかあんのかね?」



真帆「今は特にないです...これから康介さんがやっている物は趣味の一部となっていくでしょう



康介「まぁ真帆の周りにいる人間が俺しかいないからな、影響も主に俺から受けるだろうな、真帆は他の人と関わりたいか?」



真帆「いえ、私は別に今のようなままでいいのですが?」



康介「え?本当か?俺とばっかり居ても退屈にならねえのか?」



真帆「ほとんど退屈になんてなりませんよ?」



康介「どうしてだ?俺は、俺と全く同じ分身がいたとしたら、俺はすぐに退屈になるよ?」



真帆「例えが分かりずらいですね...でも私は康介さんといても退屈しない理由は、3つくらいあります」



康介「ほぅ、まず1つ目は?」



真帆「康介さんは常に新しい事を教えてくれます。私は閉鎖されたような環境で生きていたので、世の中の色々な事がわかりませんでした、しかし康介さんのお陰で色々と知ることが出来ました、なので退屈しませんでした」



康介「なるほどな、確かに俺は真帆には常に新しい事を教えるようにはしているな、2つ目の理由は?」



真帆「康介さんは会話能力が高いので、いくら話しても飽きません」



康介「え?俺って会話能力高い?!」



康介父「いや、低いね」



康介「否定が早い!」



康介母「ええ、低いわね」



康介「オーバーキルすんのやめてくんない?」



真帆「で、でも話はほとんど面白いので、私は会話能力が高いと思ってます!」



康介「それはありがたいな、じゃあ3つ目の理由を教えてくれ」



真帆「...」



康介「...?」



真帆「...」



康介「...どうした?」



真帆「...この理由だけは康介さんには教えられません」



康介「えぇ?!なんで?!」



真帆「...だってこの理由を話すと康介さんが、からかってくるかもしれないので...」



康介父「確かに康介は昔から人をからかうのが好きでな」



真帆「や、やっぱり!...言えません」



父さあああああああああああん!!!!!



3つ目の理由が聞けなくなってしまったじゃねえかよ!

俺は真帆の退屈しない理由が聞きたかったのにいいいいい!!!!!



康介母「でもね、康介のからかいは大体はいい方向に向いたりするのよ、康介はイジメとかでからかったりは、ほとんどしない子よ」



お!ナイス母さん!

この調子でいけば3つ目の理由が聞けるはず!



真帆「...まぁどっちにしても、今は言うことはできません」



結局聞けなかった、一体真帆は何が言いたかったのだろうかが、分からなかった。



康介母「さて、真帆さんも康介も外に行ってらっしゃい、この辺は暖かいから薄着で大丈夫だと思うわよ」



母さんの「外に行ってらっしゃい」は隠語であり、「散歩してきなさい」とか「外で遊んできなさい」とかそういう意味ではなく、「買い物行ってきて」という意味である。



康介母「太ももを使って、青くなるまで、しっかりと動いて来なさい」



真帆「(青くなるまで?!怖すぎない?!)」



これは硬い青首大根を買ってきてっていう意味だ。



康介母「信号に気をつけてね」



真帆「(あれ?案外優しい人だ!)」



つまり信号の色の野菜を買って来いってことだ、青信号はピーマン、黄信号は黄色パプリカ、赤信号は赤パプリカの事だ。

今日の夜ご飯の野菜は多分いつものパプリカサラダだな。



康介母「最近はおまるとかもいいわね」



真帆「(急に何の話?!)」



おまるとは、団子の四国地方の呼び方である。

最近は身の回りに標準語の人とかが増えてきたから俺の家もほとんど標準語だが、こういうのはまだ残っているものも多い。

この時期のお団子だから三色団子でいいかな。



康介母「今日は康介の高校の卒業でもあるし、紅白焼きも食べましょうかね」



真帆「(もう全くついていけないんだけど?!...)」



紅白焼きといったら鰻とか焼き菓子を想像する人も少なくはないと思うが、この家での紅白焼きは、ステーキのことである。

まぁ、何でステーキのことを俺んちでは紅白焼きというようになったかというと、俺たちが初めてステーキを作っているのを見た時に、白い脂身と赤身が1:1の割合であったので、そこから俺ん家ではステーキの事を紅白焼きと呼ぶことになった。



康介母「じゃあそろそろ暗くなるし行ってらっしゃい」



真帆「(え?今はまだ昼の3時なんだけど?!ここの村ではそんな早く暗くなんの?!)」



まぁ「そろそろ暗くなるし行ってらっしゃい」はつまり「急ぎ目で買ってきて」という意味だ、こう言われたら結構急いで買ってきた方が良い。



康介「よしじゃあ、真帆行くぞ!」



真帆「あ、はい!」



ガラガラガラガラガラガラガラ



康介「てか、真帆はさっきの会話は理解する事は出来た?」



真帆「いえ全く、これからスポーツしに行くんですか?」



康介「普通に買い物に行くけど」



真帆「え?そんなんですか?そんな会話していました?」



康介「まぁ、父さんに知られないように全て隠語で話していたからね」



真帆「なんで知られないようにするんですか?」



康介「知られると母さんが怒られるし、でも手伝いはしたい、ってことで生まれた隠語だ」



真帆「なるほどですね...大分独特な家族ですね...」



康介「まぁ確かに近所の人からは、光野さんちは変わっているよね、とかよく言われるし」



真帆「そうなんですね、あれで結局何を買えばいいのかわかったんですか?」



康介「全部理解したぞ」



真帆「凄いですね...よく覚えましたね」



康介「だろ?」



真帆「はい」



康介「話は変わるんだけどさ、俺が大学に入学したら、真帆はどうしてるつもりなんだ?」



真帆「出来れば康介さんと居れば安心なんですが、康介さんはそんな時間ないですよね...大学に行ってますし」



康介「そうだな...俺も真帆を家に放っておくと心配だしな...あ!そういえば俺の入る大学に外部の人も入れるエリアがあるから、講義中とかはそこで待っててくれる?」



真帆「分かりました、そこで待ってます。ちなみにそこはどんな所ですか?」



康介「窓側で景色が良いって聞いたけど、あんまり俺も知らないんだよな、ごめんな」



真帆「いえいえ、康介さんはなにも悪くないですし」



そして指示されたものを買ってから、急ぎ目で家に帰ってった。

そして料理され美味しく頂いた。



康介母「真帆さんはどこで寝るんかね?昨日と一緒のところでいいかね?」



真帆「はい、そうします」



康介「俺ん家に早くベットが欲しいな、布団をいちいち轢くのは面倒臭いし」



康介父「そんなことも面倒臭がってんのか!」



康介「まぁそんなことだから、逆に面倒臭いんだよ」



康介父「まぁ分からなくもないがな」



いや納得したし、父さんはもっと反論する人だと思っていたけど違ったんか...



康介「じゃおやすみー」



真帆「おやすみなさい」



翌日...



康介「ここの朝は自然が多いからな、景色を楽しむことが出来る」



真帆「そうなんですね、確かに景色はかなり綺麗ですね」



康介「あ、そういえば今日の夕方くらいから、父さんが東京まで車で送ってくれることになったから、荷物は今のうちにまとめといて」



真帆「そうなんですね、ありがたいです」



康介「まぁ父さんは昔からそんな感じよ」



真帆「康介さんはお父さんに何かしたりはしないんですか?」



康介「まぁ誕生日にプレゼントをあげるくらいだよ、そんな大した事はしてない」



真帆「偉いですね、私の家族は家族同士がピリピリしてるので、物々交換なんて滅多にないです」



康介「いつも思うんだけどさ、真帆ってよくそんな状況から逃げ出してこれたよな」



真帆「半分無理やりに逃げ出してきましたしね、どこに家族が居るかも分かりません」



康介「真帆は家族の事をどう思ってるのさ?」



真帆「家族なんて私にとってみれば、ただの血の繋がっているだけの他人です」



康介「ほう、そんな過酷なのかよ...」



真帆「私たちの家族はとても監禁性が高いです、今頃本格的に捜査しているでしょう」



康介「え?マジかよ...それってもしかして急に俺ん家とかに来たりしないよな?!」



真帆「断じてないとは言えません、それに、あるという可能性の方が高いです」



康介「えぇ?!なんでそんなに、来るとかとが分かるんだ?」



真帆「過去に兄にあたる人物が脱走をして、九州まで逃げたにも関わらず、たった2日で引き戻されました」



康介「そんなに遠くに逃げても分かるのかよ...」



真帆「私は今回、ただ遠くに逃げるのではなく、密度の高い所に逃げたので、1週間経った今でも引き戻されていません」



康介「え?今、今回って言った?」



真帆「はい、私は今まで20回以上脱走しましたが、全て数日の内に引き戻されました」



康介「20回?!ちなみに、初めて脱走した時は何処までいけたんだ?」



真帆「初めて実行した時は隣の駅までしか行けませんでした、確か家は森の奥につくられていたので、隣の駅って言っても10km以上は離れたところにあります」



康介「まぁ確かに10kmは捕まるな」



真帆「前回は北海道の稚内辺りまで逃げましたが、全然無理でした」



康介「日本最北端だぞ?!」



真帆「それでも厳しかったです」 



康介「それでも厳しいのか...んで今回が」



真帆「東京に来ました、1週間といえば、今までの中で最長とも言えるでしょう」



康介「まじか、1週間で最長にあたるのか...」



真帆「今の四国まで来ているのも有効に働いているのかもしれません、しかし公共交通機関を使うと危ないことが多いです」



康介「まぁな、誰でも行けるしな」



真帆「実は私たちの家族の周波数帯で音を聞いていた所...」



康介「周波数帯とかあるや...」



真帆「まぁ盗聴ですけどね。もう新大阪の方まで来ていたらしいです、しかし車に乗った時に分からなくなったので、一旦打ち切ったらしいです」



康介「えっ?!すぐそこまで来ていたじゃんか?!父さんの車に乗ったから分からなくなったのか!ナイス父さん!」



真帆「まぁ一旦打ち切りなのでね、またすぐに再開しますよ、いつもそんな感じですよ」



康介「あんまり喜べないのか?」



真帆「夜に活動はしませんので、その日の夜は大丈夫って感じです」



康介「高速道路とかは大丈夫なんか?」



真帆「はい、基本的に隠れていれば見つからないことがほとんどです」



康介「おぉ、それは良かった」



真帆「長居すると見つかるので移動が大切なんですよね」



康介「難しいけど理解はした、2人で頑張っていこうな」



真帆「はい!ありがとうございます!」


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