第4話 「焔高の生存者達」

ユウタ達は無事に屋上に到達したが

球状の異形が屋上に蔓延っていた。


雪ヶ原レイが安全な小屋まで道を

切り開こうとするが、捌ききれずに一人で

小屋に入ってしまう。


取り残されたユウタとイチカは

一旦退避して屋上の様子を伺う事に。


一方、屋上から見渡せるグラウンドでは

校内で突出した運動神経を持っている

輝義志セイヤと風桐リョウヘイが異形に

追われていたが、異形に侵入されていなかった

体育館を上手く利用して異形を閉じ込める事に

成功し、幼馴染のレイが生きていると信じて

校舎に向かう。


道中で異形に追われていた焔高最強と名乗る

蘭闘ウズキを救出し、無事に校舎にたどり着くが

聞き覚えのある女子の悲鳴が校舎に轟いた。



教室のロッカーの中で口を両手で塞ぎ

必死に声を抑えている女の子がいた。


彼女は『来恋千ここち !メグミ』

異形襲来前の異様な地鳴りの時から

驚いてロッカーに篭っている。


生徒達や異形が立てる騒がしい音が

しばらく続いていたがやがて鳴り止み

メグミはロッカーの空気穴から教室を覗く。


「ヒィッ!!」


教室には至る所に血が飛び散っていて

ロッカーの前には一人の女の子が異形に

食い散らかされた悲惨な姿で転がっている。

恐る恐るロッカーから外に出る。


「えへへ……喉乾いちゃったなぁ……」

転がる亡骸を前にそう言った。


メグミは廊下の水道に行くが

蛇口に血が飛び散っていて水が飲めず

顔をしかめている。


「一階の自販機まで行けるかなぁ……こわいなぁ~」


階段を降りようとした時に一階から

大耳の異形が上がって来てしまう。


「ふぇぇ!!なになにーーー!!!!」


声を察知した大耳の異形は

メグミの方に振り向き、発達した後脚で

地面を蹴り上げて勢い良く飛び掛る。


「ウッ――」

体当たりされて吹き飛ばされるメグミ。


「痛いよーーー!!!!」


大耳を異形はノソ……ノソっとゆっくり近づき大きく口を開けてメグミを捕食しようとする。


「キャァァァア!!!!」


「――――えっ……?」


大耳の異形は粘着質な糸に絡まり

倒れてもがいている。

他の異形が出した物だろうか、

メグミは一命を取り留める。


「メグミーーー!!大丈夫かーーー!!」

校舎に入ったセイヤとリョウヘイ

後、ウズキがメグミの悲鳴を聞き走って来た。


「セイヤ君!!リョウヘイ君!!

何か大変なんだよーーー!!」


セイヤは大耳の異形からメグミを引き離し

リョウヘイはもがく大耳の異形の頭を木刀で

殴打して叩き割った。


「会えてよかったぁ~」

ほのぼのした満面の笑みを浮かべる。


「かっ……可愛い……」

ウズキはメグミに一目惚れしてしまう。


「おいチンチクリン、メグミに変な気持つなよ」

「べべべ別に!?惚れてねーーーよ!!」

ウズキはそう言いながら絶命してる

大耳の異形をメリケンでドスドスしている。


「レイは見てないか……?」

「そうだ!!レイを探してるんだ!!

必ず生きている筈だ!!」


リョウヘイの問い掛けに思い出すように

セイヤは勢い良くメグミは肩を揺する。


「見~て~な~い~よ~」

「セイヤ、メグミの首がモゲるぞ」

「す、すまない!!取り乱した!!」


メグミは目をグルグル回して倒れ込み

セイヤとリョウヘイに会えた安心からか

そのままヨダレを垂らして寝てしまう。


「こんな状況でよく寝れるな……セイヤ、

責任持って運べよ……」

「俺とした事が!!その罰しかと受け止めよう!!」


セイヤはメグミをおんぶした。

メグミの巨乳がセイヤの背中に当たって潰れる。


「おい!!そんなんご褒美だろ!!ズリーぞ!!俺におんぶさせろ!!」

「お前は黙れ……いちいち喚くな……」

「お気遣い感謝する!!しかし君は身体がメグミより小さいから君の機動力を落としてしまう!!俺の代わりにこの木刀で怪物を退治してくれ!!」


「――しょ、しょうがねーな~」

ウズキはセイヤから木刀を預かる。


「はぁ……バカばかりで疲れる……」

余計なお荷物を拾ったと後悔するリョウヘイ。


あらかた異形は先に進行した様で

移動しやすくなっているが、

レイを中々見つけることが出来ずにいた。


「ダメだ……見つからない……」

「諦めるのが早すぎるぞ!!」

「そうだぜ!!まだ、校舎の半分も捜してないぜ!!」

「そうか……誰かさんが怪物と出くわす度にイチャついてるから結構捜した様な気がしててな……」

「うるせぇ!!俺様はやっぱメリケンだぜ!!」

そう言ってウズキは木刀を投げ捨てて

金色に輝くメリケンを指にはめる。


「余計使い物にならなくなるから木刀を拾え……お前のお守りしてる程暇じゃないんだ……これ以上面倒かけるなら別行動だ……」


「焔高最強のこの俺様を置いてくだと??

後悔するぜッ!!」


「あぁ……拾った事を後悔してるよ……」


珍しく親しくない人と会話を弾ませるリョウヘイに何故かセイヤは嬉しそうな目で見ている。


「おっ!!生存者発見!!」

突如下の階段からひょっこり現れた彼は

異形に飛び込んで行った祖埜シツキだった。


「おぉ!!他にも生存者が居たか!!良かった!!」

「待て……こいつの制服汚れ一つ無いぞ……

怪しいな……お前もこの怪物の類いだったりな……」


「おっ!鋭いねぇ~、でも安心して僕は君達の味方だよ!そしてこれは怪物じゃなくて異形って言うんだ」

シツキは生きてるヒルの異形の尻尾を掴みブランブランさせている。


「おい!そいつ生きてるぞッ!!」


「大丈夫大丈夫!こいつは雑魚だから!」

そう言うとシツキはヒルの異形に付いている

黒く丸い部位をデコピンした。


「この黒いのは異形全種が共通して持っている物でコアと呼んでいる、このコアに少しでも傷を付ければ異形は生命活動を停止するんだ」


「おぉ!有難い情報感謝する!!」


セイヤは真っ直ぐに感謝を述べるが、

早く知りたかったとなんとも言えない顔をするリョウヘイとウズキ。


「情報共有は助かるが……お前余計に怪しくなったぞ……?異形とか言う存在を元々知っている様だしな……」


「まぁ~信じて貰えなくても結構だよ、とりあえず安全な場所に案内するから着いてきなよ、詳しい話はそれからって事で」


「悪いが俺達は今、捜している人がいる……

着いて行くのは見つけてからだ……」


「雪ヶ原レイさん……かな?」


セイヤとリョウヘイは驚愕した表情でシツキ見る。


「雪ヶ原さんは既に安全な場所にいると思うよ、僕の友達と屋上に向かって行くのが見えたからね」


セイヤとリョウヘイはレイが無事だとわかり

ホッとした。


「うぅ~ん……」

目をゴシゴシしながら目を覚ますメグミ。


「おッ!起きたか!!」

「ごめんね~寝ちゃってたぁ~」


メグミはウズキを寝ぼけ眼で

じっと見ている。


「や、やぁ!!メグミちゃん!!

俺様は蘭闘ウズキ!!メグミちゃんが寝ている間、護ってやったんだぜい!!」


金色に輝くメリケンをはめた手を掲げ

渾身のドヤ顔を決めるウズキ。


「そうだったんだぁ~!!ありがと~♪」

「いえいえ!メグミちゃんの為ならばこの命尽きるまでお護りしましょうッ!!」


「お前は異形に襲われてただけだろ……」


「それじゃ、雪ヶ原さんの居る屋上に

向かうとしようか、校内で生き残っているのは君達で最後みたいだしね」


「そうか……みんな異形に……」


祖埜シツキ、輝義志セイヤ、風桐リョウヘイ

来恋千メグミ、蘭闘ウズキの五人は

校舎に留まっている少ない異形を倒しながら

屋上に向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る