順調満帆

 斯くして魔王と魔女は、マカロニを大いに堪能すると、次にロマネスコ・カリフラワーをペロリと頂いた。

 多くの魂を体に取り込んで力を取り戻した魔王の前では、もはや誰も敵わない。

 彼らを止められる者はいなくなり、ただただ自身を英雄と勘違いした輩が剣を持ち挑んできて、そして敗れる。

 それから、魔王の家臣に下った者たちもいる。元は高名な身分だったり出自だったりの、しかし時の流れを読む力はバツグンの者たち。手土産に親族の首を持ってきた者もいる。なかなかに良い奴らで、よく魂を方方ほうぼうから集めては献上してくれる。


 順調で、且つ単調な毎日だった。

 もう少し時間が経てば、世界は魔王によって完全に掌握されるだろう。

 それはきっと覆らない、確定事項。


 だからかなぁ。

 千代子はほんの少し、刺激が欲しくなってきていた。

 ああ、そうそう。あの禁じられた箱を開けたのも、変わらない修行の毎日に飽き飽きしていたからだ。

 退屈でいると、心がウズウズする。行動を起こしたくてたまらなくなる。人の驚いている顔を見たい気持ちで心臓が張り裂けそうになる。

 それって多分、他の人には理解してもらえないんだろうな。

ほら、魔王様だって驚愕してる。


『我の元から去るだと……?』

「だってさ、もう下僕も沢山いるじゃない。アタシがいてもいなくても、別に変わらないっしょ?」

『…………』

「じゃ、そーゆーことで」


千代子は空飛ぶ絨毯で、再び世界を見回った。



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