127.蘇りの真実

『……どうやら、失敗してしまったようね』

「うぐっ……」


 そこで、突然オルディネスが苦しみ始めた。胸を押さえながら、地に膝をついてしまったのだ。

 そんな彼の後ろにいるゴーレムも突如動いた。オルディネスの体をその手に掴み、彼をその胸部付近に近づける。


『オルディネスを完全に復活させられたと思ったけど、魔力が足りなかったみたいね。あなた、もう少し眠っていてちょうだい』

「ぐあああああああ!」


 ネルメアのそんな言葉とともに、オルディネスはゴーレムの胸元に吸い込まれていった。苦しそうな叫びをあげながら、彼は消えてしまったのである。

 あまりのことに、私達は唖然としていた。なんだか、訳がわからない。ネルメアは、一体何をしているのだろうか。


「……ネルメア、あなたはわかっていないんですか?」

『あら? 何をかしら?』

「彼は戦いを望んでいません。復活すら望んでいない。それなのに、どうして……」

『それは彼ではないわ。私の知っている彼は、闘争心に溢れる人だった。さっきのは、失敗作に過ぎないわ』


 メルティナの言う通り、オルディネスは戦いも復活もを望んでいなかった。それをしていたネルメアを諫めた程である。

 だが、そんな彼は暗黒の魔女にとっては失敗作でしかないらしい。彼女の望んでいるオルディネスは、復活を望み、私達を排除しようとするような人物なのだろう。


「……なんて愚かな」

『愚か? この私が?』

「まさか、本当にわかっていないのですか? 先程のあなたの夫が、どういう存在だったかを……」

『……何を言っているの?』


 メルティナは、驚愕していた。彼女が何をそんなに驚いているか、私達にはわからない。

 どうやら、メルティナは私達やネルメア自身もわかっていないことを掴んだようだ。それは、彼女があのように表情を変える程に衝撃的なことであるらしい。


「ゴーレムの中にあるあなたの夫の魂を、よく分析してみてください」

『そんなことはするまでもないことよ。あの人の魂は、何度も見てきた』

「……それなら、目をそらしているのですね?」

『あなたは、さっきから何を言っているの?』

「いいでしょう……それなら、見せてあげます」

『……え?』


 メルティナのそんな言葉の直後に、私の頭の中には映像のようなものが流れ込んできた。

 それは、先程の場面だ。オルディネスが見えているため、それは間違いない。

 どうやら、彼女はこの場にいる者達全員にその映像を送っているようだ。自分が見たものを、私達にも理解させようとしているのだろう。


『これは……』


 その映像を見て、私は理解した。メルティナが、何に驚いていたかを。

 オルディネスの体には、魂が入っている。それは、彼の魂だ。

 しかし、その魂は大半を別のもので補っている。その補っているものとは、ネルメアの魔力だったのだ。

 つまり、先程のオルディネスは、ネルメアが自らの魔力によって作り出した虚像だったのである。彼女は、そんな自分が作り出した虚像の夫から、自分の行いを否定されていたのだ。

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