第12話

建物の間をすり抜け走ること数分、機械兵に勘づかれそうになったことは多々あれど意外にも大して苦戦することなく兵器庫の前に着く。やはり開拓最前線であることやアンフォルテの陽動によって警備が手薄になっているのだろう。

目の前にした兵器庫は遠目で見るよりも些か堅固に見え、扉は固く閉ざされていた。


ーー確か、アンフォルテの鎮圧のために機械兵が武器を補充しにくるんだっけか。


ならばとりあえず待つか、と物陰に身を潜めて周りの様子を探る。目に見える限りでは機械兵は2機、おそらく警護用のもの。

そうして辺りを見回していると多少の汚れの付いた機械兵が現れた。アンフォルテの言っていたようにおそらく武器を補充しに来たのだろう。


機械兵達が兵器庫に近づき、その扉が開く。それと同時に内部に爆弾を投げ込むべく駆け出した。しかし、キュインという駆動音とともに機械兵達が一斉に振り向く。


ーーまずい、焦りすぎたか。


こちらへ突きつけられる銃口。もしかしなくても武器の補充ではなく換装に来たのだろうことに今更ながら気づき、焦燥心に火がつく。

そして何かを考える間もなく身を引き、爆弾を投げ込み目を瞑る。


その瞬間発砲音がしたかと思えば、少し遅れて爆音とともに視界が真っ白に染まる。


薄ら目を開ければ向こう一面が燃えており機械兵は沈黙している。音や光に対して範囲は案外に狭い、その様子はまるで前世で聞いたスタングレネードのようである。


ーー成功…したのか?


否、どうやら爆発前に扉が閉ざされたのか兵器庫は傷一つ無く立っている。


どうしたものか爆弾はいくつか残りがあれど、今以上の数の機械兵に対して大立ち回りできる自信は俺にはない。

やはり虎の子を使うべきなのか、と自分の信頼できない魔法切り札を思い起こす。


ーーしかしながらなぜ、自分は『分解』だけが使えるのだろうか。


周りを警戒しながら扉に手を当て、想像を膨らませる。


ーーいわゆる想像力が足りない?…いや、『分解』においても機械の構造なんかはそこまで考えちゃいない。


まぁいい、自分は『分解』が使えるから、と思考を切り上げて魔法を行使する。


「『分解』」


そう唱えた瞬間に身を襲う激しい脱力感、心無しかいままでで最も負担が大きい気がする。

そして何事もなかったかのように佇む兵器庫の扉、しかし手をかければするりと開いていく。


兵器庫の中は想像のものとは全く違った。あたり前と言えばあたり前なのだが機械兵用にチューニングされていて、中にあるのはコンセントのようなもののみであった。


ーー武器は地下にあるのか…?であればここで爆発を起こしても意味は無い、か。


どうにかして地下にアクセス出来ないものかと辺りを見回すと、目端に未だ停止する機械兵が映る。


ーー確かアイツらって武器を取りに来たんだよな、ってことはここのプラグに挿せば地下にアクセスできるか…?


物は試しと機械兵に近づき『分解』することでプラグらしきものを取り出す。そして耳に届く機械音、どうやら後続の機械兵が来ているらしく慌てて兵器庫に入り扉を閉めた。


コンセントにプラグを挿せば床が開き、何やら大仰な武器が現れる。銃の1種であろうがトリガーがない。自分には使えなさそうなことに少し落胆しつつ、武器と爆弾を入れ替えてプラグを外す。


それが地下に取り込まれていくのを確認し、急いで兵器庫を走り出る。目の前に機械兵がいるが気にすることなく一目散に走り抜ける。


そして背中に大きな圧力を感じると、鼓膜への異常な負担と共に俺の身体は宙を待ったのだった。





ー目を開けば周りは瓦礫、痛む身体を動かしながら自身の状況を確認する。


幸か不幸か吹き飛ばされた先は廃棄街の方向でおそらく兵器庫は跡形もない。自分が巻き込まれたことを除けば上々の結果だろう。


足を引きずりながらこそこそと廃棄街の方へ進んでいくと、目の前に機械兵が立ち塞がる。


「警コkーーー」


分の悪い戦いを覚悟した直後、機械兵は爆発四散し急な浮遊感が身を包む。


「よくやったと言いたいところだが、ボロボロなのは褒められねぇな。」


未だに耳鳴りが酷いがなんとか聞き取れた声音、見上げれば目元が笑ってないアンフォルテがいた。


「まぁ説教は後でだ、とりあえず逃げるから寝とけ。」


アンフォルテがそういうと周りの景色の急激な加速と共に俺は意識を失ったのだった。


ーーーーー

あとがき


課題から解放されたぜひゃっほおおう!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る