第3話 三

 今朝のニュース観ました? 何のことかって? 確かにアバウト過ぎましたね。あれですよ、あれ。

 

『昨夜、午後十一時頃。〇〇区の交差点付近で女性がバイクに乗っていた二人組の男性に、背後からバックを盗まれる事件が起きました。警察によりますと——』

 

 これです、これ。

 怖いですよね、この手の事件。確かに今、貴女は背後が気になってしまっている状況だからこそ余計に不安に感じていることでしょう。

 良い傾向です。

 そうです。背後で何が起きているかなんて、皆わからないんですよ。前方はまだしも後方で繰り広げられているストーリーにまで貴女、いや貴方たちは目が行き届いていないと断言しますよ。

 さあ、そろそろ後ろ、振り返ってみる気になりませんか?

 おっと、その前に今日はまたも後方にいた貴女の心を逆撫でするような出来事が起こっているみたいです。確認してみましょう。

 貴女はいつもの様に出社をして自席に着き、そして朝礼が終わるとスロースタートなりに仕事を進めていきます。

 時刻は午前十一時頃。そろそろお昼休憩が見えてきてどこか気の緩みが出てきました。しかし今日は、今日に限っては仕事が忙しく残業をする事になりそうで、貴女はガクッと肩を落としました。仕方ないです。

私も待っていますよ。

 ここでまたもふっと何気なく前を見てみました。

 またも貴女の一人挟んで前、黒いスーツに身を包む男性社員の姿が目に飛び込んできます。

 あ、今回は前の社員さんは関係ないので安心してくださいね。

 貴女の前方に座っている彼は貴女の同期の社員です。彼は営業職であれば部署も違います。話すことはありませんが、それこそ新人期間の時はそれなりに話す仲だったので、貴女の目に留まってしまいます。

 忙しいということで少々貴女もピリピリしていたこともあり、目の前の彼の行動が少し気に障ってしまったのですね。

 きっと、そうでしょう。

 貴女の同期の彼はあろうことか仕事中に社用PCで某動画サイトをしていました。画面を小さくして隠す様にして。言語道断ですね!

 私はこんな忙しいのに。

 きっと貴女はそう思ったのではないですか?

 でも彼は、貴女が内心軽蔑しながら接している事なんて知らないまま、これから社内生活を送るのですよ。

 そう思うと、貴女の背後にも沢山のストーリーが眠っているかもしれませんね。

 

 今日はお疲れ様でした。長い一日がようやく終わって、現在は夜の七時半。

 入社当初に言われていた「我が社は十八時には完全消灯」という謳い文句は、入社して直ぐ嘘だと知りましたよね。

 貴女はいつものように会社の最寄り駅から実家のある近くの駅まで帰宅する途中です。

 しかし貴女はここで違和感を覚えます。

 会社から出る時からずっと、一人の全身黒色姿の男性が後ろからついて来ているように思えてしまったのです。同じ車両にいる彼ですね。中肉中背の。

 もちろんたまたまという事も大いにありますが如何せん。貴女は今までの経験から少しの警戒心を覚えたので彼を一応視界で取られるように努めます。

「次は□□駅ー」

 アナウンスと共に貴女は車内のドア付近に移動します。そして到着後人の多さを利用して紛れ込みます。

 そして貴女は今作初めての振り向きをすることになります。

 貴女の後ろに居たのは一体?

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