第4話
「地球が揺れてる」4
大通りにはあちこちで事故が起きていてビルや住宅街には黒い煙があちこちから上がっている。
人が人を襲っていて警察も構わず銃を撃っている。機動隊も取り押さえてから頭を撃ち抜いている。
ゴミタロウはスピードは出さないで荒川の河川敷へ車で上り立ち入り禁止の遊歩道を車で走っている。河川敷は人気が少なくてスムーズに走行出来ている。
「どうなるんですかね」
渚は揺れる車に舌を噛まないように言った。
「さぁね」
ゴミタロウは公衆トイレ横の自販機前に車を停めた。
周りを警戒しながら渚を車に残して降りた。自販機から飲物を手当たり次第買い漁って車の中へ放り込んだ。
「飲物はたくさんないとな!いつ何があるか解らないからね!そういば運転できるか?」
「免許はありますけどこんな車運転出来ないですよ!」
「後で練習しような!」
「え~!」
「俺が死んだら渚さんが運転しないとだからね」
「なら死なないでくださいよ」
「そんなのは解らないよ。さっきの街見ただろ?生き残る方が難しいぜ」
「夢見てるみたいです」
「普通は受け入れられないよな…」
「ですね」
空は朱色に染まりいつの間にか星が出始めていた。
その日は郊外まで河川敷を走らせて人気のないススキの中へ車を停めた。
「取り敢えず車中泊だな!」
「……」
「どうした?」
「ゴミタロウさんも…」
「なに?」
「こんな人気の無いところに連れ込んで…」
「なにその言い方!」
「だって!」
「あのな!街中は危ないだろ!しかも俺は潔癖症だしね!レイプなんてしねぇよ」
「冗談ですよ!」
「こら!!よくこの状況で冗談言えるな!」
「なんかゴミタロウさんと居ると安心感があります」
「んな訳あるか!清潔な所行ったらレイプしてやる!」
ゴミタロウは後部座席へ移動して後ろで何か始めた。
渚が身を乗り出すと。
ゴミタロウはライフルをケースから出している。そしてコンテナボックスからコンロやカップ麺を取り出してお湯を沸かし始めた。
「それって鉄砲ですか?」
「そそ!」
「ゴミタロウさんは何者ですか?」
「猟師から盗んできたの!山仕事だから食べ物とかは常備してるんだよね」
「だからこんなに大きな車に乗ってるんですか?」
「そういう事」
「私も山歩き好きですよ」
「だからマウンテンパーカー着てるのか」
「そうです」
「キャンプとかするの?」
「しないです!ゴミタロウさんは?」
「俺は虫嫌いだからムリムリ!」
「え?山で仕事してるんですよね?」
「斧でキコリじゃないからな!ユンボで仕事してるよ!ハイテクだからね!」
「自然が好きなんですか?」
「興味ない」
「じゃあなんで?」
「なるべく人間と接しない仕事だからね」
「人間は嫌いなんですか?」
「だな!」
ゴミタロウは携帯用の暖房を付けて上着を脱いだ。
カップ麺を二つ用意して二人で食べた。
腕まくりしたゴミタロウの腕にタトゥーが見えた。
「ゴミタロウさんもタトゥー入れてるんですか?」
「若気の至りな」
「どんな絵ですか?」
「キースヘリング」
「え?それホントですか?」
「うそ!」
「見せてくださいよ」
「やだよ!」
「嘘つきケチ!」
「嘘つきでケチって!めっちゃダサいじゃんか!」
二人はカップ麺を食べながら笑った。
食べ終わってから後部座席を平にして寝袋を渚に渡した。ゴミタロウは運転席で寝ることにして渚に後部座席を譲った。
カーラジオ
皆さん外出は控えてください。自衛隊による救出活動が始まりました。都内での開始区域、品川区、港区、台東区……
五年前のコロナパンデミックに続く非常事態が起きています。五年前乗り越えられた教訓を活かして国民の皆さんに協力をお願い致します
外出は控えてください。
つづく
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