37.魔法を使える場所

「アルフィア様、どうしたのですか?」

「メルティナ、魔法の実技の授業というのは、魔法を使う授業よね?」

「ええ、そうですよ……あ!」

「魔法の実技の授業で魔法を使うのは当然のこと。そこで魔力が検知されたとしても、それは何もおかしいことではないわ。つまり、そこでなら自由に魔法が使えるということよ」

「確かに、そうですね……」


 私達は、昼休み前に魔法の実技の授業を受けていた。そこでは、魔力を実際に使っているが、それは学園で禁止されていることではない。当然のことではあるが、実技の授業で魔法を使わなければ、授業にならないからだ。

 つまり、そこで魔力が検知されても気にも止められない。当たり前のことなのだから、気にする必要はまったくないからだ。


「キャロム、どうかしら? 体育館内で誰かがレフェイラに魔法を使った。そうは考えられない?」

「……ああ、とても単純だが、可能性はあるだろうね。いや、その可能性が高そうだ。それなら、問題は全てクリアできる」

「すごいな、アルフィア嬢、よく思いついたものだ」

「いいえ、別にすごくなんかないわ。何れ、誰かが気づいていたことだろうし……」

「それに最初に気づけたことが、すごいんじゃないか」


 褒められているが、別に私は何もすごいことなどしていない。当たり前のことに気づいただけなのだ。

 どうして私を含めて皆気づかなかったのか。そう思う程に、ことは単純である。何れは、確実に誰かが気づいていたはずだ。

 偶然私が早かったのは、恐らくメルティナとキャロムの実技の授業での謝罪を俯瞰して聞いていたからというだけの理由だろう。当事者でなかったため、謝罪の内容以外のことも考えられた。それだけのことだろう。


「どうやら、私達は難しく考え過ぎていたみたいね」

「そうかもしれない。だが、気づけたのは大きなことだ。レフェイラに実技の授業中に誰かが魔法をかけた。この線で考えてみよう」

「そうなると……黒幕は、私達のクラスメイトということになるわね」

「ええ、そうなりますね……」


 もし私の予測が正しいとしたら、黒幕はクラスメイトの誰かになる。あまり考えたいことではないが、いつも教室でともに過ごしている者達の中に、クラスメイトを操っている者がいるのだ。


「犯人がいるとしたら、その人物は授業中にレフェイラさんに近づけた人物だ。クラスメイトのいる中で、見られないように魔法を使うためには、そうする必要がある」

「授業では、四人組を組んでいたわね。その四人組の中に、犯人がいるのではないかしら?」

「その可能性もある……ああ、でも、僕が余計なことをしたせいで、あの時の授業は滅茶苦茶になっていた。あの騒動の中でレフェイラに近づいていたとしても、不思議じゃない」


 レフェイラに近づく隙は、授業中にいくらでもあった。クラスメイトの誰でも、彼女と接触することは可能だっただろう。

 事前に打ち合わせておけば、近づいて魔法を使えば、それで終わりだ。


「ああ、でも、あの戦いの最中で魔法を使えば、それは検知されるのかな?」

「いいえ、あの戦いの中で、多くの人達は魔力を使っていたと思うわ。二人の戦い……というよりも、あなたの攻撃が激しかったから、思わず魔力で体を守った人は少なくないの」

「……益々、僕は余計なことをしていたみたいだね」


 実技の授業中であることから、魔力を使う機会は多い。そこに紛れて魔法を使ったのなら、それはまったく手がかりが残らないだろう。

 学園の魔力の検知は、魔力の検知しか行わない。どんな魔法を使ったかまでわからないため、それで判断することはできないだろう。

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