第2話悪役王子・・・改めナルシスト王子
変な女の子は兵士によってドナドナされました。
この国の第一王子を指差して悪役王子などと暴言を吐かれたら、不敬ですな。まぁ、不敬罪で即処刑なんて事はないけど、将来に響くかも・・・強く生きろよ☆
さて、愛しの婚約者殿のところへ行こう。
◆◆◆
何でよ!どうしてよ!
ここって乙女ゲームの世界じゃないの?!
かなりマイナーだったけど、私は結構好きで散々やったから間違いない筈よ!
そのヒロインに私が転生してるって気付いたのは、両親が亡くなり、母方の伯父であるデメテール伯爵に引き取られた13歳の時だ。見覚えがある屋敷と出迎えた従兄を見た瞬間前世の記憶と共にゲームの記憶がよみがえったのだ。
伯爵家の嫡男である3つ上の従兄(義兄)は攻略対象だ。
濃い茶色の髪と、水色の瞳の人。
あれ?って最初に思ったのは、記憶の混乱が落ち着いた頃。伯爵家に引き取られて一週間ぐらい。
従兄が、ヤンチャなのだ。
私が知る攻略対象の従兄(義兄)は、主人公が伯爵家へ引き取られる回想シーンで、既に水色の瞳に影を宿した落ち着いた青年だった。
それは、全攻略対象に心の傷を負わせる悪役王子が、まだ主人公が引き取られる前に命令して彼に人殺しをさせたのだ。
犯罪奴隷の男の子。父親がろくでなしで、母親やその子はずっと暴力をふるわれていた。ある日、母親が首を絞められているのを助ける為に、父親を包丁で刺したのだ。父親は死んだ。
そして、男の子は殺人罪の犯罪奴隷となった。
その子を、悪役王子が買ったのだ。
そして側近候補だった従兄に殺させた。
これは、彼の父である伯爵も知らない。知っているのは、悪役王子と、その従者と護衛騎士だけ。因みに従者と護衛騎士も攻略対象だ。
男の子を殺した時、従兄はまだ10歳だった。殺さなければ、お前の家を潰す。反逆罪で一族全員処刑する。と脅されて、従兄は殺した。
悪役王子はにっこりと微笑みを浮かべて呆然と動かない男の子を見詰める従兄に囁くのだ。
「そういえば、この子、君の乳母の子供なんだってさ」
従兄の乳母は、伯爵夫人と同じ時期に子を産んだ領民だった。本当に、母親の代わりに乳を与えるだけの乳母だったので、乳離れした後は多くの給料を渡されて家へと帰された。
暴力夫が居る家へと・・・
「君の乳母、この子が捕まって犯罪奴隷になった日に自殺したんだってさ。まぁ、君はおぼえてない乳母のこと何てどうでもいいか」
クスクスクスクスと、王子の笑い声が響き、水色の瞳が濁った。
これが、彼のトラウマだ。
そこから、誰にも言うことが出来ず、彼は影を帯びた大人しい人となる。
そんな彼が、ヤンチャなのだ。
大人しい???全く大人しくないのだが???
はっきり言って、クソガキだ。16歳、反抗期なのか、貴族の嫡男なのに父親を「くそじじぃ」とか言うし、口調も荒い。私に対して「おい、ブス」とか言ってきて思わず「あ"ぁ"??」とドスのきいた声を出してしまった。そこからはちゃんと名前で呼んでる。
じゃなくて・・・
性格が違うし、エセ不良してるが、ゲームの時の様な濁った目はしてない。まるでヒロインが彼を癒した後のように澄んだ瞳をしてる(エセ不良のくせに)。
まさか、転生者かと探りを入れるが、どうやら違うらしい。
何がどうなってるのかわからないまま、2人目の攻略対象と出会った。
やはり、その人もゲームと違っていた。
数々の女を落とすチャラ男だが、実は女を嫌悪してる侯爵家の次男。主人公の2つ上で、従兄の幼馴染み。
それが、ただの女に免疫の無いポンコツ野郎になっていた。
この人が女に嫌悪するきっかけは、やはり悪役王子の所為だ。
母親の不倫を隠れて見せられ、初恋の女の淫行を隠れて見せられ・・・当時、12歳。王子は主人公と同じ年だから10歳だったはず。
うん。悪役王子やべぇな。どんな10歳児だよ。
まぁ、悪役王子が攻略対象のトラウマをつくるのは大体一桁の年齢なので、何とも言えない。
で、その侯爵家の次男が女に夢見てる童貞くんとなってて、あ、これバグってると真顔になった。
そして、情報収集・・・しなくとも、自然と耳に入って来た話でわかった。
悪役王子が、ただのナルシスト野郎になってるらしい。
悪役王子が攻略対象に心の傷を負わせなければ、主人公が彼らの傷を癒すために奮闘するというストーリが成り立たない。
攻略対象、マジで顔が良いんだよ。ちやほやされたいじゃん。逆ハーとは言わないから、せめて一人ぐらい落としたい。
・・・と、思ったけど、トラウマ無い攻略対象達の攻略の仕方がわからん。
最推しだった攻略対象にも出会ったが、絶対にトラウマ何て無いだろう。血への恐怖症を持ってる筈だが、返り血を浴びながら嬉々として魔物を屠っていた。
違う意味でドキドキした。
悪役王子こと、フィルルージェは鬼畜なサイコパス野郎で、特に過去暗い事も無かったのに幼い頃から残虐で悪逆で、だが完璧で善良な王子を演じ、父である王に溺愛され、国民からの人気も高い。裏では次代の貴族の子弟らにトラウマをつくり、決して自分に逆らうことの無いようにした。
だが聞こえてくるのは、『極度のナルシスト』や『男色』や『女子より女子力高いマン』など、王子としてそれどうなの?という噂ばかりだ。
どう考えても、バグだろ、こいつ。
中々王子とあいまみえる機会もなく、結局はゲームと同じように16歳で行儀見習いとして城へメイドとして上がった。
その初日に、出会ったのだ。悪役王子と!
感情が昂って思わず叫んでしまった。
・・・第一王子に対して、ダメですね。はい。ごめんなさい。取り調べ???カツ丼もらえますか???
それにしても、悪役王子・・・
ゲームよりもイケメンじゃないか?
――――――――
ヒロイン()、もう少しお花畑にする予定が、結構マシな性格に・・・(;・ω・)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます