14.妙な反応

 魔法学園入学二日目、私は今日も当然教室に来ていた。

 今日から、授業が始まる。多くの人にとっては、初めての授業だ。しかし、私は前にいた世界でも学校に通っていたので、久し振りの授業である。


「アルフィア様、おはようございます」

「ええ、おはよう、メルティナ」


 教室に来て自分の席に座ると、メルティナが挨拶をしてきた。それに対して、私も笑顔で挨拶を返す。

 昨日は、入学式を終えて、寮に来て、それからメルティナとほとんど行動を共にした。関わらないようにしようと決めていた彼女と、あそこまでともに過ごすことになるなんて、私の当初の計画は既に破綻しているといえる。

 だが、別にあまり問題はないはずだ。既に、メルティナとアルフィアの関係はゲームとは大きく違う。これで、ゲーム通りの末路を辿るとは思えない。

 そのため、私はメルティナと普通の友人として振る舞うことに決めた。多分、それでいいと思うのだ。


「昨日は、色々とありがとうございます。おかげで、楽しい時間が過ごせました」

「別に気にしないで……というか、そんな言い方はしなくていいのよ。楽しい時間が過ごせたのは、お互い様なのだから」


 とはいえ、これから私が豹変して彼女を虐めたとしたら、悲惨な末路を辿る可能性はある。そんなことをするつもりは微塵もないが、何かのきっかけで大変なことになるかもしれないので、油断は禁物だ。


「アルフィアさん、おはようございます」

「あ、バルクド様、おはようございます」


 そこで、私にバルクド様が挨拶をしてきた。私が教室に来た時にはいなかったので、恐らく今登校してきたのだろう。

 彼の後ろには、リオーブ様もいる。彼が時間ぎりぎりに来ていないということは、バルクド様が引っ張ってきたのかもしれない。


「……あなたは、メルティナさんでしたね? 僕は、バルクド。アルフィアさんの婚約者です。どうぞ、よろしくお願いします」

「あ、いえ、ご丁寧にどうも……」


 バルクド様は、私の隣のメルティナに挨拶をした。その挨拶に、彼女は少し顔を引きつらせる。

 私にとって、それは少し意外な反応だった。私に対して堂々と話しかけたメルティナが怯んでいることに、少し違和感を覚えてしまったのだ。

 王子である彼と話すのに緊張するなら、公爵令嬢でも緊張するのではないだろうか。平民からすれば、身分が上というのは変わらないのだから。

 いや、それでも違うものなのだろうか。異性と同性の違いもあるし、もしかしたら彼女の中では色々と差があるのかもしれない。


「こっちは、リオーブ。僕の親友です」

「お前は、躊躇わないでそういう紹介をするよな……」

「うん? 何か変だろうか?」

「いや、変ではないが……」


 続いてバルクド様は、リオーブの紹介をした。その紹介は、リオーブにとって少し恥ずかしいものだったようである。

 だが、事実として二人は親友だ。誰から見ても紛れもないことである。だから、リオーブもそれを否定しないのだろう。


「……まあ、これから、よろしく頼むぜ、メルティナ」

「あ、はい……よろしくお願いします」


 リオーブの挨拶には、メルティナは特に顔を引きつらせたりはしなかった。

 どうやら、彼女にとって特別だったのは、バルクド様だけだったようだ。やはり、王子という地位が影響しているのだろうか。


「さて、そろそろ朝のホームルームも始まるでしょうし、席に戻りますね」

「あ、はい」


 私が色々と考えると、バルクド様がそう言ってきた。言葉の通り、彼とリオーブは自分の席に戻って行った。

 次の瞬間、担任の教師が教室に入って来る。それからすぐに、朝のホームルームが始まるのだった。

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