107.対等な関係

「身分の差か……私にとって、それは当たり前ではなかった。でも、この世界ではそれが当たり前なんだよね……」

「ええ、そうなんです」

「それは、どうにかできないものなのかな?」

「そうですね……どうすればいいのかは、正直私にもわかりません」


 私の言葉に、メルティナはゆっくりと首を振った。流石の彼女でも、この国の摂理ともいえる身分の差に関しては、すぐに解決方を見つけられる訳ではないようだ。


「それなら、私から一つ提案をしてもいいかしら?」

「提案ですか?」


 そんなメルティナに対して、アルフィアはそう切り出した。彼女の表情は、先程までとは変わっている。暗い顔から、少し明るい顔になっているのだ。

 もしかして、彼女は何か思いついたのだろうか。その表情からは、そんな印象を受ける。


「まあ、根底に根付いているものをすぐに取り払える訳ではないとは思うけど……これからは、そういうことは気にしないでもらいたいの」

「気にしない、ですか……」

「ええ、私はそんな関係になれる人が欲しい。対等に話せる人が欲しいの。シズカはそれに近いのかもしれないけど……メルティナやファルーシャとも、そうなりたいと思っているわ」


 アルフィアの提案は、とても単純なものだった。

 身分の差を気にしないで欲しい。それは、非常にわかりやすいお願いである。それが難しいから、私達は先程まで悩んでいたというのに。


「そうですね……そういう関係になれれば、それは素敵なことなのかもしれません」

「ええ、確かにその通りです」


 アルフィアの言葉に、メルティナとファルーシャはゆっくりと頷いた。

 二人も、彼女と対等な関係になるということには、好意的なようである。それはもしかしたら、私達が体験したことが関係しているのかもしれない。

 私達は、暗黒の魔女シャザームと戦った。その過程で色々なことがあったが、奇妙な体験を共有したのだ。

 だからこそ、対等になりたいと思うのかもしれない。かけがえのない友人になりたいとそう思うのかもしれない。


「もちろん、あなたもよ」

「ええ、そうですね、シズカさんもです」

「私達皆で、対等な関係になりましょう」

「うん、そうだね」


 それは、きっといいことなのだろう。友人関係に優劣なんてないのだから。

 そこで私は、バルクド様とリオーブ様のことを思い出していた。もしかしたら、彼らのような関係こそが、私達の理想なのかもしれない。

 そんなことを思いながら、私達は話を続けるのだった。

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