第9話 「異形の餌付け」

異形が予定していたよりも早く動き出しだ。


雪ヶ原ゆきがはらレイと白地はくじイチロは早急に

学校から脱出しようとしたが。


昨日戦った槍爪の異形と戦闘を余儀なくされる。

レイはイチロを守るために『夜雷やらい一刀流』という

剣術を使用して異形を倒すが、イチロの背後に

飛びかかってきた大耳の異形を倒すため

もう一度本気の一撃を放った。


レイは身体への負担で呼吸不全になるが

無我夢中のイチロが人工呼吸をしたおかげで復活。


イチロはレイに恋してしまい生きる覚悟をした。


折れた木刀にレイは一礼して新たに鉄パイプを

武器にして学校から脱出する。


ユウタとイチカの家にいた者達も異形の襲撃に

あっていたが、そこに風桐リョウヘイだけ姿がなかった。



食料確保中に活動を始めた異形から

命からがら逃げてきたユウタが見た光景は

大型の異形がリビングの窓を突き破り頭を

家の中に入れていた。


大型の異形は身体がふさふさの毛で覆われている。

頭は体に比べ小さいく骨を薄い皮膚が覆っていて

毛はなくゴツゴツしていてる。シャクレた大顎に

大きな二本の牙が生えてるのも印象的だ。


「ユウタ!!よかった生きてた!!」

「あぁ!って、何してんだ!?」


セイヤとイチカは『大顎の異形』の口に向かって

家にあった食料を投げて餌付けしていた。


幸いにも食べては口を開ける仕草が続いて

攻撃はされていない様子。


「リョウヘイはどうした!!」

「それが……」


リョウヘイは想像より早かった異形の再始動で

目の前の異形と戦おうとして捕食されてしまった。


「そうか……リョウヘイ……その異形の特徴は!!」


ユウタはセイヤに異形の特徴を伝えた。

リョウヘイを襲った異形は大きさが百八十センチ程で

てっぺんから生えて地面を少し引きずる位の長さの

人の髪質と似た様な毛を全身が覆っていて

コアも目視出来ない程の毛の密度の『長毛の異形』


大顎の異形もだがコアを目視出来ない

厄介な異形が現れ始めていた。


「リョウヘイの無念は俺が晴らす……」

親友を亡くし、いつも太陽のように輝いていた

セイヤの目は暗く霞んでしまった。


「そういや蘭闘と来恋千先輩は??」

「そこのソファで寝てるの……

だから逃げるに逃げれなくて……」

「ハハ……のんきだなぁ~……」


大顎の異形に餌付けを続けていたが

食料はやがて底を尽いてしまう。


「無くなちゃった……」

「輝義志先輩、木刀借りますよ……」

「ダメだ!!俺が行く!!」

「先輩は脇腹まだ痛むでしょ……それに長毛の異形に

復讐するんでしょ、目が変わってますよ……」

「ユウタ!!」

「大丈夫だ、イチカ残して俺が死ぬわけないだろ!」


ッドゴォォォン!!


壁を突き破って槍爪の異形が現れ

大顎の異形の横に並ぶ。


「うん!!死んだ!!」

「ユウタァァア!!!!」

「八蘇木ッ!!」


「な、なぁ~に~」

「うるせぇ~な~」

ソファで寝ているメグミとメウズキは

ようやく目を覚ます……。

「キャァァァア助けてレイちゃーーーん!!!!」

「うわぁーーー!!!!何だこのデカブツ!!!」


大顎の異形は大きく動きみるみる家が壊れる。

ユウタに迫る槍爪の異形は突然大顎の異形に噛まれ

あっという間にバリバリと音を立てて

甲殻を砕かれながら捕食されていた。


「これは……」

「この食いしん坊は異形も捕食対象なんですかね?」

大顎の異形は槍爪の異形を捕食し終わる。


「よし、やるぞ……」

「嫌、やはり俺が行こう!!脇腹の痛み如きで

君に遅れは取る様な人間じゃない!!」


「待って下さい!!もしかしたらだけど……」


イチカは大顎の異形に近づく。

ユウタ達は下手に動けず緊張で固まっている。


「これ……食べる……?」

イチカは胸ポケットから大好物のフルーツチョコバー

『カムフルバー』を取り出す。


大顎の異形は口を開ける。

「これ最後なの……特別にあげるから

私達のペットになれ!!」

イチカは包装を取って大顎の異形の口に投げる。


カムフルバーを一瞬で食べた大顎の異形は

何もすることなくジッとしている。


「触っちゃおうかなぁ~」

イチカはそう言って恐る恐る近づく。

「ウォルルル」

異形は返事をしたのか声を発する。


イチカは大顎の異形に対する恐怖と

最後のカムフルバーをあげてしまった悲しみで

顔がぐちゃぐちゃになるほど泣きながら近づき

大顎の異形の顔を撫でた。


「何してんだイチカ!やめろ!!」

「うわぁぁぁん!!!!大丈夫みだいーーー!!

みんなも撫ででーーー!!肌触りずっごい悪い!!」

大顎の異形の顔を覆う皮膚は鮫肌を

更に荒くした感じで撫でていたイチカの手は

皮膚がボロボロになっていた。


「撫でんならこっちだろーーー!!」

「そうだよぉ~すごい柔らか~い♪」


さっきまで寝ていたウズキとメグミは

イチカを見て躊躇いなく大顎の異形の身体側に生える

柔らかくファサファサした毛に全身を埋めていた。


「ずるいぞ!!俺もだ!!」

落ち込んでいた筈のセイヤも堪らず

大顎の異形に飛び込んだ。


「お前ら……怖いもの知らずにも程があるだろ……」


「ユウタ大丈夫かお!!生きてるか……おおお??」

「どういう状況……」

次々と襲って来る異形から何とか逃げてきた

レイとイチロはみんなが大顎の異形を愛でてる

光景をて流石の困惑。ユウタが状況を説明した。


「名前は『カムフル』にしよっと!」

「カムフルって……」

「だって私の最後のカムフルバーがこの子の

お腹の中にぃーーー!!」


まさかの大顎の異形改め『カムフル』を

仲間に加えて、壊れた家を後に食料調達に行く。


「カムフルちゃん大きいねぇ~♪」

「メグミ落ちないでよね」

「大丈夫だよぉ~♪うわぁ!!」

「分かってた……」

「エヘへ~レイちゃんありがと~」

メグミのドジっぷりにはすっかり慣れているレイ。


「他の異形とは違って格段にデカいから

背中に乗っていれば中々襲われないな!!」


「気をつけるのは今の所、浮遊する球状の異形

位ですね、何故かイチロが張り切って

倒してますが……レイ様って……」


「レイ様万歳!!レイ様万歳!!」

「気にしちゃダメよ、八蘇木やそぎ君……」

そう言いながら人差し指を唇に当てるレイ。


「その動き……誤解しますよ……」

「ご、ごめんなさい、冗談よ」

「雪ヶ原先輩も冗談言えるんですね……アハハ……」

(ちょっと焦ったんだが……本当に冗談か!?

イチロが……まさかね……)


――――


「見てよ!異形を仲間にしてるよ!」

「うん……初めて……異形を仲間に……」

「ほんとに毎回楽しませてくれる子達だなぁ~」

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