「センパイ、お昼ですよ!」
「センパイ! お昼ですよ!」
ガラガラッ! と私は教室の前の扉を思い切り開ける。思い切り開けすぎてパァンッ! なんて音がしたが気にしない事にしよう。
いきなりの来訪者に教室中の視線は私に釘付け。センパイの彼女として認知されるのも時間の問題かもしれない。そんな中、私は一目散にセンパイの席へと向かう。
「センパイ! お昼ですよ!」
「はい。聞こえていますよ」
「お昼! 私と食べましょう!」
「いつも拒否しても食べるでしょう、あなたは…」
「“あなた”なんて他人行儀やめてください! 優良って呼んでください!」
「すみません、どなたですか?」
「急なランクダウン!」
まさか“あなた”よりも下があったなんて、とショックを受けているとセンパイはバッグの中から私が今朝渡したスープ用水筒を取り出した。良かった、捨ててなかった。
内心ホッとしながら私もお弁当を取り出す。今日のお弁当はおにぎり一つである。センパイが私の渡したお昼をちゃんと食べてくれるか心配で購買に買いに行く暇がないため、家で適当に作ったのだ。
私が取り出したおにぎりに気づいたセンパイは少し驚いた表情をする。
「今日はそれだけなんですか?」
「いや〜、センパイが私が手作りしたお昼を食べてくれるか心配で購買に行く暇ない! って思って…」
「…手作りなんですか? これ」
「え? 手作りですよ?」
「手作り、なんですね…」
センパイはなぜかそう言うと腑に落ちないような表情でスープ用水筒を開ける。と同時に香ってくるお蕎麦のいい匂い。あれ、もしかして朝食べたのってかなり贅沢なんじゃ…、と今更ながらの幸せを感じる。
「いただきます」
「いただきますっ!」
センパイと声を合わせてお昼をいただく。センパイは付属のお箸を使って(こちらも色はピンクである)、お蕎麦を啜る。
その様子をガン見する私。はたから見たら変な人だろう。もうそれは自覚済みだ。
センパイが私の渡したお昼を食べてくれている…! これは実質愛妻弁当…! 愛妻弁当なんだね…!
なんて実感をしているとセンパイからスっ、とお箸を差し出された。
「え?」
「お昼。それだけじゃ足りないでしょう?」
「え?」
二度聞き返してしまった。
いや、言いたい事は分かる。お昼が足りるか、足りないか。それで言ったら答えはひとつである。
足りない。
だがここで重要なのはなぜセンパイがそれを訊ねてきたか。そしてなぜお箸を差し出しているのか。これがカレカノなら話は分かる。もしかして、いいや。もしかしなくてもあれだろう。
しかし私たちはまだ厳密にはカレカノではない。カレカノになりかけの、極めてカレカノの言っていいゾーンに立っている。
「どうぞ」
センパイは悩む私にたった一言、そう行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます