4-⑶

 あれから、絢とは音沙汰無しだ。数学の教科書に掛けているブックカバー、小学校の時に絢からもらったものを、ずーっと大切に使っているが、もう色あせてきていた。


 あの時、僕は間違っていたのだろうか。絢は話も聞かないでと言っていた。なんか事情があったのだろうか。手も握らないって、勉強してばかりで二人で遊びにも行ったこと無かったし、そんな機会も無かったじゃーないか。あいつだって、こっちの状況も聞こうとしなかったじゃぁないか。いや、そんな言い訳よりも、きっと僕にはその勇気がなかったんだ。あんな別れ方だったので、後悔ばかりで・・・。何度も、電話しようと思ったが、絢も本音は気性の激しい部分があるのわかっているからとか、そのうち、考え込むばかりで面倒になってしまった。


 僕は、勉強と水泳の部活に毎日、一生懸命に打ち込んだ。絢のことを考えないように・・・。

 

 3年生の冬を迎えていた。大学受験の準備に追われていた。あの国立大学の海洋学部と私学の水産学部に絞っていた。でも私学には行く気は無かったけど、事前準備のつもりで受けてみるつもりだった。

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