第5話
「地球が揺れてる」5
河川敷から土手へ上がりこのまま車道へと降りた。
「さすがデフロック四駆は違うな!」
「めっちゃ揺れる!」
二人の乗る車は古いランドクルーザーである。
まだ東京都内だというのにこの辺りは農園があり住宅街が少なくなっている。
廃墟化した運動公園の駐車場へ入った。
「今日はここで車中泊ですか?」
「いや、思い出の場所だから寄ってみた」
「この辺りに住んでたんですか?」
「いや、あ!あった」
ゴミタロウは落書きのある壁を指差した。
「あの絵は俺と友達が昔に描いたんだよ」
「大きい!何の絵ですか?」
「アルファベットを崩して絵にしたんだよね」
「解らないけど凄いですね」
しばらく二人でその絵を眺めた。
「俺の名前はゴミタロウじゃないんだよ」
「知ってますよ」
「五味晋太郎が本当の名前だよ」
「ぷ!ほぼゴミタロウですね」
「しんがある!真ん中に晋な!」
「私は渚が本当の名前です」
「本名か」
「はい!海野渚です」
「奇面組に居そうな名前だな!」
「奇面組ってなんですか?」
「知らないのか?ジャンプで一番売れた漫画だぞ!」
「何年前ですか?」
「三十年位たつのかな?」
「晋太郎さんは何歳ですか?」
「43歳」
「え?」
「渚さんは?」
「25歳です」
「……」
「見た目若いですね」
「フォローになってないぞ」
「いや、でも、ほら、大丈夫ですよ!」
「何が大丈夫なんだ?」
「思ったより年上だったなって!」
「おっさんなのは自覚あるわ!」
渚は頭を下げた。
「なんで頭下げた?」
「なんとなく」
二人は笑った。
点々とある住宅は雨戸が閉まっている。恐らく自衛隊の救助を待っているのであろうと思った。
農村地帯を過ぎて山が近くに見え始めた。大きなスーパーマーケットや薬局やホームセンターがあるが全て閉まっている。街には人っ子一人居ないのである。
「なんかおかしくないか?」
「皆非難してるんですよ」
「だとしても街に放送が流れていたり警察車両が出てたりすると思わない?」
「あ!確かに静かすぎますね」
そんな会話をしながら大企業の工場地帯を走り大手電機メーカーの工場の駐車場を見て愕然とした。
自衛隊の基地が設置されていて車両や避難所があるのだが数え切れないほどのゾンビが敷地内を徘徊していたのである。
晋太郎はアクセルを強めてその場を走り去った。
この辺りに住む住人は全てあの避難所に非難したが避難所内で全てやられたのであるー。
「マジにヤバいな!」
「自衛隊も全滅?」
「迅速に動いた結果、全滅したんだろうな…」
「本当に終わりかな…」
「俺の家はこの近くだから取り敢えず行こう」
「大丈夫ですか?」
「多少は安全だと思うぞ」
晋太郎は運転しながら“本当に世界は終わるかも”と思った。最期に知らない女の人を助けられたということで自分の人生は満足しなくちゃなと思った。
晋太郎の家は住宅街から離れていて短観パイプで柵が作られていて大きな木がたくさん積まれていてユンボが停まっていてプレハブみたいな外観をしている二階であった。
「工事現場みたい!」
「材木置き場と家が敷地内にあるんだよ」
二階の住居内は普通のアパートみたいになっていてアメリカンカントリー風な部屋でおしゃれであるー。
「適当にしていてくれ風呂入りたかったらあっちだからな、俺は外でちと作業するわ!」
そう言って外に出て行ってしまった。
窓から見ているとユンボが動き始めた。
積まれた材木を入口から並べ始めて敷地の外側に材木の壁を造り始めていた。井桁みたいにユンボで積み重ねている。
しばらく見てから渚はシャワールームへ入った。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます