第11話
「…逆にアンフォルテはどうしてそんなに速いんだ?」
物陰を指さしては移動の繰り返し。そんな中、ふとした疑問を口にする。
「ん?魔法だよ魔法、多分な。いつの間にか速く動けるようになってたからあんまし実感がねぇけど。あとは…慣れだ慣れ、オレの人生はずっと走りっぱなしだからな。」
ーーちらりと覗いた過去が絶対に重い。…しかし魔法、か。いつぞやの火球は失敗したが、『分解』が使えるようになった今ならいけるんじゃないか…?
「……ピ○ラ」
しかし何も起こらなかった。足を動かしてみても何ら変わりない。アンフォルテがジト目でこちらを見つめている。
「何をしようとしたのかは想像がつく。だが、魔法ってのはそういうもんじゃあねぇよ。それについてはメェイェネルが詳しいが…まぁ、自分で考えてみな。」
「…」
確かにメェイェネルなら知っているのかもしれない、と頭の隅で思いながら足を動かし続ける。
そして街まであと一息と言ったところでアンフォルテが口を開く。
「そろそろか。…さっきも言ったが、街に入ってしまえば隠れるのは無意味になる。なんせ機械兵やらカメラやらがそこら中にあるからな。」
確かに街を覗けばあちらこちらに監視カメラが設置してある。
「だから、正面突破だ。オレが先行して、街中で暴れ始めたら一目散に走り出せ。」
最初に言っていたようにアンフォルテは機械兵の目を引くためどこかでひと暴れするのだろう。しかし俺は一体どこへ向かえばいいのだろうか。
「…俺はどこへ向かえばいいんだ?」
「ああ、1番重要なことを言ってなかったな。オマエが今回破壊しに行くのはアレだ。」
そう言って指さしたのは遠目に見える大きめの建物。ほかの建物の漆喰のような白さとは違い、外装が金属光沢を纏っている。
「兵器庫は外部からの衝撃に強く作られているが内部はそんなでもねぇ。今回はそこを突くのさ。」
息ひとつ挟んでアンフォルテが続ける。
「オレが外で暴れて、その鎮圧のために機械兵は武器を補充する。その瞬間を狙って爆弾を投げ込め。そして投げ込んだらすぐ逃げろ、だいたい今いる所まで逃げられたらあとはオレが拾ってやる。」
「…わかった、とりあえずやってみよう。」
正直なところ、自信はない。正面突破なんて馬鹿げてるとさえ思う。しかしアンフォルテの金色の目を見れば本気なのは明らかで、その力強さが俺を後押しする。
「…最後に1つ言っておく。死ぬなよ。失敗してもいいし逃げてもいい、だが絶対に死ぬな。」
「ああ、肝に命じよう。」
そう簡単に死ぬ訳にはいかない
「じゃあ…また後でなッ!」
そう言ってアンフォルテは街の中に消え、その数秒後に爆発音が鳴り響く。
それを聞いた俺はできるだけ機械兵が通らないような道を選んで兵器庫に向かったのだった。
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