第6話 「間一髪!槍爪の異形」

祖埜そのシツキの登場で異形の倒し方と

雪ヶ原レイの行方を知ったセイヤ達は屋上に向かう。


屋上の扉の前では八蘇木やそぎユウタと野乃木葉ののきばイチカが

外の様子を伺っていた所に合流。


シツキは屋上に蔓延る球型異形を不思議な力

回帰ヌーテーラオ」を使用して一瞬で

球状の異形を片付けた。


セイヤ達はレイとの合流を喜び

屋上の小屋にて自己紹介とシツキの存在と

異形についての話をする。


そして、シツキは伝えたい事を伝えると姿を消した。



焔高校の唯一の生存者達は小屋の中で

今後についての話し合いを始めている。


「これからについてだが……俺達は一つのチームとして協力し合う事になる、チームには纏める人間が必要だ……俺はセイヤに任せたいと思うが異論はあるか……?」

「いや!!俺は頭の切れるリョウヘイが適任だと思うが?」


「俺は決断力のあるお前をサポートする役だ」

「そうね、リョウヘイは昔からセイヤの補佐役だものね」

「まぁな……いざと言う時の決断力は俺にはないしな……」


「待て待て待てぇい!!リーダーなら焔高最強の俺様しかいねーだろぅ!!」

「お前は問題外だ……黙ってろ」


「ウズキ君ごめんね……でも、セイヤ君にリーダーは任せて安心だよ!!」

膝を付きあからさまに落ち込むウズキに

メグミは寄り添い背中に手を添えた。


「め……女神様!!」

メグミの優しさにすっかり虜のウズキであった。


「他に意義がなければセイヤをリーダーにしたい、どうだ?」


全員はリョウヘイに賛同し

輝義志てるぎしセイヤがチーム焔のリーダーに決まった。


「まずは食料確保だ、異形が襲ってくる危険性もあるが、このままここにれば餓死するだろう、何より祖埜が言っていた、あいつと同じ人間であって人間じゃない奴ら……そいつらを見つけられれば生存確率がかなり上がるだろしな」


「そうだな!!異形は思ったより怖い生き物では無い……露出しているコアを狙えば楽に倒せる!!食料確保は俺とリョウヘイとレイが護衛して、その間に君達には食料確保してもらおう!!」


イチカは手を上げて質問する。

「食料確保した後はどうするんですか……?外はどこが安全かも分からないし……」


ユウタも手を上げる。

「最低限の人数で食料確保に行ってまたここに戻るのはどうでしょうか?シツキはここに異形は寄ってこないから安全だと言っていたので」


「良い提案だな!!」

セイヤはサムアップしてユウタにビシッと向ける。


「なら食料確保する時は俺とセイヤとレイは必ず護衛に着くとして、食料確保はユウタ、イチカに任せてもいいか?」


「はい!」

「あれ、他の人は……?」

頼もしく返事をするイチカに対し

ユウタは嫌そうな顔をしている。


「メグミは普段から危なっかしいのと、蘭闘は俺達とここに来るまでに何回も一人で突っ走って異形に襲われては俺が助けた、白地は単純に動けなそうだからだ……」


メグミは申し訳なさそうにして、

ウズキはメグミの前で見栄を張った事がバレて

小屋の隅に行き縮こまる。


しかし、イチロは猛反発する。


「失敬な僕は動けるお!!」

イチロは肥満というハンデを諸共せず

俊敏に動ける様を見せつける。


「す、凄いな……、なら白地も食料確保要因だ」


食料確保の仕方についてあらかた決まったその時、

またあの時の地鳴りが始まった……。


ユウタとリョウヘイが確認で外に出ると

再び異形が進行して来ていた。


「第二波ってやつか!?!?」

「しかも前回よりもヤバいのかいるな……」


遠くからでも分かるほど大きい異形の影が見えた。


「みんな!!ここはダメだ!!かなりデカいやつが

こっちに来ている!!恐らく校舎は崩れる!!」


やむを得ずにチーム焔は校舎を捨てて

食料確保しつつ安全な場所を探る事になった。


校舎を出たが街にいつもの賑やかさは一切なく

建物は至る所が破損していて血や肉片が飛び散っていた。時々異形の鳴き声の様なものが響いている。


安全な場所を探し求めて歩けど

どこも異形が侵入した痕跡があった。


「この様子じゃ俺達の家族も……」

「リョウヘイ……嘆いている暇はないぞ!!

俺達だけでも生き延びて皆の仇をとるんだ!!」


異形の進行する音が段々と大きくなる。


「まずいな……早く安全な場所を探さねーと……

異形の第二波もそう遠くない筈だ……」

「風桐先輩提案があります!!」


ユウタの提案は一時的に身を隠せる場所に

立て篭もるという案だった。

異形の動向を見ると、中型~大型の異形は人を殺して回る殺戮兵器で小型の異形が死体処理をするように見えた。

人を感知しなければ殆どの異形はその場を立ち去り

先に進む事を最初の進行で理解していた。


「身を隠せる場所か……」

「いい場所あるぜ!!俺様のたまり場だった

倉庫は窓がねーし、扉も頑丈だ!!すぐ近くだぜ!!」

「お前さ……もっと早く言えよ……」

最初からそこを提案してくれと呆れるリョウヘイ。


ウズキの提案でユウタ達は倉庫に向かった。

幸いにも扉は閉まっていて異形も入った痕跡は

なかった。


倉庫に着くと異形はあっという間に進行して来た。

全員声を押し殺して倉庫の中央で固まる。


倉庫に響く異形の足音は激しさを増し

入って来るんじゃないかという不安に

震えながら、足音が過ぎていくのを待った。


「はぁ……だいぶ静かになったな……」

「よし!大丈夫か外を確認してくるぞ!!」


セイヤとリョウヘイは立ち上がり

外を確認しに行こうとし扉を開けようと

した時だった。


ザンッ!!


倉庫の頑丈な扉を突き破る尖った何かが

リョウヘイの肩を掠めた。


「ッ――」

「リョウヘイ!!」


尖った何かは引っ込んでいく。


「先輩!!扉から離れて!!!!」

ユウタはセイヤが声を発したことで

もう一撃が的確に来る事を察知した。


ザンッ!!


ユウタのおかげで間一髪で異形の攻撃だと

思われる物を回避出来た。


ダンッ――ダンッ――ダッァァァン!!!


今度は扉とは反対の方向から激し衝突音がした。

振り向くと崩れた壁と甲殻類の様なゴツイ異形が

倉庫に入り込んでいた。

扉を貫通してきたのはこの異形の槍の様な爪だった。


レイは木刀を持って槍爪の異形に立ち向かう。


「やめろ!!レイ!!今までの異形とは違うぞ!!」

「大丈夫!!コアさえ仕留めれば――」


カッカッ!カッ!


異形の爪とレイの木刀の当たる音が鳴り続ける。


「輝義志先輩!!助けに行かないんですか!!」

「俺が行ってもレイの邪魔になるだけだ!!」

「なんで!!――先輩が行かないなら俺が!!」


ユウタがレイの元に行こうとした時、

顔が地面に着いていた。

リョウヘイがユウタを取り押さえていた。


「見ろ……お前はあの異形の攻撃の速さに対応出来るか……?それにただの木刀が折れないのも上手くいなせるのもレイの技術があってこそだ……、俺達じゃあの異形に太刀打ち出来ない……」


「でも……雪ヶ原先輩が……」


カンッ!――カランカランカラン……。


甲高い金属音が鳴ったと同時に異形の動きが止まった。


「あっ……当たった……」

ウズキが投げたメリケンが異形のコアに

運良くヒットした音だった。


「ハァ……ハァ……ハァ……」

レイは膝を地面に着けて息を切らす。

無呼吸で気を張りつめ異形とやり合っていた。


「お前……」

「へへーん!やってやったぜ!!」

「レイに当たっていたらどうするんだ!!運良くコアに当たったから良かったものの、外れてレイの集中力が途切れていたらお前はレイを殺していたかもしれないんだぞ!!」

「落ち着け!リョウヘイ!!」


ウズキに飛んだのは賞賛では無く怒りだった。


「大丈夫よ……ありがとう蘭闘君……

あのまま戦っていたらどの道危なかった……」

「そ、そうか……なら、良かった……」

「でも、次は大丈夫よ……私を信じて、それにあなたのした行動で私が死んだら後味悪いでしょ?」

「分かった……悪かった……リョウヘイも悪かったな……もう出しゃばらねー……」

「呼び捨てにするな……、まぁ分かればいいさ」


倉庫に差すオレンジ色の光。

暗雲の空から差すオレンジ色の光が

太陽が沈む事を告げていた。


ザスッ……ザスッ……

扉の方にいた先程と同じ槍爪の異形が反対に周り

倉庫に入って来た。


「一難去ってまた一難ですね……そろそろ離してもらっていいですか風桐先輩……」

「お前は分かって無さそうだからダメだ……」


「次は俺が行こう!!レイはゆっくり休んでいてくれ!!」

「セイヤ……死んじゃダメよ……」

「心配するな!!一発仕留めて来るさ!!」


セイヤは木刀を持って異形の元に走り振りかぶる。


「グォッ――」


槍爪の異形は爪で薙ぎ払い、セイヤの脇腹に当たり

吹き飛んでいく。

うずくまるセイヤに爪を向けて勢いよく

突き刺そうとした時、こめかみに触れたところで

槍爪の異形の動きが止まった。


――――


「今日は終わり……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る