第6話


部屋からは機械兵すら居なくなり、静まり返っている。機心、同胞、先程の言葉を反芻しながら考える。


ーー同胞という言葉から察するに、俺はこの実験?が終われば彼女のようになるのか、それとも別の意味なのか。少なくとも真の意味で機械王の駒になるに違いない。機心ということは機械化に近いなんらかの手術が行われるのか、はたまたーー


そのとき、部屋の明かりが全て消え、己の手の輪郭すらおぼつかなくなる。


何かが作動するような機械音とともに体に触れる冷たい物体。その感触が静止したあとでも作動音は鳴り止まず何かの起動準備をしている。

準備が終わったのか場を静寂が支配する。それも束の間、パチバチバチ、と電流が弾ける音とともに部屋が俄に明るくなる。

その瞬間、とてつもない頭痛、嘔吐感がおそってきた。


「…うグっ、かハッ。」


まるでが揺さぶられるような感覚、朝のレーションはもう吸収されてしまったのか口から出るのは胃液ばかり。


しかし嘔吐く体とは反比例するように、何故か頭はふわふわとした酩酊感に侵されていく。


ーー絶対ヤバい絶対ヤバい絶対ヤバい死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ


まだギリギリ残っている理性が警鐘を鳴らしまくっているが、それも時間の問題だろう。


そしてまさに理性すらも消えてしまう直前、身を取り巻く機械の挙動が変わった。

先程の気持ち悪さはどこへやら、急に訪れた少しの安堵感。続けて起こるであろうことに大きな不安を感じながらも、すぐさま飛んでいってしまった理性を掻き集める。


ーー逃げる、逃げる。どうやって?身体が動かない。とりあえずこれを外さないと。どうやって?無理だ。いや、もしかするとーー


脳裏に映るのは3週間前の光景、僅かな希望。もし自分に何らかの能力があればーー


「ーーーーーーー!!」


声にならない叫び、自分が出したのかどうかすらわからない悲鳴。思考の何もかもを塗りつぶすような痛みが身を襲う。


ーー痛い、痛い嫌だ死にたくない、誰か助けて嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ逃げる嫌だ嫌だ生きる嫌だ嫌だ嫌だ死にたくない外れろ外れろ外れろ外れろーー


コトリ、と微かに何かが外れるような音がした。


ーーどうして俺が俺がなぜ俺が選ばれた俺が俺が何もしてない機械どうして外れろどうしてどうして俺は特別俺は機械俺は能力マホウーー


ゴトリと先程よりも大きな音がした。


ーーこうなるはずじゃなかったまだ俺はどうして俺が何も俺はおれは機械俺は外れろ違う生きる特別決める死ぬどうして外れろどうしてまだどうしてーー


どんどんと何かが外れていく。それは機械の部品なのか、人間としての理性なのか。その結果どういうわけか思考が突拍子もない方向へつながっていく。


ーーおれは機械じゃない、えんじにあだ。特別なそんザイ。機械をツクる、直す、


それはおそらく自分の『意思』、長年封じ込めてきた魂の渇望。


ー『魔法において重要なのは、願い、想像、思い込み』ー


ガシャンと音がなり、身体の拘束が無くなる。痛みに身をよじらせた身体は鎖を失って宙に踊り、硬い地面に身を投げ出す。


「ッハァ、はァ、はぁ…」


ーー痛みが、止んだ?


突然の苦痛からの解放。痛みに息を忘れていた身体は空気を欲して、しばらくの間息切れが続く。


息切れがおさまり徐々に頭にも酸素が回ってくると、今しがた起こった状況を理解しようと脳が動き始める。


ーー俺は今、魔法を使ったのか?


明らかに不可解な現象、どう考えても己の腕力で破ったとは思えない拘束。まるで《分解した》かのような機械の破片が地面に散らばっている。


ーー『魔法において重要なのは、願い、想像、思い込み』。あぁ、誰の言葉だっけな。うん、使し、使


脳裏で聞こえた誰かの声。消された記憶の一部だろうそれに従い、ないよりはマシと己への暗示を重ねる。


ーーさてこれからどうしたものか。


逃げ出すのは必定。問題はどこに逃げるのか、どうやって逃げるのかである。


どこに、というのはともかくどうやって、の部分の確認。己に芽生えた能力を確認すべく、床に散らばる機械片を手に取り呟く。


「魔法、分解。」


しかし呟くだけではダメなのか、何も起きない。その結果に不安を感じながらも、今度は留め具を外し、内側から力を加えて外すという明確な意思を持って呟く。


「『魔法』、『分解』。」


今度はその願いが通じたのか機械片はひとりでに音を立てて分解されていく。

前世のゲームなどとは違う言葉だけでは成り立たない魔法に多少の面倒さを感じながらも、降って湧いてきた希望に心持ちが穏やかになる。


ーーこれがどこまで適用されるかは置いておいて、少なくとも動力部を分解出来れば機械兵からは逃げおおせる…か。あとはどこへ向かうかだな、とりあえずは廃棄街へ逃げるか。


もしかしたらこの事態を察知してこの部屋に機械兵が押し寄せてくるかもしれない、という焦りの中出した結論は曖昧なもの。しかし今の状況において行動するには十分すぎる指針だった。


ーー廃棄街。機械直轄管理区域外の地、といっても常時機械兵が巡回し、日に日に開発によって狭まっている亡国の名残。人間が見つかれば即銃殺、それでもそこに向かう他はない。


部屋の扉はロックが掛かった1つのみ。そのロックを魔法によって分解し、片側に手をかける。


ーー機械ごときに支配されるなんてもうまっぴらだ。


おそらく扉の先に待ち受ける困難、自分は呆気なく死んでしまうかもしれない。それでも、と歩を進める。


自覚してしまった自分の『意思』、今までの過去を振り払ってエンジニアは進んで行く。


ーーーー

あとがき

・感想、批評お待ちしております!

・特に批評、読みやすさとかまーじでわからん

設定がとっちらかってるし表現がクドいにぇえ…(絶望)

とりあえず10万字まではこのまま行きます。たぶん。

主人公の心情がががが前話とのムジュンがーああああ

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