手鏡を欲する 

ある日の夕方


莉里は鏡を見ていた


「全然綺麗じゃない」


私の顔って、どうしてこうも冴えないのかしら。こんな筈じゃなかったんだけど。元々は私も綺麗だったのに。


どうしてかしら


鏡は、真実を映し出してくれる魔法の道具でしょうよ


ならきちんと私の美しさを映し出してほしい


もう一度見てみる


鏡が水の波紋を打った


えっ!?


そして真っ黒になった


え、え、どういうことかな。私の顔が綺麗なのを理解したから嫉妬をして真っ黒になってしまったのか


鏡から手が出てきた


?!


莉里は顔を掴まれた


痛い。何なの。


莉里は顔を引っ張られ、鏡の中へ引きずり込まれてしまった


後の時の夜、その霊気に気付いた彼は急いでその住まい処の中に入った。


中には等身大の鏡が割れて破片が錯乱していた


「これは。怨念の霊気は少ししか感じないな。とすると、単なるイタズラ的な目的の感情か」


彼は考えた


これは悪霊であるがそれ程の者でも無い


そう悟り、彼は鏡からの霊気の在り方を覚え、自分の手首を手持ちの短剣で少し切り、出てきた血液を部屋の中央あたりに数滴落とした


「これで問題無いだろう。」


そして彼は部屋から出て、帰った


自宅に帰り、彼は電波上の店から急遽、等身大の鏡と手鏡を注文した。


するとそれはもの40分で到着した。


彼はそれらを自室へ持っていき、手鏡を机の上に置き、等身大の鏡を目の前に置いた。


そして儀式を始めた


等身大の鏡の前で数珠を片手に下げ、両手を合わせて祈りながら言葉を唱えた。


そしてあの部屋の鏡から感じた霊気の在り場に意識を繋げ、言葉を唱える


「その人達を返してくれ。元のこちらの世界に。」


すると声が来た


?「いーーやーーよ」


「お前がそっちの主人か」


?「そうよ。私が人々を鏡の中に引き摺り込んで攫っているの。で、閉じ込めているわ。」


スバル「お前はそれが間違いであるという認識はあるか?」


?「間違い?いいえ。間違っているのは世界の方だよ。私は生前にもこうやって手鏡を持って歩いていた。」


スバル「手鏡を持ち歩いていた。それが世界の何が間違っている。」


?「だって皆、私に対して「鏡なんか要らないくらいには冴えない顔だよ」って言ってきたんだもーーん。そうなの無いのにさ」


スバル「何かの勘違いじゃないか。人は貴方にそうな事を言ったりしなかっただろ。そしてそこは貴方にとって薄気味の悪いところでしか無い。早くそこから出て成仏をしろ。」


?「言ってない、ねえ。そうなのかしら?顔の良いお兄さん。」


スバル「当たり前だ。んで、貴方のトラウマの手鏡ってもしかしてこれか」


彼は注文をした手鏡を出した


?「そうそれ!それが私がいつも持ち歩いていた手鏡よ。懐かしいなあ。それ。」


スバル「やはりか。これは貴方の体験を否定しているぞ。」


?「え。そうなの?そうだったら良かったのにーー。」


スバル「信じられないか。本当の事だ。この手鏡は貴方が立派だったと言っている。誰も貴方へ否定の言葉を投げていないと。」


?「そうなの?そうなんだね。ならいいけど。今更ここの世界からは私は返さないよ。ここ、完全に私の世界で居心地が良いんだもん。」


スバル「なるほど。そこが良い訳か。」


?「うん。素敵な所だよ。良かったらお兄さんも来てみるー?」


スバル「そんな事を言っていいのか?お前、俺がどういった存在なのかを理解していないんじゃないか?」


?「え、何か変わっているのかい、綺麗なお兄さん。」


スバル「こうして君と話しを交えている時点で俺という存在が変わっていると分からんのか。まあいい。早くれそちらへ行ってみたいぞ。俺もそちらに連れて行け。」


?「ええ。ならいいわよ。おいで。お兄さん。あ、二度と戻れない様に鏡を後で割っておくからねー。」


等身大の鏡から手が伸びて、彼の体を掴んだ。そしてそのまま鏡の中へ引き摺り込んだ。


スバル「はーん。なるほどな。これが、お前のしてきた事か。」


?「そうだよーん。こうして人を攫っているの。」


彼女は拳を突き出し、彼の鏡を割ろうとした。


しかし、いくら拳を与えても割れない。


?「うっそ!?何で」


スバル「お前みたいなのに破られない様に結界を張っているからだよ。諦めろ。それよりも、貴方がこれまで攫ってきた人々は今どうしてる。ここは真っ暗で何も見えないな。どういった世界なのかもよく分からないな。」


?「貴方が自分のことをとんでもない人なんだって言っていたのってこの事を言っていたのか。まあいいわ。その人達ならあっちにいるわ。」


彼女の指を刺した方向は真っ暗で何も見えない


スバル「ほら、真っ暗で何も見えないんだよ。」


?「ついてきて。美人なお兄さん。」


彼は彼女について行った


しかしどこまでも真っ黒な景色で本当に進んでいるのかどうかすらも分からない。


そうして進んでいくこと少しすると、真っ黒な景色の下の方からエメラルドグリーンの様な色が出てきた。それが明るみとなって周囲を照らしてきた。


すると段々と世界が見えてきた。景色が見えてきたのだ。


家があり、木があり、高い建物もある。そしてここの世界の全ての場所からも霊気は彼女以外に感じない。


というより、鏡の中にこの様な世界が出来ていることが良い意味で驚きだ。何だか幻想的だ。


?「綺麗な世界でしょ?こっちよ。この近くにみんながいるわ。」


すると段々、ある民家のようなところが見えてきた。あれか。


「そうよ。あの家よ!あそこにみんなが捕まってる!まあ捕まえたの私なんだけどさ。」


そう言って彼女はルンルン気分で踊りながらステップを踏みながら民家に着き、ドアを開けた


そこには正気を抜かれてぐったりとしている皆がいた。


「お前たち!」


彼は一人一人の容体を確かめようとした。


?「ムダ。」


「あ?」


?「私が起きない様に魔法をかけちゃったもの。」


「ふざけるな」


?「あら、ふざけてない、まじさ」


彼は一人一人の容体に何かかけられているかを確認した。すると全員の精神に負の感情で作られた鎖の様なものが巻き付いているようだった。


彼はそれを解いた。


?「え 解いた?!」


「お前は何を一々驚いているんだ。解いたぞ。」


すると皆が徐々に活気を取り戻し始めた


その中に莉里もいる


?「えーー」


「フッ。お嬢、あんまり考え過ぎるなよ。俺はこういう者だ。気をつけるんだな。」


彼は皆の呪いを解き、民家の外へと導いた


皆は解放感で喜んでいる


彼女は民家の中でボーッと立っている


彼は安心感で余裕になり、ここの世界の高い建物を見た


何だあれは


見たところ、この世界も明かりができたとはいえ、暗い。この建物の色自体も真っ黒な様で何の建物なのかよく分からなかった。


何だこれ


?「それはその、電波塔よ。」


電波塔?その割には真っ黒であまりそういう感じがしないんだな。


?「えっ そんなことないわよ。これは、電波塔よ。」


入れさせろ。


?「やめてー」


入る


中には何も無かった。螺旋上がりがあるだけだ。


それに乗る


後ろから彼女がついてきているけど気にならなかった


だんだん上がっていく。建物の、上の方へ。


すると上に着いた


そこには大人の男性がいた


雰囲気がおかしい


白髪で目の動きが空で焦点があっていない。


何だあれは


?「あー、バレちゃったかあー。この人が、ここの世界の管理人だよ。」


管理人?あれが


?「うん。あたしのような怨霊もちゃんと受け入れて上げてくれる人だよ。」


俺の目にはただの変な大人の野郎にしか見えないんだが


するとその男性は彼を見てニイッと微笑み


男「良いなあイケメン」


そう言った。そして表情や体付きなどが正常になった。目は焦点が合い、背筋も伸ばしている。


?「えっ?!そんな感じになれたの?!」


「お前は今まで知らなかったのか」


男「初めまして。私はここの世界の管理人です。よろしくお願いしますね。」


「なあ、管理人さんさ、貴方はどうしてここの世界に居るんだ?」


男「え、どうして、と言われましても。スポーツジムの資料を探っていたら、ここにいたのですよ。」


「スポジムの資料を見ていてここに来るものなのか」


男「おや。疑う気持ちは分かりますが、残念ながら私は本当の事を語ったまでですよ。」


「これは。貴方に訳アリだぜ。あのさ、そのスポジムの資料に変な呪文みたいな言葉が書いてある部分がなかったか」


男「ああ!ありましたねえ。何だろうなって思って見ていました。それが何か」


「それなんだよ。貴方がここにきた原因は。」


男「何と?」


「それな」


彼は肩と表情を落とした


「それな。俺が書いた言葉。こういったところへ行ってそこの王になる事ができる。」


男「えー!遊びで作っていたのですか!」


「そうだよ。遊びで作った。それを何処かの電子ページに挟んで面白がって様子を見ていた。大事にはならんだろうとな。なったらなったで俺に金が入る様な事が起こるだろうと思ってな。まさかこうなってしまうんだな。」


彼は落ちている


男「まあいいではないですか。僕も理由が分かったし、王になる気など無いですし。」


男「いや少し待てよ?君のお金にって、こういう事でって事は、その風貌も」


男「まさか君は少年霊媒師のヨイガ スバルくんか」


スバル「ああ。そうだよ。俺はスバルだ。ヨイガ スバル。」


後ろにいた彼女が「えーーっ!」「どうりで私の魔法が効かなかった訳か」と言っていた様な気がした


そうだ。君の魔法など俺には効かない


それならこの男も元は単なる人間だ。


こちらの世界から救う。


スバル「貴方もついて来い。」


男「うへい」


スバル「また何か気が抜けたか。何でそんなに気が抜けるんだか」


男「特に理由などありませんよ。癖です。酒を飲む様になってから偶にそうなるのが趣味でして」


スバル「なるほどな。そりゃお大事にしろよ」


三人は螺旋から下へ降り、建物を出た


外へ出て、皆が項垂れていた。縛られていた分、疲れていたのだ。


スバル「お前らこれから家へ帰るぞ。ここの世界を出る。」


えっ?!


マジで?


そういう安堵の声が聞こえてきた


スバル「そうだ。ここを出るぞ。俺について来い。」


?「そうはさせないよ。」


スバル「あ?何だ急に」


?「貴方達はここから出させないよ。だってそれだと私が寂しいんだもの。」


スバル「寂しい訳無いだろう。お前は成仏すればいい。」


?「いいえ。寂しいの。だって寂しくなって、また私の顔が歪む。」


スバル「顔が歪む?」


?「そうよ。私の顔は悪くは無い筈なんだけどいつの間にか変になっていって、鏡を常に確認する様になっていつも手鏡を持ち歩いていたの。生前。」


スバル「その様だな。それが、成仏出来ないことと何か関係があるのか?」


?「有るんだよ。そのせいで私は顔が分からなくなった。何で生きてるのかさえも。手鏡が割れるようになった。それで生きて行けなくなって」


スバル「自殺をした、訳か。あのな、説明がなされていないぞ。顔が分からなくなったのは何故。分かるだろ。手鏡が割れたってのも変だね。」


?「だって私の顔を見ているうちに段々、私ってそんなに美人じゃないんじゃないかなって思うようになったんだもの。」


俺はまるで女性へのアドバイザーか


?「そうじゃないの?!だって貴方かっこいいもの。どこのどんな女子が見ても綺麗だなって思うわ!ねえ、私の顔は、醜いのイヤ」


スバル「そうなことない。貴方の顔はきれいだよ。」


?「そう、だよね」


スバル「当たり前だろ。世界のみんなが貴方に対してそう言った」


?「うん。うん。なら私も成仏出来るんだけど」


スバル「安心するのだな。」


?「うん。そうか、私はスバルさんの目から見ても美人なんだね。」


スバル「そうだよ。自信を持ってね。」


?「はい。お陰様で成仏出来そうだわ。」


スバル「それは良かったよ。そういえばどうして君は死んだんだ?」


?「首を切ったの。手鏡を割って、その破片で」


スバル「やっぱ手鏡が割れたのはお前のせいか。」


?「そうだよ。そうなんだよ。それ以降からは同じく手鏡を持つ人は何だか自分の顔に自信があるみたいで憎くて憎くて、こちらに引き摺り込んだの。」


スバル「なるほどな。いや待てよ。」


?「えっ まだ何か納得できないのでもあるの」


スバル「有るんだよ。何で君はここの世界に来たんだ?死後、いきなりだろ。」


?「え、何か、気が付いたらここの世界に来ていたけど、何か変?」


スバル「変だ。ここの世界はお前が来る前からあったのだという推測が立つ。」


?「? 私はまあ、目が覚めたらここにいたから何とも言えないけど」


スバル「という事はだ。ここの世界は誰かが作ったって事になる。自分が作っていたら自分が作っていたものだと分かる筈だ。」


?「そうなのね。うん。私じゃないわ。ここを作ったの。」


誰だ


そういう疑問がスバルをよぎった


スバル「ともあれ、お前は成仏しろ。俺は皆を元の世界へ戻す。」


?「ええ。じゃあ、またねスバルさん。イケメンさん。死んだ後に結婚でもしてね。」


スバル「」


彼女は溶けるように消え、成仏をした


なるほど。どうやらここはあの子の作った世界じゃないってのは本当の事だった様だ。彼女が成仏しても消えない。


スバル「お前ら、行くぞ。ここから出るぞ。」


みんなはスバルの容姿に見惚れながら彼について行った


こちらに来た時の出入り口に着いた


皆は安堵の表情をしている


スバル「では、今からこちらの世界を抜けて元の世界に帰るぞ。」


スバルは数珠を片手に下げ、両手を合わせ、言葉を唱える


すると目の前の空間から穴が現れた


その穴から光が差し込んでいた


つまり、元の世界は今昼間であることが伺える


安心の光だ


皆はさらに安堵をした


そしてスバルは皆に穴に入るように促した


皆が穴の中に入っていく


最後の一人まで入り終わったところで


スバルは穴を閉じた


皆は驚いた


「あの男の子、あの世界に閉じこまれちゃったんじゃないの?」


「そうだと思うな。あの子が自分の手で閉めていたように見えたな。何でだろ」


「まああの子は何か大丈夫そうな感じがしたね。」


話している


莉里は考えていた


莉里「そういえばあの子って、あの有名なスバルくんか.....?」


ボソッと呟いた


あの風貌を見た時にかっこいいなって思ったと同時に何か覚えがある気がした。あの綺麗な黒髪と赤い瞳。綺麗な顔立ち。それは紛れもなく見たことがあるような気がした。確かあれはヨイガ スバルくん。若い霊媒師の子だ。容姿才能共に完璧な霊媒師で有名だ。


そんな子が何故ここに


あの幽霊の子か?


いや確かにそうだったんだけど


そんな事まで感知できちゃうのね。鏡の中なのに。


莉里は感心をした。


なるほどね。あの子はかなりのやり手なのかな。何だか、恋をしちゃいそうだなあ。


莉里は顔を赤くした。


また、スバルさんへ会いに行こうかな


あ、その時はちゃんと自分の顔に自信を持ちたいな


そうしてスバルは一人、鏡の中の世界に残った


鏡が閉じられたのだ


自分で閉めたのだ


彼はこれからどのようにするつもりなのだろう


スバル「これで、良い感じに俺一人になったな。これを待っていたんだ。これで、遠慮なくこの世界の主が誰なのかを探索できる。」


躍起になった


さて。どこから探そうか。まあ、全体的に見て霊力を感知するのが一番良いよな。


どれ。


どれ。


ほう


あそこか


スバルはそこへ向かった


周りの景色が妙に暗い


淡い緑の光を保っているが


スバルはその景色に何か思うところを感じた


これは何処かで見たことがあるような気がする


何だったかな


気のせいか


にしてもこの世界は何なんだ。本当、暗くて不気味な世界だな。


何だここ


誰の怨念なんだ


誰の


ーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーーーーー


まさか


あの女子、莉里の姉だ。


そいつがここの世界の主だ


彼女の姉に会いに行こう


スバルは怨念の在りどころを探った


とある所から強烈な怨念を感じる


その事に対して何か違和感を感じたが


行く


進みながらスバルは考えていた


何故、俺の霊感がこれ程までに強烈な怨念を先程までも感知できなかったんだ。あの部屋に行った時に鏡が割れて破片が錯乱していたからか


いや。それでもおかしい。何でこれ程の怨念が感知出来なかったのだろう。普通ここまであからさまだったら俺は分かる。


何者かによって霊感が塞がれていた?


何者だ


何故だ


何故だ


ーーーーーーー


ーーーーーーー


ーーーーーーー


まさかとは思うが


スバル「閻魔大王!貴方か?」


何も聞こえてこなかった


スバル「閻魔大王!貴方が俺の霊感を防いでいたのだろう?」


するとスバルの頭の中に響くように声が聞こえてきた


閻魔「いやいや、そうなつもりじゃなかったぞ。」


やはり貴方か。どうして俺の霊感を防いだんだ


閻魔「それはその、スバルが何となく、気分悪くなってしまうかなと思って」


そんなの何時もの事じゃないか。霊感の感知くらいさせろよ。


閻魔「いや、それをやるなと言われていたんだ。あの者に。......はっ」


やはりか。誰かに口蓋されていたのなら話は分かる。誰がやったんだ?


閻魔「それは言うなと」


いいよ。言いな。今更だろう。俺の前だから言いな。


閻魔「では話そう。この世界の主がお前のことを嫌がっていた。気づかれたくないからって。しかし気付いてしまった。」


なるほどな。そういう事か。あの部屋、何となくそんな感じがして俺の血を流しておいたんだ。でなければあんなことが起こる何で考えられないしな。鏡が割れて錯乱していたし。


閻魔「君の血で主が困っていたぞ。浄化されてしまうと。そして鏡が割れていたのは主がスバルをこちらに来させないための呪いだと思ってくれ。」


ああ。そうだろうな。


閻魔「君の霊感を塞ぐのは難しかったよ。スバルはやたらとそれが人間離れしているし、防いだと言ってもあの部屋の中とさっきまでの2回だけしか出来なかったのだぞ。」


スバルは顔を上下にさせて相槌を打つ


そう話しているうちに着くようだ


前の方に建物が見えてきた


一軒家のような建物で、周りは庭で自然がある


スバルは入る


すると目の前に仁王立ちをしていた大人の女が待ち構えていた


スバル「お前がここの世界の主か。」


「ええ。そうよ。貴方はあの子を成仏させたわね。」


スバル「ああ。そうだよ。お前も成仏しろ。それをしていないってことは、何か未練があるんだな。」


「あるわね。だって私はモデル体型で何時も鏡を見るのが好きだったのに、それを疎ましく思ったバカが私を切り殺したのよ。」


スバル「それの、何が未練なんだ」


「だって急に殺されて意味わからないし、不当じゃない。だから世界を作って私と同じで鏡を見る人たちを攫っていったの。その最初があの子よ。」


スバル「あの子か。成仏したが。」


「そうよ。その子。あの子は私と境遇が同じ感じだった。私はあの子に「鏡を見ている人達を攫ってね。」って教えた。そしたらあの子は人をたくさん集めてきて。」


スバル「この街もできたって訳か。」


「そう。私の怨念で出来ているよ。中には例外も入ってきたけどね。」


その時に思い出した


この世界は前に流行っていた女性誌に掲載されていた「美しさの黒とエメラルドグリーンのオーロラ」と似ている


それへの憧れの念がこういう世界を作り出したのか


「そうよ。よく分かるじゃない。私はそこまで美意識が高い女性だった。貴方はあの子を成仏させてしまったでしょ?せっかくだったのに。よくも台無しにしたよね。まあ、莉里が来た時は何事かと思ったからその点は良しとして。」


「貴方かっこいいから死んで私と結婚してくれるんだったら成仏してもいいよ。」


スバル「あぁ。死んでやるよ。」


「え!?本当に?!」


スバル「あぁ。俺も死ぬから先に成仏しててくれ。」


「うれしいな。じゃあ、先に成仏しているね!」


今だ!閻魔大王!


すると女にとある巨大な手が伸び、掴んだ


「なにこれ?!」


そして閻魔は女を攫っていった


「騙されたー」


閻魔が「ありがとう。スバル。これでこの者を連れて行ける。」と言った


そしてここの世界が霧のように溶けて消えていく


ことを終えたスバルは自分の体も霧のように溶かしてこの世界から出た


すると元の世界に帰ってきた


懐かしの元の世界だ


太陽光が眩しいが色合い的に夕方だ


スバルは考えてみた


この出来事はとある一人の女性が起こした出来事だ。一人の女性が殺された怨念で事が始まった。そもそも、何故女性は殺されなければいけなかったのだろう?


女性は何も悪くない。それに嫉妬をした者共が、かあ。


スバルは世の中に垣間見える気色の悪さにシラを切った。


考えるのをやめた。世界で起こる出来事は必ず理由があるものだ。しかし分からないという選択を選ぶ方がいいということもある。


俺の中では答えが見えているが、それは考えない事にした。


にしても


スバル「お前はいつになったら帰るんだ」


莉里「だーってスバルさんのお部屋、いい匂いでかっこよくて好きなんだもん。」


スバル「全く。まあ、解放されたばかりだからな。仕方ないのかもしれないが、早く出て行ってくれよ。」


莉里「うん。もう少ししたらね。」


莉里「あと、お姉ちゃんを成仏させてくれてありがとう。」


スバル「知っていたのか。」


莉里「うん。だって、あの世界は何か、お姉ちゃんみたいな感じがしたから。妹の勘、かな。」


スバル「そういうの、あるな。姉は無事に黄泉の国へ行ったよ。今頃はあそこで怨念を浄化されていることだろう。」


莉里「うん。うれしい。そして私もスバルさん好きだから、もっと自分の顔に自信を持つね。だからお姉ちゃんみたいに、手鏡を常に持ち歩いているね。それでたくさん自分の顔を確認して「今日もかわいいね!」ってする。」


スバル「あぁ。良いね。」


スバルはフッと笑った

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