001-3 七芒星の苦悩
無限のBBQ案件後日、対魕組織「アンチテーゼ」内の最高幹部、一画、二画、三画、四画、五画、六画、七画からなる七芒星「ヘプタゴンズ」にて。
「今回の件を考慮してだが、トラウマメーカーはレベル2でも扱える様に改良できんのか?」
「それでなくとも、レベル3の人間が使用して5割近くが負傷するのはどうにかして欲しい。あまりにも酷いぞ」
「いやぁ、トラウマメーカーは、レベル3昇格への一指標に、なってますしぃ...」
「爆発を受けて再起可能だったらレベル3に昇格というシステムですね。確かに今まではそれで良かったですが...現状は変わりました」
「魕、せせらぎの一派がこちらへの干渉を強めてる。人員が足りない。運用でも試験でも爆発して人材を削って貰うと困る。トラウマメーカーはいくらコストが低くて、生産が容易いだとしても、人材を集めるのは結構骨を折る」
「特にスキンケアの部隊は常に在庫が足りてない、スキンを作るのにどれだけの負担がかかっているか。システィナの祈りも有限だ。これから戦闘が増えるとしたらあちら側に更に負荷がかかるのは当然。システィナの補充も今後の課題だ」
「と言った現状で、携帯できる装備の中でも上位にあるトラウマメーカーがレベル3しか使用できない、というのはかなり大きな問題なんだよ。技術者の苦悩は解るが、現場はそうも言ってられない。早急にどうにかしてくれないか?」
そう問われた先に居たのは、白衣を着ている男性は尋常じゃない量の汗をかいている。目の前の7つの人影に怯えまくってる。
「ト、トラウマメーカーのシ、システム上ですね、そ、それは難しぃぃぃぃくてぇぇええ」
「落ち着け」
「五月蝿い」
「力むな」
「今にも倒れそうだな」
「いつもそんな感じなのか?」
「お前から調整した方がいいんじゃないか?」
「はぁ、続けてください......」
「はは、はははいいぃぃすみませ、せん」
「謝罪はいいから、説明をお願いします」
「そ、その、ト、トラ、トラウマメーカーは、熱エネルギーを運動エネルギーに直接へんかかかんんんできるぅうう、ものでしてええ」
「...」
「...」
「...」
「...」
「...」
「...」
「...」
「すすすsss
「謝罪はいらん」
「はいぃ、そのシステムのお陰でぇええ、火薬を必要としなく、なったぁああためぇええ......
バタッ!
「...嘘だろ」
「倒れる時も五月蝿かったな」
「開発者だからと呼ぶべきではありませんでしたね」
「説明できる奴を探さないといけなくなった」
「問題の開発チームの中では会話できる方だと聞いていたが...」
「正しくは、言葉を話せるだけで会話ではなかったな。しかもその言葉も怪しい」
「...常に異常な先進技術を取り扱っているとは言え......開発チームの殆どがこの様に当てられているのなら、現場の声が反映できないな」
「そこも要検討ですね...」
十数分後、代理招集
「トラウマメーカーの開発コンセプトは''環境に影響されず、常に高火力を放てる''と言うものです。その為、我々は熱エネルギー変換技術とエネルギー質量化技術を使い、火薬と弾丸の要らない銃を作りました。撃てば撃つほど熱エネルギーが溜まるのでそれも利用し、徐々に威力が上がり無限に撃てる銃の開発を目指して」
「だが、実際には撃てて6発と...」
「はい。理由としましては初弾を撃つ際に熱量が足りず、発熱装置を外付けしないといけなくなりました。それには火薬が1番最適なのですが、それでは本末転倒。なので付近にある熱を発する物質と遠隔で頂戴し、そこからエネルギーを補給するようにしました」
「...」
「それがあのトラウマメーカーの前身である、トラブルメーカーです。発砲すると使用者の体温を一瞬で奪い、100%の確率で凍死させるアレです。テスト運用で何人死んだかは、過去の報告通りです」
「あれは酷かったな...」
「なかなか新鮮な映像だった」
「一発目でなぜ止めなかったと、管理者を処分したやつか」
「はい、それです。これではいけないと、頂戴先を変えることにしました。使用者の体温では威力も安定しないので。常に安定しており、近くにあり、高温なもの、我々はそれを探した結果、導き出された答えは...地球です。地球の熱量からすればトラウマメーカーの蓄熱量なんて些細なものですし、高火力を安定できます。これで全て解決したという訳で、我々の最新技術を詰め込んだ携帯兵器のトラウマメーカーは完成しました。その出来栄えに関しては、これまでの携帯兵器の中でも指折りだと自負しております」
「だからあそこまでの火力が出せるのか...」
「いくらなんでもトカゲの作った肉を1発で焼けるのはおかしいと思ったが、そういうことか......」
「報告書にはそう書いてありませんでしたが?」
「それは、最新技術故に現代の文字と言語化するのが難しい為です。他にも我々が現在取り扱っている技術の大半は、会得した際に発狂する危険性を孕むものが多く危険というのもあります。実際、研究員の中には魕になりかけた者、そうでなくとも人語が喋れなくなった者、最悪のパターンとして魕になる前に終了された者も多数居ます。そのような危険物にヘプタゴンズの皆様を触れさせるには...」
「危険性があるというのは知っていたが...それはてっきり、我々が触れると発動するタイプの物を取り扱っていると思っていたが...」
「現に説明出来ている」
「そういった簡易的な説明すらも出来ないレベルだと思い、触れてこなかったのに...」
「今のように、要約した説明なら問題ないのですね?」
「は、はい。詳細な仕組みは言語化出来ませんが、簡易的なものでしたら文字でも書けます」
「嗚呼」
「はぁ、」
「呆れたな」
「ここまでとは...」
「どうしてくれようか...」
「いくら特異な者を集めたとは言え、これは...」
「次からそうしてください。今回は我々にも至らぬ点があったということで不問で」
「問題はこれをどう解決するかだな」
しばらくの沈黙
「器をどう処理したとて、地球という貯水槽から補充されるなら破壊される、そうだな?」
「はい、おそらくはそうなります。元々、リミッターの類を使用するつもりはなかったのですが、今回の件を受け現在、簡易的ですがシュミレーションしたところ...いくらリミッターやセキュリティをかけてもそれらを破壊しますね、地球の熱は」
しばらくの沈黙
「新兵器開発の方が早いな」
「賛成」
「同意」
「賛同する」
「異議なし」
「異論の余地も無い」
「では、その方向で行きましょう。開発チームには新たな携帯兵器の開発を早急に、と。あ、ちゃんとレベル2でも扱える様にですよ?」
トラウマメーカー会議終了。
即座に次案件の会議を開始...
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