第5話 「人間であって人間じゃない」

聞き覚えのある声は輝義志セイヤ、風桐リョウヘイ、

雪ヶ原レイの幼馴染の来恋千メグミだった。


大耳の異形に襲われていた所を無事救出。


レイの捜索を再開したがウズキが足を引っ張り

リョウヘイがウズキを見放そうとした時に

現れた祖埜シツキがレイの無事を伝え全員安堵した。


リョウヘイはシツキに違和感を感じ怪しんでいるが

レイの合流とシツキの招待を探る為に安全と言われる

屋上の小屋に共に向った。


♦️


シツキ達は屋上に向かうと、扉の前で

ユウタとイチカが少し開けた扉の隙間から

外の様子を伺っていた。


「あれ?二人とも何してるの?」

「シツキ!無事だったか!!良かった!!」

「本当に心配したんだよ!!!!」

再会を喜ぶユウタ、イチカ、シツキ。


ユウタは屋上に球状の異形が多く

小屋まで行けない事を伝えた。


「二人は僕の親友なんだ自己紹介は後ね」

セイヤ達にそう言うと扉を開けて

シツキは一人で屋上に入るら。


「悪いね……『アンユ』邪魔するよ」


シツキは片手を球状の異形の群れに向ける。

回帰ヌーテーラオ

何かを唱えると異形の群れはチリになって

消えていった。


「おいおいおい!なんだそりゃお前!!異形共が一瞬でチリだぞ!!どうなってんだおい!!どうなってんだ!!」

「まぁまぁ落ち着いてよウズキ君、話は小屋の中でしようよ、また何処から異形が湧いてくるか分からないからね」


バタンと扉が開き小屋からレイが飛び出してくる。


「メグミ!!セイヤ!!リョウヘイ!!みんな無事だったのね!!」

「うわぁ~ん!!レイちゃ~ん会いたかったよぉ~」

「俺はレイが生きていると信じていたぞ!!」

「剣道で俺とセイヤ二人がかりでも勝てない程の腕だぞ……異形何かにやられたりしねーよ」


セイヤ、リョウヘイ、メグミ、レイは再会を

心から喜び合った後にユウタとイチカの元に

レイが申し訳なさそうに歩いてくる。


「一人で逃げてごめんなさい……」

「謝らないで下さいレイ先輩!!」

「雪ヶ原先輩のあの時の判断は正しかったですよ、

あの時あのまま戦っていれば異形に……だから謝らないで下さい!」


「ありがとう……次はあなた達を護れるように

もっと精進するわ……」

すっかり自信喪失している様子のレイだった。


リョウヘイはシツキの元に行く。


「お前が人間では無いのは確かだ……

異形共を消したあの技は俺らにも使えるのか……」

「さぁ~どうだろうね、やってみる?」

「冗談はよせ……」

「詳しくは小屋に入ってからだ、いいよね?」

「あぁ、お前が何者か聞かせてもらう」


全員小屋に向かうと小屋の隅っこで

震えている人がいた。


「イ!イチロ!!」

「お、おぉぉぉお!!ユウタが生きてる!!

絶対死んでると思ったお!!」

「ひでーな!!少しは親友の心配しとけよ!!」

「ごめんお!ミコるんを護るのに必死にだったんだお」

「親友よりフィギュアかよ……」


「それよりもだお……シツキ氏見たお……僕はしっかり目に焼き付けたお……何なんだお!!あの力は!!僕にも教えるんだおぉぉぉお!!!!せっかく異世界に来たって言うのに僕にはなんの力も無いんだおぉぉぉお!!!!」


「白地君……ここは君の求めていた異世界じゃない……だけど、きっと自分だけの力が見つけられる筈だよきっと」

「そうなのかお……ならそれまで頑張るお……」


「よし!じゃあみんな適当に座って!まずは自己紹介でもしようか!」


それぞれ腰をかけて自己紹介を始める。


「じゃあ、まずは僕から」

「待て、お前は長くなる最後だ」

シツキを遮るリョウヘイ。

「そうだね、じゃあユウタから時計回りで」


「俺は一年の八蘇木やそぎユウタです」

「えぇ?それだけ?これから一緒に生き抜いていく

仲間達への挨拶だよ?」

「いいだろ簡単でも」


「じゃあ次は私ね!同じく一年!野乃木葉ののきばイチカです!好きな食べ物はユウタの作った手料理です!もっと好きなのはカムフルバーです!あっ!ユウタとは婚約していて同棲もしています!よろしくお願いします!」


「リア充爆ぜろ!!」

「リア充爆ぜるんだお!!」

ハモったウズキとイチロは無言で腕を合わせる。


「それじゃあ次は僕だお、一年で名前は白地はくじイチロだお!推しはこの娘、オオグイミコルンだお!!」

両手に持ったフィギュアを胸に抱えるイチロ。


「何時いかなる時も僕はミコルンを護るんだお!!」


「おし!次は俺様だ!一年にして焔高最強のヤンキー蘭闘らんとうウズキ様だ!!愛用のメリケンを使わせたら最後、俺の右に出るものは一人もいねぇ!メグミちゃん!の安全は俺が約束します!!」


「いいじゃん、しっかり護れよチンチクリン俺はもうお前を助けないけどな……」

煽るリョウヘイ。

「ま、護ってくれなくて大丈夫だし!?!?俺様最強だし!?!?」


「メグミは三年生で来恋千ここちメグミって言いま~す♪メグミはドジなのでみんなの迷惑にならない様に頑張ります!」


「私は三年の雪ヶ原レイよろしく」


「それだけでいいのか?」

「大丈夫ですよ輝義志先輩!雪ヶ原先輩はファンクラブがある程学校の有名人ですから!!」

「そうそう!私という婚約者がいながらレイ先輩に惚れてユウタも入ろうとしてたから鉄拳制裁しました!」

「惚れたというか……魅力されたというか……」


イチカが一睨みする。

「悪かったよ……」


「それじゃっ!!俺は三年の輝義志てるぎしセイヤ!!

リョウヘイ、レイ、メグミとは幼馴染だ!!

俺とリョウヘイは運動神経が優れているから

異形とは積極的に、戦って君達を護ろう!!

それにリョウヘイは切れ者でもある!!

困った時はリョウヘイだ!!」


「おい……何勝手に決めてくれてんだ……

俺は風桐かざきりリョウヘイ、別にお前達を助ける義理はない、生き残りたければ俺達の邪魔をしない事だ……」


場の空気がリョウヘイの言葉で悪くなる。


「あはは……みんな風桐さんの邪魔はしない様に気を付けようね……、最後に僕は祖埜そのシツキ、ユウタとイチカとは昔から仲良い間柄です、単刀直入に言わせてもらえば君達と同じ人間であって人間じゃない、それと今回の異形の件については、起きるべくして起きた、以上!質問どうぞ」


「シツキ……やっぱお前人間じゃないんだな……」

「ユウタ黙っててごめんね」

「いいさ、親友だろ!教えてくれよどうすればいいか」


「祖埜、人間であって人間じゃないとはどういう事だ……」

ユウタとシツキの会話に割って入るリョウヘイ。


「そのままの意味だよ、時期に分かる時が来る

それまで生き残れるといいね」

「ふざけんな!!お前は異形の事を知っていた!!

お前がこの世界を滅亡させる黒幕なんじゃないのか!!!!」


「言ったじゃないか、僕は君達の味方だよ」

「信じられるか!!!!」

「落ち着けリョウヘイ!!話が進まなくなる!!」

リョウヘイをなだめるセイヤ。

「すまない……取り乱した……」


「それじゃあ僕から言える事を言うね」


「まずは、ある人物が君達の前に現れる

その時まで生存者は協力して異形から逃げるんだ

もちろん戦ってもいいけど、異形の中には危険な種類も沢山いるから逃げた方が安全だ」


「セイヤ達には伝えたけど、異形には共通の弱点がある、コアと呼ばれる黒くて丸い物を持っていて、少しでも傷を入れればコアは崩れて異形は生命活動を停止する、戦う時はコアを狙って」


「それと、生存者の中には僕と同じ様に、人間であって人間じゃないと言える存在がいる、その人達と遭遇したら決して争わずに協力する事」


「僕は役目を果たした……もう在るべき場所に戻らないと行けない、ユウタ、イチカ、みんなも頑張ってね……長く険しい戦いになる、必ず生き延びてね」


「ちょっと待てよ!!シツキの力があれば異形を一瞬で片付けられるだろ!?」

「ユウタ……ごめん……僕の力は異形を在るべき場所に戻しただけなんだ、異形を倒したわけじゃない、あくまで一時的な解決策でしかない」


「在るべき場所ってなんだ……」


「そろそろ行かないと……必ず生き延びて!!

また会える事を楽しみにしてるよ!!」


一方的にそう言ってシツキは小屋から出ていった。


「シツキの言ってきた事はいつも正しかった、

俺はシツキを信用する……」

「そうだね、私もシツキの話を信じる」

ユウタとイチカはシツキは嘘を付かない事を

昔からの付き合いで分かっていた。


「どちらにせよだ!!現実には信じ難い事が次々と起きている!!生き残る為に協力しよう!!」

「セイヤがそう言うなら必死に足掻いてやるさ……」


小屋の集まった焔高校の唯一の生存者達は

生き残った先の景色を見る為に覚悟を決めた。

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