64.研究室の魂

 私達は、ファルーシャの実家であるラルキネス侯爵家の屋敷に来ていた。

 事前に連絡していたこともあって、すぐに部屋には通してもらえた。別の馬車で来ていたレフェイラの体とディゾール様も一緒だ。


「確か、ここに扉が……」

「これは……」


 レフェイラは、自室のカーペットを捲った。すると、そこには戸があった。これが、例の研究室に続く戸なのだろう。

 ファルーシャは、ゆっくりとその戸を開けた。見えてきたのは、梯子である。


「レフェイラ嬢をこの中に入れるのは、難しそうだな……」

「ええ……とりあえず、そこのベッドに寝かせておいてください」

「それが良さそうだな……」


 ファルーシャの指示に従い、ドルキンスはレフェイラをベッドの上に寝かせた。

 とりあえず、彼女はここに置いて行き、魂を回収してから、ここに戻ってくればいいだろう。


「さて、それでは中に入りましょうか……この梯子を下りれば、研究室です」

「よくこんな場所が作れたわね……」

「シャザームは、高度な魔法を使えましたから……」


 ファルーシャに続いて、私達は梯子を下りていく。

 下りた先は、確かに研究室といえそうな場所だった。怪しげな器具がいくつも並んでいるそこは、何か実験などが行えそうである。


「……あれが、魂なのかな?」

「ええ……そうです」


 魂がどこにあるかは、すぐにわかった。明らかに、そうとしか思えないものが、私達の目の前に会ったからだ。

 大きなガラスでできたケースの中に、光の球体が漂っている。片方は、大きな球体が一つ、もう片方は小さな球体が複数。どちらがどちらの魂かも明白だ。


「キャロム、お願いできるかしら?」

「ああ……やってみるよ」


 キャロムは、大きな魂が入っている方のケースに手をかけた。彼は、その手をゆっくりと引く。すると、ケースの中から魂が引き抜かれる。


「……うん、間違いなさそうだ。これは、レフェイラさんの魂だよ」

「わかるの?」

「ああ……そういう風に魔法を開発したからね。よし、それじゃあ、この魂を体に戻しに行こう」

「梯子は登れそう?」

「問題ないよ。魔力で運ぶからね」


 言葉とともに、キャロムは梯子を登って行った。その隣に、レフェイラの魂を浮かべながら。


「さて、キャロム君一人では心配だ。俺も上に戻ることにするよ」

「ええ、お願いするわ。私達は、とりあえずこの研究室を調べてみるわ」

「ああ」


 ドルキンスは、キャロムについて行った。この場に残ったのは、私、ファルーシャ、ディゾール様の三人だ。

 これから、私達でこの研究室を調べる。まず向き合わなければならないのは、目の前にあるアルフィアの魂だろう。

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