3-⑶

 中学になって最初の土曜日、図書館で絢と待ち合わせをしていた。絢はバッグを肩から下げてやってきたが、その肩紐のところには二つ連なった青と赤の蝶々のお守りを付けていた。京都の神社のもので、僕が、絢の2月の誕生日にプレゼントしたものだ。


 僕は水泳部に入部した。兄からはサッカーの勧誘をされたが、僕は海に興味あったから、という訳でも無かったが。絢は美術部に入ったみたい。これからは、土曜日も部活とかであんまり会えないネ、とかで1.3の日曜日という約束した。確かに、その日は、お互い教科書も違って、一緒に勉強しているという意味が無かった。


 それからは、日曜もどっちかが用事あったりで、だんだん会うということが無くなって行った。中学の3年間はそんな調子で、高校も二人とも、もう一緒の学校に通うということをあきらめていたので、それぞれ上の高校に進んだ。


 高校に進んでからも、お互い学校行事など忙しくなり、月に一度会っているかどうかという感じだつた。

  

 夏休みの7月の末に図書館で待ち合わせをした。その時に、僕は海洋に興味があり、南の方だが地方の国立大学に進もうと思っていると絢に打ち明けた。絢はそのまま今の学校の大学に進むつもりだったらしく


「ふぅーん じゃぁ ウチとはもっと会えなくなるんちゃうのー」


 絢が機嫌悪い時はわかる。机に向かって何かを懸命に書き始める。


「絢も一緒に受けようよー」と言ったが


「そんなこと、親に許してもらえるわけないやん。ウチは行かれへんよー」


 そのまま、その日は一言も話しをしないまま別れた。


 その後、夏休みの間も会わなくなっていた。絢と僕をつないでいた留メ具が外れかかっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る