第10話 「白髪の少女」

一般住宅三階建て程の大型の異形『大顎の異形』に

襲われていた待機組にユウタは合流。


襲われていたかと思えば、セイヤとイチカが

家にある食料で餌付けをしていた。


やがて食料が尽きてしまい覚悟を決めた

八蘇木やそぎユウタが戦おうとするが

槍爪の異形も現れてしまい絶対絶命!!


と、思いきや大顎の異形が槍爪の異形に

食らいついて捕食してしまう。


イチカはもしかしてと思い、最後に取っておいた

大好物のフルーツチョコスティック『カムフルバー』

を惜しみながら大顎の異形に食べさせる。


餌付けされてすっかり懐いた大顎の異形は

『カムフル』と名付けられて仲間に加わった。


雪ヶ原ゆきがはらレイと白地はくじイチロも合流し

カムフルの背中に乗って食料調達を再開する。



――――――――――


「私の……なのに……」

「まぁまぁ~面白そうだしこのまま見届けようよ」

「嫌……作ったの私……」


――――――――――


大顎の異形『カムフル』に乗って食料調達して

安全な場所を探して移動するユウタ達。


カムフルに乗って移動している間は

地上の異形が襲って来ることは無くなり

唯一浮遊する球状の異形を警戒するだけで良くなり

それだけでもかなり安全になっていた。


「いやぁ~快適だなぁ~」

「ユウタ!ダラしないよ!」

「ゆっくり出来る時にゆっくりしないと持たないだろ~」

大顎の異形を一番警戒していたユウタは

すっかり警戒心が無くなりカムフルの背中で

寝そべりながら炭酸飲料片手にポテトチップスを

頬張りっている。


「レイ様万歳!!レイ様万歳!!」

球状の異形が来る度にイチロが鉄パイプを

カンカン鳴らして異形退治をしている。


「イチロ君、そろそろ休みなさい」

「大丈夫だお!レイ様は僕がお守りするお!!」

「そんな事してたら身体が持たないわ……

私を守ってくれるなら、休める時にしっかり休んで」

「はいッ!!レイ様!!レイ様万歳!!」


カムフルに乗って安全な場所を探したが

中々安全にやり過ごせる所は見つからず

出た答えが、異形を倒せるであろう

大陸防衛軍がいる基地まで向かう事になった。


大陸防衛軍はこのホムラ大陸を他の脅威を排除し

大陸の秩序を守っている政府直属の軍。

警察は存在せず大陸防衛軍が警察の役割をしている。


「やぁ!みんな無事で何より!

思ったりより早い再開になっちゃったね」


「お前!シツキ!!なんで!?」

「まぁまぁ、聞きたいことは沢山あるだろうけど

今は僕の話を聞いてくれ」


突如、祖埜そのシツキが現れてこれから起こる事の

説明を話し出す。


「約一時間後に君達の前に異形の群れが現れる、

これまでの進行とは違う、君達かそれとも

そこの異形を狙ってかは分からない……

僕としてはユウタとイチカに死なれたら悲しいから

忠告に来たんだ」


「異形の群れの規模は……」


「分からない……君達ではどうにもならない程で

あるのは間違いない……」

「それじゃあどうしようもないじゃんか……」


「本来僕は君達に今の段階で干渉すると

怒られちゃうんだけど死なれるともっと怒られるから

ちょっとしたプレゼントあげるよ」


シツキはユウタに手をかざすと、

ユウタの身体が白く光だした。


「なっ!?なんだこれ!?!?」

「う~ん難しい……難しいなぁ……」


ユウタは身体から光が消える。


「どうなったんだ……」

「雪ヶ原さんちょっとその鉄パイプ借してくれる?」

「どうぞ……」


レイが使っていた鉄パイプをユウタが持つ。

すると鉄パイプは変形して剣に変形した。


「何だこれ!?」

「これでユウタも少しは戦えるかもね、

とりあえずは雪ヶ原さん位には身体も動くし

そこそこ戦えると思う」

「なんかこえー……」

「その力は持った物を変質させる力かな?」

「かなって……お前がくれたんだろ……」


「しかし、レイ程の力を八蘇木君が持ったとしても

異形の群れに対抗できるのか!?」

セイヤは疑問を投げかける。


「それが無理なんだよね、とりあえず今から急いで

八珠枷町やすかちょうに向かってほしい」

「ここから歩いて間に合うかな……」

「大丈夫!イチカが飼い慣らしたその異形なら間に合うさ!

八珠枷町に着いたら助けが来る筈だからそれまで

持ち堪えて!それじゃ!」


スっと姿を消すシツキ。


「死なれて困るならお前が助けろよ……」

「事情があるんでしょ、ユウタ!頼りにしてるね!」

「イチカに力をやればいいのに……俺より強いんだから」

「私は!か弱いレディですぅ!!」


「ユウタだけずるいお!!僕も力が欲しいおッ!!」

「イチロ……お前は十分強いだろ……」

「違うお!!このボールが弱いだけだお!!」


ユウタ達は確保した食料をカムフルに

与えて足を急がせた。

なんとか八珠枷町に着くとユウタ達の前に

突如、黒いもやの様な物が辺りに漂い出す。


「なんかヤバそうだな……」

「シツキが言ってた異形の群れがここから出てくる

とかそんな事ないよね……?」


イチカの言う通り、黒いもやの中から

異形が次々と出てくる。

様々な小型から中型の異形はユウタ達の周りを囲むと

黒いもやの中から小さな女の子が現れた。


「私の……返して……」


「返してってなにを!?」

「イチカちゃんダメだよ~、小さな女の子なんだから

もっと優しくだよ~」

「待ってメグミ!!」

「大丈夫大丈夫~♪レイちゃんも待ってて~♪」


ズテン!!


「痛ぁ~……」

メグミはカムフルから滑り落ちる。


「八蘇木君その剣貸して!メグミに着いてくわ!」

「どうぞどうぞ」

レイがユウタの剣を持つと鉄パイプに戻った。


「そうだったわね……でも無いよりマシね……」

異形の群れを前に珍しく怯えている様子のレイ。


「俺が行きましょうか……?」

「あなたで大丈夫かしら……心配だわ……」


「大丈夫ですよ!シツキ言ってたじゃないですか!

俺もレイ先輩位には動けるんですよ!ほらほら!

って、マジか……俺こんな動けんのか……こわっ」


「八蘇木君、早くメグミの所に」

「あぁ!そうでした!んじゃ、行ってきます!」


すっかり自信の着いたユウタはメグミの元に走る。


「こんにちわ♪お名前は――」

メグミが近づくと小さな女の子は黒いモヤと共に

姿を消した。


「なんでぇ~」

来恋千ここち先輩!!マズイッ!!」


異形達が動き出す。


「ありゃ?」

「あれぇ~?」


異形の群れはユウタとメグミに目もくれず

カムフルを目指して歩いていた。


「みんな!!カムフルから降りろ!!」


異形達はカムフルに群がった。

抵抗することなくジッとしているカムフル。


「ユウタ!!助けないと!!カムフルが死んじゃう!!」

「無理だ……あの異形の数俺達にはどうしようもない……」


ポトッ……


異形に捕食されているカムフルの方から

イチカの前に何かが飛んできた。


「これ……私が最後にあげたカムフルバー……

食べてなかったんだ……」

「イチカ……行こう……あの異形共がカムフルを

捕食しきった後に俺達を襲わない保証はない」


ユウタ達は逃げようとした時、異形の群れが

あっという間に捕食を終えて追いかけてきた。


「クソッ!!戦うか!?」

「ダメよ逃げましょ!!さすがにこの数じゃ

どうしようもないわ!!」

「シツキめ!持ち堪えるなんて無理じゃねーか!」


「戦える人は私達と一緒に!!この怪物の群れを殲滅するわ!!」

「なんだ全員腰抜けばかりか……足でまといになる引っ込んでろ……」

「そんな事言わない!早く片付いた方がいいでしょ!」


突如、ユウタ達の前に黒いレザージャケットを着た

女性と白いレザージャケットを着た男性が現れる。


カチャ……バッァァン――


響き渡る銃声と共に弾が走った通りに異形は倒れ、

それを合図に突如現れた二人が異形を倒していく。


女性は細いブレードを両手に持って次々と

異形を切り裂いて、男性はナイフで的確に

コアを仕留めていく。


銃声もテンポよく轟き、異形を撃ち抜いてく。


「そこまでだ!!退くぞ!!そこのお前達も俺達に

着いてこい!!安全な場所に誘導してやる!!」

スナイパーが姿を現す。


「厄介事を増やすな……」

「ささっ!この人の言う事は聞かなくていいからね!早く行きましょ!!」


ユウタ達は軍隊の人が助けに来たと安堵して

一緒に着いていく。


しかし、着いた先は軍隊とは真逆の所だった……。

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