4-⑵

 中に入ってゆくと、絢が教科書を広げて、ノートに何か書いていた。隣に座っても、なんの反応も無い。完全に不機嫌な証拠だ。なんの話もしないまま、30分も経っただろうか、絢が突然、


「考えることがあるから帰る」と言って片づけて、出口に向かった。


 僕は、後を追いかけて、表に出たところで


「待ってよ、絢 話がある」と言って呼び止めた。


 後ろから声をかけて


「最近、年上の男のグループと遊んでいるって聞いたんだけど、大丈夫なんか」


 絢は急に振り返って、僕の胸元を突いてきた。同時に


「モト君こそ、なんなん?いづみチヤンと仲良く話していたやんか、ウチが来る前に待ち合わせしてたん?」

「ウチの話も聞かないし、今まで、ウチの手も握ってくれたことも無いくせに、なんでそんな風に言われやなあかんの」


 と言い放って、駅に向かって走って行った。


 留メ具が外れてしまった。


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