第2章...実家への帰省

康介「風呂出たかー?」


真帆「いえ、まだ着替えてますので...」


そういやここに来てからまだ1度も風呂に入ったことがなかった。引っ越して初めて風呂を使った人がまさか真帆だとはな


真帆「着替え終わったので入っていいですよ」


そこには風呂から上がり首にタオルをかけている、真帆の姿があった。

俺が今日買ってあげたパジャマ服を早速着てくれている、本当にかわいい


康介「おぉ!似合っててかわいいじゃん!」


真帆「かわいい...って気持ち悪いですね」


ええ?!かわいいって言うのダメなのか?!じゃあ、なんて声を掛ければいいんだ?!


康介「えっとじゃあ、美しいですね」


真帆「なんか私のことを落とそうとしてませんか?そういう所本当に気持ち悪いですよ?」


うん、もう褒めるのは諦めるしかない。俺の事をかなり嫌っている真帆は、俺の褒め言葉も暴言にしか聞こえないんだ。


康介「じゃ、風呂入るよ」


やっぱり風呂はユニットバスだ、しかし安い家賃のユニットバスにしてはかなり綺麗な方だとは思う、湯船の上にシャワーを付ける辺りは意味がわからないけど。


真帆はなんか怒ってたな...

やっぱり会って初日の人に「かわいい」とか「美しい」とか、言われると、少なからず誰でも疑うよな...

別に俺はただの本音を言ってるだけなんだけどな、伝わってないのかな...


康介「よしっしゃー、風呂上がったしアイスでも食うか」


真帆「なんでこんな寒い時期にアイスを食べるんですか?」


康介「真帆は分かってないな...冬にコタツで食べるアイスが1番美味いんだよ」


真帆「そうなんですか?アイスってなんの種類があるんですか?」


康介「えーっと、バニラアイスとチョコレートアイス、抹茶のアイスだね、真帆はこの中からなんの味のアイスを食べたい?」


真帆「私はチョコレートアイスが食べたいです、康介さんは何を食べたいんですか?」


康介「俺もチョコレートアイスがいいけど、別に真帆がチョコレートアイスが食べたいっていうなら別にあげるよ」


真帆「本当ですか?それなら、ありがたく頂戴させていただきます」


真帆はチョコレートアイスに手をかけていい顔をしながら食べている。

結局俺は抹茶のアイスを食べることにした。別に俺は抹茶のアイスも好きだしいいんだけども


康介「明後日は俺の高校の卒業式があるんだけど真帆は来るか?」


真帆「え?あ、はい、行かせてもらいます」


康介「聞きたいんだけど、そこで俺は真帆の事をどこまで伝えていいのか知りたい」


真帆「えぇ、別にどこまで言っても構いませんよ、何を言おうと私は康介さんの家の居候の身ですもの」


康介「あぁ分かった」


そう言うと俺は抹茶アイスを食べはじめた、アイスなんてここ最近は全く食ってなかったからとても美味しく感じる。やっぱりアイスをコタツで食べると口元は寒いのに、その他は温かいという状態になる、この状態がコタツでアイスを食べる最大のメリットだと感じる。


康介「そういえば実家に帰るのは明後日からだから、明日はスーツケースとか服とか買っておかないとな...」


真帆「そうですね、明日はそういう物を買い物していきましょうか」


なんて話しているうちに食べていた抹茶アイスが空になってしまった、なんでいつもアイスを食べた時って、アイスの汁が少し残るのかな?


康介「もうそろそろ9時だな、折角だし今日買ったゲームでもしてみるか?」


真帆「いいですね、勝負しましょう」


俺たちがやろうとしているのはレースゲームである。あんまりゲームをしたことが無い真帆は俺が教えてあげる事にした。


康介「そうそう!そうやって操作するの!」


真帆「なるほどです...結構難しいんですね」


康介「じゃ1回勝負してみるか、俺もこのゲームは全然やった事ないし」


まぁ、そんなあんまりやった事ない同士のレースゲームはかなりカタツムリみたいなスピードになってしまう。

しかし真帆は俺が教える度にどんどん強くなっていて、やってから2時間位になると、もう既に俺より強くなっていた。


康介「おぉ!凄いじゃん!」


真帆「これは全て康介さんが教えてくれたおかげですよ、ありがとうございます」


真帆の時々見せる笑顔が本当にかわいい、しかしそういう風に見てるとすぐに引かれるのでバレないようにしてる...


気づけば11時、もうそろそろ就寝準備に入った方がいいような時間帯だ。


康介「真帆、明日も朝から早いしそろそろ寝るぞー」


真帆「分かりました、私はこっちの布団に入るので、康介さんはこっちの布団に入ってください」


俺は端っこの方で寝ることになった、一方で真帆はその反対側の端っこで寝ることになった、大分嫌っているって事が伺える。


康介「じゃあ、おやすみ」


真帆「おやすみなさい」


翌日...


康介「今何時や?...おー5時半か、そろそろ起きて朝ごはんでも作ろうかな」


そして朝早くから台所に立ち始めた、やはり冬の朝の水は冷たい、外はまだギリギリ暗くなっていて、幹線道路からは音がし始める頃だ。昨日買ってきた食材で朝ごはんをつくることにした。コンロは昨日の昼に帰ってきたと同時位に取り付けて貰ったし、火も使えるような状況だ。


康介「さーて、何を作ろうかな」


意外にも朝ごはん作りで1番時間がかかったのは料理の献立決めだ、そう考えると毎日献立を考えてくれていた母さんは凄かったんだなと改めて思う。


結局、ソーセージとほうれん草の炒めを作ることにした、理由はなんとなく朝ごはんっぽい感じという、単純な理由だ。


まだ真帆は寝ている、出来れば真帆が寝ている間に作り切れればいいのだが...


フライパンに油を敷いた後に、昨日買ってきたコンロを初点火した、あんまりコンロを付けたことが無かったので、付け方に少しだけ苦労した。


ジューーーーーーー


炒め物の匂いが部屋全体に充満している、これは美味しいやつだ。

フライパンの扱いに関しては、小さい頃からずっとやっていたのでかなり慣れている。

しかし炒めている途中で気づいた。


あれ?皿なくね?


実家から送られてきたものをまた確認してみたが、全く皿がなかった。

考えた結果、仕方ないのでフライパンのまま箸ですくって食べることにした。

しかしまた気づいた。


箸なくね?


でもそれなら今使っている、菜箸で食べることが出来る。しかし...


真帆の分の箸がなくね?


そう思った時、フライパンにかけていた火を止めてその場で食事を始めた。今日作った奴は今まで作った中で1番完璧に出来ていた。


なぜ、今俺が結構急いで食べているのかというと、そもそも真帆が寝ているうちに食べきっちゃって、作ったという証拠を隠蔽する事にすることが目的だからだ。そして真帆の分はコンビニに走って買いに行くことにする。


そんなに量があった訳じゃないので、すぐに食べ終わって皿洗いをして、コンビニに向かって走っていった。

途中で赤信号に何回も突っかかってしまったが、無事に最寄りのコンビニに着いた。


俺は弁当コーナーにあった焼肉弁当を片手にレジを待つ列に並んだ、時刻は6時を回った頃だが、かなりの量の人混みがある。


そして無事に俺の会計の番になり、ちゃっかり初めてスマホ決済を使ってみた。

しかしなぜこの急いでるタイミングで使ったんだろうか、やり方が全然分からなかったので手こずってしまい、結局5分くらい時間を使ってしまった。

やっと終わり店を出ようとした時、このコンビニのアルバイト募集の紙を見つけたので、その紙を掴みながら、レジ袋片手に俺ん家まで走っていった。


康介「ただいまー」


そこには何故か泣いている真帆の姿があった。一体どうしたのかと話を聞いたら...


真帆「康介さんが居なくて驚きました、私のことを見捨てたのかと思いました」


と、涙混じりの声で説明してきた。


康介「大丈夫だ、俺は真帆の事を絶対見捨てたりはしない」


真帆「康介さん...」


と、説明し焼肉弁当をバクバク食べ始めた、そして先程見つけたバイトについての話をする事にした。


康介「そういえばな、さっきコンビニに行ったんだけどその時にバイトに関してのお知らせを見たんだ」


その紙を真帆に見せると


真帆「いいらないえすか(いいじゃないですか)」


焼肉弁当を食べたまま返事をしてきた。

俺は分かったからいいけど、理解出来なかった人から見たら「いらないですか」って聞こえるかもしれないな。


康介「あのな真帆、食事しながら話さないでくれ、あんまり聞き取れない」


真帆「あ、すいません、ついお腹が空いてたもので食べながら話してしまいました」


康介「今日は服屋とかに行くんだろ?女子なんだからもっと綺麗してなよ」


真帆「康介さんには絶対に、私の女子らしい所は見せないですよ!」


康介「はいはい、もう行くぞー」


真帆「え?もう行くんですか?」


康介「今日の夜には実家に向けて出発したい、だから朝早くから出かける」


真帆「分かりました、でもちょっと待ってください、これ多くないですか?!」


康介「あ、やっべ、大盛り買っちまった、真帆にはお腹いっぱい食って欲しいから...」


真帆「そうですか、ではありがたく頂きます」


5分後...


真帆「美味しかったです、ご馳走様でした」


康介「そういえば真帆は俺が行ってる時に着替えてくれてたな、じゃ出発するぞ」


ガチャッ


康介「真帆はどういう服がいいんだ?」


真帆「私は綺麗な服であればなんでもいいです、オシャレは人並みでいいです」


康介「なるほどなー、俺は服とかがあんまりわからんから、自分が買いたい好きな物を買っていいぞ」


真帆「分かりました、でも服選びって大変だと聞いたことがあります、康介さんも手伝ってくれませんか?」


康介「あぁ、もちろん」


そして服屋に到着し店内に入った。

いつも思うんだけど、服屋によく天井に扇風機みたいのがついてることがあるけど、それってなんなんだ?

という疑問をかれこれ約15年間は抱えている、なんだそのしょうもない疑問は?と思う人も少なからずいると思うが、理論物理学者のアルベルト・アインシュタインさんは「大事なことは疑問を持つことを止めないことだ。好奇心はそれ自体で存在意義がある」という名言を残している、まぁ俺はそれを変な方向に向いちゃっただけだ。


真帆「広いですね、これなら私のお気に入りの服が見つかるかもしれません」


康介「そうだな、俺は真帆が似合いそうな服をどんどん探していくよ」


真帆「これ良くないですか?」


康介「おぉ!めちゃくちゃ似合ってるじゃん!かわi...うん!良い!」


真帆「なんて言おうとしたんですか?」


康介「いや、やっぱりなんでもないよ?」


真帆「そうですか...」


康介「お!これ絶対似合うって!ちょっ、着てみて!」


俺はここで気づいた、真帆は外国系の顔立ちをしているから和風の服が合わないって事にまぁ、この顔立ちだったら絶対に洋風ドレスとかが似合いそうだ。

あと身長を聞いてみたことがあったが、どうやら153cmらしい、かなり小さい方だ。

俺が178cmあるから25cm差もある、他の人から見ればパッと見、兄妹にしかみえないが、普通に同い年だ。


なんて考えているうちに、真帆が買いたい服が見つかった、とりあえず今日はそれを買って帰ることにした。


店員「お会計が18580円になります」


うおっ!バカ高えな?!

とりあえずこの前見つけた60万円が残り4万円を残して買い物は終了した。


康介「今日は夜に出発する時間になったら着てみてくれ、真帆自身が決めた服だから絶対に似合うと思うぜ」


真帆「そ、そうですか?ありがとうございます」


康介「いや、まだ真帆は着てへんけどな?!」


幹線道路はクラクションが多くなっている中、そこの横の歩道を通る。

めちゃくちゃにクラクションの音がうるさい、耳に響くような音だ。横を見ると真帆は耳を既に塞いでいた。

そしてしばらくした頃、家前の小道にはいってようやく静かになった。


真帆「私は昔から大きい音が苦手でして...」


康介「なるほどな、俺も昔から破裂音とかが苦手でな、今のような音はギリギリ耐えられるくらいなんだけど、真帆は無理か」


真帆「はい...」


ガチャッ


康介「ただいまー...って誰もいないんか」


真帆「まぁ挨拶出来る癖が身に着いている事はいい事だと思いますけど」


康介「まぁでも誰もいない部屋だぜ?」


真帆「まぁ確かにおかしいって言えばおかしいですけどね」


そして俺と真帆はコタツミカン状態になる、なんでこの時期まで寒いのか意味が分からないが、コタツミカンは至福の時だ。


康介「こうやってコタツミカンしていると年末年始を思い出すな」


真帆「そうですか、私の年末年始は存在しませんでした、毎日働かされて、ここに来るまでは幸せという幸せがほとんどありませんでした、でも康介さんのお陰で幸せを見つけることが出来ました、ありがとうございます」


急に重い話になった。

しかし1つ分かったことがある。それは真帆が以前、毎日働かされて、それが嫌で家出したことが。


康介「いやいや、俺は人として当然の行動をしただけだ、こっちこそ真帆のお陰で元気が出てるよ、こっちからも感謝する、ありがとう」


こういう経験をしてきた人だからこそ、コタツミカンが至福の時なんだろうな。


しかしあんまり頑張ってないような俺でもコタツミカンは至福の時である。

もしかしたら俺のコタツミカンは低次元なのかもしれない?!バイトを始めてからまたコタツミカンをしてみるか。


そして、時刻は午後の8時を回った。そろそろ実家に向けて出発する準備の最終確認をする。


康介「スーツケース持った?」


真帆「はい、持ちました」


康介「乗車券持った?」


真帆「はい、持ちました」


康介「俺は高校の学生服がOKと...じゃ、電源諸々を落として出発するか」


真帆「ほとんどもう落とせてますよ」


康介「じゃあ、出発するか」


ガチャッキイイイイイバタン


実家には2泊3日滞在する、俺にとってはたった数日ぶりの帰省だけどな。

辺りはもう一面真っ暗になっている。

俺と真帆が引いているスーツケースのガラガラ音がかなり大きい。


そして昨日も通った地下鉄に入った、東京駅までの切符を2人分買ってホームに入った、しばらくして電車がきた。


ドアが閉まり自分の住んでいる所に別れを告げた。そしてすぐに東京駅に向かって発車した。地下鉄の音はかなりうるさい、主になんの音なんだろうか。


真帆「私は初めて行くので、どのように挨拶をすればいいですか?」


康介「まぁそこは俺が説明するから、真帆はその心配はしなくて大丈夫だ」


真帆「ありがとうございます、康介さんには感謝でしかありません」


ただし俺には好意を抱いてないと。めっちゃかわいいから普通に彼女にしたいんだけど、今は契約上の彼女か...


地下鉄で揺られること25分...


康介「東京駅についたー!俺が初めて東京に来た時もここだった気がする」


真帆「そうなんですね、私もここだった気がします」


康介「あれ?真帆って東京出身の人じゃないのか?」


真帆「私はもう少し北の方出身です、たしか福島県とか新潟県辺りのところです、正確には覚えてませんが...」


康介「へぇー、でもよく北の方の人って方言が凄いって言うけど」


真帆「東京に来てからはすぐに標準語になれました、というよりも、多分そもそも最初から標準語で話してたと思います」


康介「そうなのか、じゃ俺達は新幹線で西の方に行ってから四国に入るよ」


ちなみに俺の実家は四国にある。


康介「じゃ実家に向けてレッツゴー!」


真帆「ゴー...」

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