001-1,事案「ひとり鍋パーリー」
山奥の小屋に死体があると通報があった。その遺体を一言で言うなら、「嫌悪感を覚える」だろうか。慣れてなかったら見た人全員吐き気で窒息しそうになるだろう。いや、これに慣れてるヤツなんているのか?そんなヤツこれ以上の化け物だろう。
「人間どれぐらい悪事を働けばここまでなるんですか?」
「そうですねぇ、人食っただけではこうならないと思いますよ。近親相姦を追加したら行くかも」
「だったら何処ぞの一族だったらこれぐらい行きますかね?」
「ああ、あの一族ですか人喰いの。エグい方法で処刑されましたけど、遺族としては足りないんじゃないですかね、あの程度じゃ」
「あの地域、処刑法だけでも恐ろしい程ありますしね」
さて、ここまで言われる問題の遺体はどのような様で死んでいたか。それは自分の腹を料理して味見しながら死んでいた。カセットコンロを腰に当てる様に寝そべって、腹をかっぴらいて臓物を鍋で煮込んでやがった。
「一応、出血性ショック死らしいですよ」
「そうなの。これじゃ死因わかんないですよね。ご丁寧に調味料まであるし」
「しばらく鍋食べれませんね、これ」
「ご飯を食べる気すら起きませんよ...このままだと私栄養失調で死んじゃうかも」
「こうゆうのこそ無人機でやれよって思いますよねぇ。ホントに死活問題ですy...」
「グルルグュルググルルグュルルグュグュググル」
突然死体の腹の中の物が動き出した、と思った矢先溢れ出てきた。有り得ない。遺体の臓物が増えるなんてこと、有り得るわけが無い。人間一人分の中身しかないんだから。
「ぶっちゃああああぐるゅぐぐゅるゅるゅゅゅ」
あまりの勢いに中身が起き上がる。骨が見えた。肉は脈打ち、血が飛散する。
「な、なんですかこれ!」
「...」
「え、田中さん?」
「グルルグュル」
「た、田中さん!!!???」
田中の顔の穴という穴から血が吹き出し、目玉や歯が抜け落ち、そこから更に訳の分からない肉がボロボロ出てくる。
「ん?なんだ、また人間か?相変わらず食いごたえなさそうな奴ばっかりだなぁ、お前らは。まあいい。今は兎に角、腹に何か入れたい」
トカゲ...だろうか?辛うじて似ているものは。デカい、屈んでいて分からないが、それだけでも2.5m以上はある。後脚2本で立ち、喋っている。所々に骨が見え隠れし、体毛もある。とても爬虫類とは言い難いが、トカゲというのが全体のイメージにあっている。
「ズシャ、ズジュジャッ」
一緒に来ていた調査員がよう分からない何かで刺されている。持ち方と使い方、単純化した全体像が棒ように長く、持ち手らしき場所が短いから、刀としておく。その刀はまるでホヤの様に長く伸びた肉に穴が空いており、呼吸おするかのようにそれぞれで動いている。刺した箇所にある穴は伸びて血を啜っている。
「ズルルッ、肉は新鮮に限るな...」
トカゲの化け物が持っている刀に刺された肉は、どうやらどれだけ経っても脈打ち成長し続けるようだ。今もトカゲの化け物が口に入れた肉が盛り上がって口の隙間から出てきた。
「あ、ああ、ああ」
「なんだ?お前も喰いたいのか?」
腰が抜けて逃げることもできない。トカゲの化け物が段々と近づいてくる...
「おら、喰えよ」
無理やり口を開かれた。と言うか、顎を砕かれた。皮膚で繋がっただけの顎では口を閉めることも歯ぎしりもできない。そこに肉を詰め込まれる。
「ウグゥッ」
肉が上にも下にも伸びて...息が......く、苦しい
「おいおい、お前死んじまうぞ?」
グサッ
死ぬ、この場から解放されるその直前どうやらあの刀に刺されたらしい。窒息する苦しさと、成長痛を何十倍にもしたような痛みが延々とつづく。その時、今まで経験してこなかったような激痛が走った。
「お前も食いごたえねぇなぁ」
成長し続ける肉で溢れかえったこの小屋は、まるで母のお腹の中のような心地であった。
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