121.三位一体の魔法

『……その気概だけは、結構なことだけど、あなた達小粒が何人いたって、私のゴーレムを倒せはしないわよ』

「シャザーム……これは、念話の類か。頭に直接語り掛けてきているという訳だね……」

「暗黒の魔女、俺達が前と同じだと思わないでくれ。男子三日会わざれば、なんとやら。成長した俺達の力に、精々恐れおののくがいいさ」


 ネルメアは、私達だけではゴーレムを倒せないと思っているらしい。

 確かに、彼女からすれば、私やドルキンスは小粒だろう。そんな私達よりも秀でたキャロムでさえ、そうなのだから、それは間違いない。

 しかし、そんな私達にもできることはある。そのために、ここまで厳しい修行に耐えてきたのだ。


「よし、二人とも僕に合わせてくれ!」

「ああ!」

「ええ!」


 キャロムは、目の前に魔力の球体を作り出す。それに合わせて、私とドルキンスも魔力を集中させる。


『何をしようとしているのかは、知らないけど……私のゴーレムが、負けることなんてないわ!』


 そんな私達の前に、ゴーレムがもう一体現れた。どうやら、私達を素早く片付けるために、戦力を増やしたらしい。

 それは、私達にとってある種都合がいいことである。なぜなら、今から使う魔法なら、二体くらいは巻き込めるからだ。


「ふっ……まったく、僕も舐められたものだね。こう見えても、天才だというのに……」

「そんなキャロム君だからこそできるこの一撃で、あいつを驚かせてやればいいさ」

「……いや、僕一人ではきっとできなかったよ。二人がいたから、この魔法が使えるんだ。百年に一度の天才を支えてくれるかけがえのない人達がいるから……」

『……これは!』


 キャロムの魔法に合わせて、私とドルキンスも魔法を放つ。体に流れる魔力のほとんどを込めたその魔法は、キャロムの魔法と一つになる。


「理解したかい? 三つの属性の魔力を一気に解き放つことでできるこの魔法を!」

『三つの属性……だからこそ、三人で!』

「その通りさ! 僕が火、ドルキンスが雷、シズカさんが氷、それらのバランスを保ったこの魔法……トライアングルなら!」


 私達の魔法は、ゴーレムの一体に着弾した。すると、その瞬間、ゴレームが爆発する。

 三つの属性を持った魔法の威力は、莫大だ。いくら頑丈そうな岩の巨人も、その力には耐えきれなかったようだ。

 そのまま魔法は、もう一体のゴーレムの元に向かって行く。結果は同じだ。二体目のゴーレムも爆散したのである。


『馬鹿な……これ程の力が?』


 二体のゴーレムを破壊して、魔法は消滅した。成果としては、充分だろう。ネルメアの戦力は、これで後ゴーレム五体だ。


「くっ……」

「がはっ……」

「うっ……」


 ただ、その代償として私達は、その場に膝をつくことになった。ほぼ全魔力を放出した私とドルキンス、魔法の調整役だったキャロム、皆既に限界だったのである。

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