第5話(仮)

ー目覚めるとそこは独房だった、なんてことはなく見慣れた自分の部屋だった。ただ妙に頭が痛い上に、心なしか記憶もはっきりしない。


ーーあぁ、また洗脳されたのか、俺。


実を言えばこの感覚は今回で2度目である。覚えている限り前回の洗脳は10年ほど前、自分の生体データ資料を見てしまったときであった。そのときに消えてしまった記憶は今はもう復活している。でなければ第三世代という単語を俺が知っているはずがない。


ーー前回の記憶が残ったのは前世の記憶があるせいだろうし、おそらく今回もそのうち記憶は戻るはず。


そう結論づけて、配給されているレーションのような固形物を喉に流し込む。


「ーー管理区6Bノ住民八タダイマカラ労働時間デス、各自指定サレタ労働ヲハジメテクダサイ。」


いつも通りのアナウンス、その音声を聞き労働場所へ移動する。その道すがら見えたのは大きな爆発の跡、機械兵たちが頻りに動き回り補修や捜査をしている。


ーー昨日はあんな爆発跡あったっけ?


頭の奥がズキリと痛む。


ーー…詳細は思い出せないが俺はここにいた、のか?もしかするとここであった爆発は俺のせいで、だから俺は記憶を消されているのか?


爆心地を避け、目的地へと歩きながら自問自答し続ける。


ーーとりあえず俺がやったとして、どうやったらこの惨状を作り出せる?…突然超常能力に目覚めたとか?そんなわけないか。そんな魔法みたいなーー


またしても痛む頭の奥、それが示すのは『魔法』という言葉が消された記憶に関係しているということ。


まさかという思いが渦巻く中、ふと顔をあげれば労働場所に着いていた。目を動かして周りを見れば昨日よりも多い監視の数。どうやら不審に思われそうな行動は辞めておいた方が良さそうだと一旦自分の思考を切り上げて俺は労働に従事することになった。


ーーーー




あれから早くも3週間、記憶は未だ戻らず仕事量の増加や監視の強化もあってロクに行動が出来ない状態が続いていた。そして今日も何も出来ない日々が続く。


「ーー情報ヲ受信シマシタ。6B-3-M002ハB管理塔地下1階011号室二向カッテクダサイ。」


そう思っていた矢先、いつもとは異なったアナウンスが鳴る。全く身に覚えのない呼び出しに小さくない不安が募っていく。

管理塔、それは地区ごとの機械、住民の監視、管理を統括している場所である。また人間の洗脳処理を行っている場所でもあり、前回とおそらくは今回も管理塔で俺は記憶を消されたのだろう。

そんな場所への呼び出し。もしかすると自分の内情が態度に出ていたのかもしれない、魔法が使えることが露呈してしまったのかもしれない、と見当違いなことを考えながら歩き出す。


部屋を出た瞬間、4機の機械兵に囲まれ目的地へと誘導される。四方を固めて進む様はまるで重要護送人。

1kmほど歩いたところで管理塔につき、エレベーターにて地下1階へ。011号室はどうやら端の方にあるようで、長い廊下を渡っていく。そして遂に着いた011号室、周りにいた機械兵が1機を残して去っていく。

ああ、俺は遂に殺されるのだろうかと内心戦々恐々としながら扉を開ける。


部屋の中には誰もおらず、中心部には机とSFの拷問部屋にありそうないかにもヤバい椅子。


ーー俺はあれに座らされるのか!?…い、いやまだ機械兵が座るかもしれない。


「椅子二座ッテ待機シテクダサイ。」


終わった、そう思いながらもおずおずと椅子に座る。そして椅子の肘掛に腕を置いた瞬間、カシャンと音がして両手首が拘束される。本格的に詰みの合図である。


ーー絶対殺されるパターンだコレ。………いや待てよ、殺すなら寝ている間にやればいいはずだ。でも洗脳にしては今までに比べて大掛かりすぎる。前世のパターンだと…尋問?なんの情報も持っていない俺に?いやないな。じゃあ後考えられるのはーー


使い慣れぬ脳をフル回転させて現状を把握しようとする。

ーそしてひとつの尤もらしい考えが頭に浮かんだ。


ーー人体実験、人体実験だ。用済みになった人物を監禁し、暴れられなくした上で薬剤投与する。今の俺の状況にピッタリじゃないか。


やっと得心がいった俺は打開策を考えるのを放棄し、痛くないといいなぁなどと現実逃避に走ったのだった。


数分後、静かに扉が開き足音を鳴らしながら1人の女性が入ってくる。


「…行動は従順、多少の戸惑いはあれど特筆すべき異常なし。…6B-3-M002、復唱してください、『全ては機械王様のために』。」


長らく聞いていない流暢な言葉。しかしながら青髪碧眼の彼女はおそらく人間ではない。所々機械部分を露出させ、微かに駆動音を出している。


「6B-3-M002、復唱せよ、『全ては機械王様のために。』」


想像もしていなかった存在に理解が追いつかず、命令すら耳を通り抜けそうになる。


「ッ!『全ては機械王様のために。』」


少しデジャヴを感じながらも慌てて言葉を復唱する。


「軽度の困惑、動揺が見られるも瞳孔、心拍数ともに想定内。現在までの行動と総合して計算を行います。」


人間らしさを孕んだ声で発される無機質な言葉。その内容はおそらく今までの人生の評価の計算。


ーーとてつもなく嫌な予感がする。


「評価値、忠誠値、オールクリア…これより機心創成を実行します。」


そう言っては外へと向かう彼女。彼女は部屋から出て、扉が閉まろうとした瞬間こう言った。


「…また会いましょう、新たな同胞よ。全ては機械王様のために。」


ーーーーー

あとがき

・感想、批評お待ちしております!

・特に自分で書いてると良いのか悪いのかわからないので適当でいいので僕を育てると思って批評ください!()


設定ガバガバすぎて自分で書いてて辛い…ふんわりプロットは出来てるけどそのうち修正祭りするかも

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