第3話 「焔高の強者達」

ミカドとイチカは自在箒の緩んでいるネジを外し

持ち手部分を武器にレイと共に異形を退けながら

何とか屋上に辿り着くことが出来たが……


「まぁ、そりゃ外にもいるよなぁ……」

「……この浮遊してる球は何かしら?」


目の前に漂ってきた球をレイは木刀でつつく。


球のサイズは人の頭と同じ位の大きさで

横に一本の線が入っている。

黒く光沢感がありあまり生物感はない。


フヲォォォーーン


突かれた球は奇妙な音を立てると

球に入った一本の横線が口の様に開き

レイに向かって飛んで来る。


「レイ先輩!!」

「雪ヶ原先輩!!」


レイは焦る表情一つ見せず球に木刀を突き刺し

地面に叩き付けて割った。


「これも異形というわけね」

「この球状の異形を何とかしないと

小屋に辿り着けそうにないですね……」

「あの小屋が安全ならそこまでの道を私が作るわ、

私の合図で小屋まで走って」


そう言ってレイは屋上に漂う多数の球状の異形を

次々と木刀で割っていく。


「すげぇ……剣道部の域を超えてるだろ……」

ミカドはレイの無双っぷりに見惚れる。


しかし、周囲に浮遊していた球状の異形が次第に

レイに集まりだして道の確保所では無くなり始める。


「クッ……数が多すぎるわね……」

「レイ先輩!!私達も加勢します!!」

「今来てはダメッ!!……二人共ごめんなさい!!」


レイは謝ると小屋に向かって走り出して

一人で逃げてしまう。


「部長の野郎!!一人で逃げやがった!!」

「そんな怒るなよ、仕方ないだろあの場面だ

俺達の所に引き返すよりも小屋に入っ方が

先輩も俺達も安全だ、とりあえず一旦

引き返そう、あの数がこっちに来たら終わりだ……」

「ごめん……」


屋上から引き返したミカド達はドアの隙間から

様子を伺い、球状の異形が減るのを待つ。


――小屋の中――


小屋の中にはレイ目を輝かす少年がいた。


「すごい……すごいんだおぉぉぉお!!!」

「な、何……?」

「先輩凄いお!!かっこいいお!!!!

最強だおぉぉぉお!!!!」


先に小屋に居た少年は焔高校一年『白地はくじイチロ』

肥満体型で二カッと素敵な笑顔のオタク。

ミカドの親友で同じヘアバンドをしている。


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小屋の棚には人気アニメのオオグイミコルンの

フィギュアが三つ並べられている。

イチロは立入禁止の小屋を私物化していた。


「私は最強なんかじゃないわ……」

そう言ってイチロを背に扉の前に立ち続ける。


「仕方ないんだお……あの状況では先輩の判断が

最前の判断だったと思うんだお……」


話しかけるイチロに無言になるレイ……。


――グラウンド――


屋上から一面見渡せるグラウンドでは

鳥型の異形や球状の異形などの小型の異形と

二人の生徒が追いかけっこしている。


一人は『輝義志てるぎしセイヤ』

運動神経抜群で色々な運動部から声がかかり

兼任で部活動に入部している。

頭も良い方だが、真っ直ぐ過ぎて空回りする事も。


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もう一人は『風桐リョウヘイ』

セイヤと同じく運動神経抜群で兼任で

部活動に参加している。

太陽の様なギラギラした眼差しのセイヤとは

対照的で暗い眼差しのリョウヘイ。

見た目も不良っぽくあまり他人に心を許さないので

他の生徒には怖がられる事も多々ある。


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セイヤとリョウヘイは小屋に居るレイと

幼馴染でもある。


「リョウヘイ!!一旦校舎に戻るぞ!!」

「校舎にも怪物がワラワラいるだろ!?」

「障害物がないグラウンドで走り回ってても

俺達の体力が無くなる一方だ!!」

「それもそうだな、ただこの怪物の群れを校舎に

入れるのは得策じゃないな……」

「なら一旦体育館の方に逃げて

奴らを閉じ込めるとしよう!!」

「名案だ」


二人は異形の群れを引き連れて体育館に入る。

体育館の本館に入る手前にもう1つ扉がある。

そこは剣道部や柔道部が使う武道場があり

二人は武道場に入って扉を閉める。


異形は扉が空いている体育館の方に

ワラワラと入っていく。

幸い体育館には誰もいない様で

異形も侵入していなかった。


武道場の安全を確認していた二人は

剣道部の備品庫の前で立ち止まる。


「暫くはここで様子を見ようと思ったが

そういう訳にはいかないな……」

「あぁ……レイは必ず生きてる早く助けにいかねば」


セイヤとリョウヘイは木刀を手に取り

あらかた異形が体育館に入った事を確認し

勢い良く武道場から飛び出して体育館の扉を閉めて

レイを探しに校舎を目指す。


チラホラいる小型の異形を

木刀で叩き潰しながら校舎を目指すが、

後ろから一人の少年が二匹の球状の異形を連れて

追いかけて来る。


「おーーーい!!待ってくれーーー!!」


「なんか面倒臭そうなやつが来たな……」

「生存者か!!助けねば!!」


セイヤは追われている少年の元に走り

木刀で球状の異形を叩き割る。


「いやぁ~助かった!!助かった!!サンキューな」

「間に合って良かった!!」


リョウヘイが後から来て少年を

迷惑そうな目で見ている。


「セイヤ、助けたなら早く行くぞ……」

「そうだな!!少年しっかり着いて来い!!」

「ダメだ……足でまといになるだけだ、

こいつは置いていくぞ」


「俺様が足でまといだって??焔高喧嘩最強の

蘭闘らんとうウズキ』様だぜ!!」


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「それは心強い!!」

「チビガリだぞ、どう見ても雑魚だろ……」

「おぉ、そうかでは護らなければ!!」


「護ってもらわなくて結構!!

俺様最強だかんな!!」


「おぉ!!やはり心強い!!」

「はぁ~、着いてくるのは結構だが

俺達の邪魔だけはするなよ……」


リョウヘイは諦めてウズキの同行を許す。


「お前手ブラで大丈夫か……?」

「おう!!大丈夫だ!!俺様には愛用の

メリケンがある!!」


ウズキはポケットから金色のメリケンを取り出し

指にはめる。愛用と言う割には一度も使って

いないのだろう、新品の様だった。


「綺麗に磨いているのだな!!

愛用する道具を大切にする事は素晴らしい事だ!!」

「どう見ても……新品未使用だろ……

てか、一年が三年にタメ口使うな……」


「アァン!?お前不良の癖に俺様を知らねーのか?

焔高最――」

「はいはい聞いた聞いた、お前の事は

一ミリも知らねーし、俺は不良じゃねぇ」


三人はゴタゴタしながらも校舎に辿り着く。


「レイ……無事で居てくれ」

セイヤ眩しい表情は曇る。


校舎の中はヒルの異形が至る所で

生徒達や先生達の亡骸を貪っていた。


「キャァァァア!!」


校舎の玄関に入ると女の子の悲鳴が聞こえて来た。

セイヤとリョウヘイは聞き覚えのある声の元に急ぐ。


「おいッ!!速ッ!!置いてくなよーーー!!!!」


ウズキは二人に必死に着いて行く。

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