39.生徒会長の見解

「それで、お前達はここに来たという訳か」


 私とメルティナは、生徒会室まで来てディゾール様に事情を説明していた。全てを聞いて、彼は考えるような表情をしている。私達の説明を吟味しているのだろう。

 私達の考えは、推測に過ぎない。だが、学園でも随一の才能を持つメルティナやキャロムの推測である。それなりの説得力はあるはずだ。


「なるほど、どうやら、考えることは同じだったようだな」

「考えることは同じ?」

「その推測なら、俺から既に教員達に伝えておいた。俺もお前達と同じ推測をしたからだ」

「なっ……」


 ディゾール様の言葉に、私とメルティナは驚いた。まさか、ディゾール様が同じ推測をしていたとは思っていなかったからである。

 だが、考えてみれば、彼も学園の中で随一の才能を持つ者の一人だ。そんな彼なら、一人でその結論まで辿り着いてもおかしくはないのかもしれない。


「教員達は、念のために捜査すると言っていたが、本当の所は怪しい所だ。奴らは、ことを荒立てたくないと思っている。レフェイラ・マグリネッサ伯爵令嬢が犯人、それで終わらせられるならいいとそう思っているだろう」

「そ、そんな……」

「ふん、奴らなど所詮その程度のものだ。面倒なことは避ける。それが、この王立魔法学園のやり方だ」


 どうやら、教員達は当てにならないようだ。教員達からの信頼も厚いディゾール様が言っても駄目だった。ということは、他の誰が言っても教員達は動いてくれないだろう。

 それは、少し困ったことである。生徒達よりも力を持った教員達が動いてくれないと、犯人を捜すのはかなり困難なはずだ。


「だが、所詮奴らなど元々当てにはならなかっただろう。この俺やお前達にわかる程度のことがわからなかった連中だ。そんな奴らに真犯人が見つけ出せる訳もない」

「き、厳しいですね……」


 ディゾール様は、私の考えとは正反対の考えだった。元より、彼は教員達をあてにしてなかったようだ。

 その辛辣ともいえる意見は、彼らしいといえば彼らしい。この厳しさこそが、ディゾール様なのだ。


「そこで、俺はお前達に一つ頼みたいことがある」

「頼みたいこと?」

「俺は、今回の事件には確実に裏があると思っている。それは推測ではない。ただの勘だ。だが、俺は自らの勘に自信を持っている。故に、俺は犯人を捜すつもりだ。しかし、俺一人の力では限界がある。そこで、協力者が欲しい」

「協力者……」

「自力で仮説を導き出したお前達なら、信用できる。俺に手を貸せ。お前達に、その気があるならな」


 ディゾール様は、口の端を歪めていた。その面構えは、どちらかと言えば悪役である。

 私とメルティナは、顔を見合わせた。彼女の表情を見て、私は理解する。答えは、既に決まっているのだと。


「私達で良ければ」

「ふん、ならば、これからよろしく頼むぞ」

「はい」


 私達は、事件の黒幕を探している。そんな私達にとって、彼の提案をはねのける理由などなかった。

 こうして、私達はディゾール様と協力関係になるのだった。

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