第545話「決勝、または次回強制イベント告知」
決勝戦は準決勝が終わった日の午後だった。
LPやMP、アイテムなど、消耗したものはすべて元通りになるため問題はないが、予選と違って死力を尽くして準決勝を戦ったため、精神的な疲れは残っていた。
ライラとバンブ、果たしてどちらの方が手強い相手となるのかはやってみなければわからないが、精神的にはライラ相手の方が疲れそうなのは確かである。
これはきつい戦いになるかもしれない、とレアは思った。
とはいえ、負けるとまでは思っていない。
「しまったな。ラルヴァのせいでそれなりに疲れてるんだけど。はしゃぎすぎたか」
「……こっちもね。色々あって……。ていうか、さっきのノウェムちゃんの姿は何? あれって『変身』? なら元になった子がいるってことだよね? どこにいるの?」
「さっきのを見た上で、それを教えると思う? てかオクトーが疲れてるのは自業自得でしょ。シンプルに気持ち悪いよ」
「じゃあこうしよう。私が勝ったらさっきの子に会わせてもらうってことで」
「無視か。まあいいけど。
ならわたしが勝ったらオクトーは何をしてくれるの?」
「多分私が勝つだろうからそんなの気にしなくてもいいと思うけど、そうだな……。ひとつだけ何でも言うこと聞いてあげるよ」
「わたしにメリットなくない?」
「超あるよ! まあ、考えておいてよ。きっと無駄になるけど」
「ていうかその自信はどこからくるのさ」
「セプテムちゃんこそ」
ライラが不敵に笑う。
「ところで、ベヒモスを持って来なくてもよかったの?」
「あんなものに乗ってきたら、警戒して開幕から消し飛ばしちゃうでしょ」
そうかもしれない。いや、あれば邪魔だし、間違いなくそうするだろう。
「じゃあ、その妙な丸い物体は何なの? それなら警戒されないって事?」
ライラの背後には大きめの丸い物体がふたつ鎮座していた。
ご丁寧に『邪なる手』で隙間なく覆われており、中身が何なのかはわからない。
昆布巻き、と言いたいところだが、形状と色からすると太古に存在したという伝説の1000円ガチャに見えなくもない。
「警戒はするだろうけどね。正体が分からない以上は、いきなりどうにかしようとは思わないでしょ。例えばこれが、私が密かに開発しておいた爆弾だったりするかもしれないし。威力次第では引き分けに持って行けるってくらいの」
さすがにそんな危険なものを自分自身に密着させて持ち込むような危険な事をライラがするとは思えない。
しかし自爆覚悟の相討ち狙いと言うなら有り得ないでもない。
だとしたら何が起爆のトリガーに設定されているのかわからない以上、確かに迂闊に攻撃するのも憚られる。
何となく会話が途切れた。
恒例の長い前説が虚しく戦場に響いている。
ライラの紹介の内容が酷すぎるため、なぜか相対的にレアの株が上がっているように聞こえて少し笑いが込み上げる。
手持ち無沙汰にあたりを見渡してみると、戦場にはどこかでみたことがあるような、それでいて初めて見るような、そんな光景が広がっていた。
いや、この光景を戦場と表現するのは間違っている。あるいは、まだ早い。
そのバトルフィールドはどう見ても都市だった。
遠くには城のようなものも見える。あれはただの背景という感じではないが、何か意味があるのだろうか。
「──これ、オクトーの申請したフィールド? 街かな。なんで?」
「……セプテムちゃんさあ。どうせ地形の申請なんてした事ないんじゃない? ていうか、そもそもどんな地形が申請出来るのかさえ知らないんだろうね。だからそんな呑気なことが言える」
「そりゃ、別にどこでも同じだし」
「そういうところだよ。今日だってラルヴァなんかにいいようにやられちゃってもう。
──だからいつか洒落にならない事態になる前に、お姉ちゃんが分からせてあげる」
《──それでは、闘技大会決勝戦! 【マグナメルム・セプテム】VS【マグナメルム・オクトー】! 試合開始!》
*
「さて──おっと!」
試合開始と同時にライラが突っ込んできた。
器用に『邪なる手』を伸ばし、謎の丸い物体は握りこんだ状態で元居た場所に置いたままでだ。
あれがライラが言うように本当に爆弾で、相討ち覚悟で持ち込んだのだとしたらライラ自身から引き離さない方がいいはずだ。
それをあっさり置いてきたという事は、やはりあれは爆弾などではないのかもしれない。
「珍しいんじゃない? こんな積極的に攻めてくるなんて」
「ま、たまにはいいでしょう」
レアやライラの修めている古武術は後の先、カードゲームなどで言うところの後攻ワンキルを是としている流派である。
ゆえに初手は相手に譲り、的確にそれに対処するのが望ましい動き方になる。
にもかかわらず、ライラは先手を取って攻撃してきた。
絶対に何かある。
しかしその何かについて、落ち着いて考えを巡らせる事は出来なかった。
ライラの苛烈な攻撃のせいだ。
能力値に差があるため、レアにはライラの動きがよく見える。対処も出来る。
しかしそれが容易かどうかと問われるとそうでもなかった。
バンブのような真っ直ぐな攻撃とは違い、ライラは実にいやらしい攻撃をしてくる。
今その瞬間に、レアが最も打ってきてほしくない場所に攻撃がくるのだ。それも、ライラ自身の2本の腕だけでなく、背中から伸ばした数本の『邪なる手』も合わせてである。
しかも毎回そうかと言えばそうでもなく、数度正確に死角をえぐってきたかと思えば、その後は急に甘い手を打ってきたりもする。
攻撃にランダムに緩急が付けられているのである。
ライラの攻撃にはそれほどの速度はないが、いつの間にかレアの打とうとした先に予めライラの拳や『手』が置かれていたりもする。
じっくり見れば、ぬるりとしか言いようがない動きでもって、実に正確に手を打ってきている。
ライラ自身が出せる速度とレアの速度、その差を計算し、ライラにとって最適な結果になるようにそう誘導されているのだ。
レアの方が能力値が高いにも関わらず、主導権を握っているのはライラの方だった。まるでゲームの低レベル攻略動画のお手本でも見せられているかのような気になってくる。
レアの癖をよく知られているから、という事もあるだろう。
レアはたゆまぬ鍛錬により、理想となる技の動きを完全に再現する事が出来てはいるが、それはレアと同じく祖母の手ほどきを受けたライラにとっては予測しやすいという事に他ならない。
しかしレアとて、いいようにやられていた以前とは違う。
理想となる動き、教科書通りの動きと言うのは、それ以上のものがないからこそ理想なのだ。
長い歴史の中で培われ、連綿と受け継がれてきた術理の前では、奇策の類は意味を成さない。
ライラは確かに理想の型を知っているのかもしれないが、それだけでどうにか出来るほど流派の歴史は軽くはない。
ぬるりとしたライラのいやらしい動きが、レアの数手先の行動の「起こり」を潰そうとしたものである事は確かだ。
であれば逆にライラの動きから、レアのどういった行動を予測して動いているのかもわかるはずだ。
それをレアの方で制御し、誘導してやれば、今ライラにやられている事を逆に行なう事も出来る。
レアはこれでも師範代である。
たとえ文字通りライラの手数が多いのだとしても、つまり相手が複数の仮想敵であったとしても、それに対応できないことはない。
「──おお? 動きが……。なるほど、様子見は終わりって事か!」
「そう、だね。これで……、詰みだ!」
レアの行動を予測して動くライラの行動を誘導し、それにライラが気付く前に高速で動いて強引に手を潰した。やはり速度と力は全てを解決する。
そうして出来たライラの隙に、レアは正拳突きを叩き込んだ。
レアのこの攻撃に対し、ライラは全ての行動をキャンセルして胸の前で腕をクロスさせ、さらに幾本もの『邪なる手』でガードして凌ぐ。しかし勢いまでは殺せず、大きく後退して元の丸い物体のあたりまで戻っていった。
「──さすがはセプテムちゃん。そんな姿なのに、これぞ正道と言わんばかりの技で返り討ちにされてしまったね」
そう言いながらも、ライラはそれほど悔しそうには見えない。
それを確認したレアは、今突きを打った右の拳を眺めた。
なんとなく違和感があった。感触がおかしいと言おうか。
レアの力で突きを放ったなら、ライラがたとえどれだけ勢いを殺せていたとしても、おそらくガードした腕の骨くらいは砕けているはずだ。
しかし今の攻撃ではそうしたダメージを与えられたようには思えなかった。
何と言うか、硬いゴムの塊を殴りつけたような、それとも少し違うような、現実ではありえない感触。
そう、自分と同程度の防御力か、やや高い防御力を持つ何かを攻撃したかのような感触だったと言えばいいだろうか。ゲーム特有の不思議感覚であった。
ライラの腕や『手』の防御力が、レアの拳と同程度というのは考えにくい。
であればそれは何を意味しているのか。
「ふうむ。私としては結構うまくやったつもりだったんだけどね。さすがに気付いちゃったかな」
「……オクトー、何をしたの?」
「何をしたっていうか、最初からしてたんだけどね。だから言ったでしょう。地形も気にしなさいよって」
ライラはそう言うと、ゆっくりと丸い物体を覆う『邪なる手』を剥がしていく。
そこに現れたのは虹色に輝く、水晶のような、丸い──。
「──それ、は。精霊王の心臓……!」
「その通り。そして私が申請した地形は、王都だ」
精霊王の心臓を起動させるためには、6大国の王都というロケーションが必要になる。
周りを見た限りでは、ここはどの国の王都でもないようだった。
しかし運営が大会の為に用意した環境であるのなら、「王都」として求められる要素はすべて備えているという事なのだろう。
どこの国のものでもないこの王都は、同時にどこの国の王都としても機能する。
そういうことだ。
「……さっきの違和感は。わたしの力が落ちていたから、か」
精霊王の心臓は、効果範囲内に居るあらかじめ登録した者以外の全ての者へ強力なデバフ効果を付与する能力を持っている。
「実際に殴るまで気がつかなかった。忌々しいな、もう」
その理由はライラの巧妙な戦闘技術にある。
ライラは落ちていくレアの戦闘力に合わせ、絶妙に手加減して合わせる事で、デバフの存在を悟られないようにしたのだ。
もちろん戦闘以外の事であっても能力値低下を感じる事は出来ただろう。
しかしそうした事に意識が向かないよう、緊張感のあるギリギリの戦闘を演出してみせた。
おそらく、ライラの戦い方にレアが対応してくる事も想定していたに違いない。その頃にはもう手遅れだろう事もわかっていたのだ。
「この世界の
『邪なる手』はそのほとんどが精霊王の心臓から剥がれていたが、それぞれ一本ずつが残され巻き付けられていた。
ライラがその残された『手』に力を込める。
「欲を言えばもう少し削っておきたかったけど、まあふたつも使えば大丈夫でしょう。これの効果だけでは0には出来ないらしいけど。
じゃあね、セプテムちゃん。これからは慢心せずにお姉ちゃんの言う事を全部何でも聞くんだよ」
「……全部何でもはおかしいでしょ」
キィン、と水晶が砕ける音が鳴る。
聞き覚えのある音である。忌々しい記憶と共に、一気にレアの身体が重くなる。
「これでとどめだ。『ホーリー・エクスプロージョン』」
ライラが放った『神聖魔法』がレアのLPを削りきり──
レアの腰のうさぎが弾けて飛び散った。
「──死なない? なぜ……。まさか、そのぬいぐるみか! 単なる痛いファッションじゃなかったのか!」
「痛いとは人聞きが悪いな。可愛いでしょあれ」
「いや急にあんなもの付けてくるから、てっきり人気取りの可愛いアピールかと。観客もたくさんいるし」
「馬鹿なの?」
現在レアは『魔の鎧』の効果により、LPへのダメージはMPで肩代わりする事が出来る。
しかし精霊王の心臓の破壊による急激なLP減少は肩代りされなかった。あれはダメージではないため仕方がない。
ライラの放った『ホーリー・エクスプロージョン』は弱体化したレアのMPとLPをすべて削りきってみせた。
が、その致死ダメージはくる身代わり人形が肩代わりしてくれた。
くる身代わり人形の「致死ダメージを受けた時、そのダメージを無効にする」という効果により、ライラの魔法によるダメージの全てが無効になり、レアは失うはずだったMPもLPも残す事が出来たのだ。
引き換えにうさぎのぬいぐるみは弾け飛んでしまったが仕方がない。
そして動揺しているライラとくだらない問答をしている間に、破壊された精霊王の心臓に遺された最後の10秒が経過し、レアの全能力値が元に戻った。ただし、LPとMPは大きく削られたままだ。失われてしまった分は戻らない。
「……だけど、それだけ消耗していれば、まともな戦闘など出来ないはずだ!」
「そうだね。『
ライラの言う通り、今使った『回復魔法』でMPはほとんどを使い切ってしまった。
となればあとは物理で何とかするしかない。
「だからまともじゃない戦闘をしようと思う。付き合ってもらうよ。『解放:多脚』、『解放:金剛鋼』、『解放:巨大化』、『解放:鎧』──」
レアの下半身がみるみるうちに膨らんでいく。
巨大化することで上昇するSTRをもってすれば、近接戦闘に向かない邪王を圧殺する事も難しくはない。MPなど必要ない。
またVITも上昇するため、状態異常攻撃もほとんど通用しなくなる。
『
命中率の低下が問題ではあるが、それも一応解決策が無くもない。
レアは巨大化していく途中に、下半身から生えている鎧姿の巨人の手でライラを捕まえた。
「変化の途中で攻撃してくるのか! そんなのありなの!?」
完全に巨人になってしまえば小さなライラを捕まえるのは困難だが、巨大化の途中であればまだ狙いも付けやすい。
もちろんその分振るえる力も中途半端なものになるが、レアとライラの能力値差なら拘束するのは問題ない。
「それなら、こっちだって! 『解放:鎧』、『解放:金剛鋼』、『解放:巨大化』──」
ライラはレアの手から逃れようと、自身も巨大化を発動した。
そうはさせじとレアも巨人の両腕を使って拘束を維持しようとするが、ライラは下半身をぬるぬるした紐状の生物のものに変化させる事で拘束を逃れる。
そして王都の街並みで、巨大なアラクネーと巨大なラミアが対峙することとなった。
「同じ条件なら、まず負けないよ。たとえわたしに魔力が残っていなくてもね」
挑発してもライラは今度は安易に攻撃はしてこず、レアの様子を窺っている。
そういうことならばと、今度はレアの方から突進し、攻撃を仕掛けた。
ライラはその姿からは思いもよらないほど俊敏な動きで突進を躱す。
「『解放:翼』」
そのままレアの背後を取ろうとしたライラだったが、レアは追加で翼も出し、これを打撃武器として、背後に回ったライラに裏拳のように叩きつけた。
それをライラは『邪なる手』を何本も束ねる事で受け止めた。
さらにレアは反対側の翼も握り、打撃を加える。
束ねた『邪なる手』と言えどもこの衝撃には耐えきれず、糸がほつれるようにバラバラになった。
「くうっ!」
ライラはたまらず、下半身の蛇身をくねらせてジャンプし、後方へ退いた。器用なものだ。
──あの位置なら、ちょうどいいかな。
レアは逃げたライラに向けて左手を伸ばし、指先を数本軽く折り曲げてみせた。
「──糸か! そうはいかないよ!」
ライラはレアの左手から糸が放たれる事を警戒し、逃れるためにレアから向かって右側に動いた。
しかし、それこそがレアの仕掛けた罠だった。
ライラが避けた先は、先ほどまでレアが居た場所の近くである。
そこにはすでに、レアの糸が張り巡らされていた。
勘の鋭いライラに糸を巻きつけるのは容易ではない。
ならば予め糸による罠を用意しておいて、そこへライラの方から来てもらえばいい。
レアが左手を上げたのはブラフだった。
そこから糸が発射されると考えれば、ライラは高確率で左に、レアから向かって右に逃げる。
「これは──罠か!?」
「そう。さっき張っておいたやつ」
普段のライラであれば、ここまであからさまなフェイントに引っ掛かる事は無かっただろう。
しかし必ず決まるはずだった策は失敗し、さらに慣れないラミアの身体での戦闘が重なり、集中力と判断力が落ちていたようだ。
ライラはレアと違い、あのラミアの姿で戦った事はほとんどない。
いかなライラと言えども、さすがにぶっつけ本番で何もかもうまくいくわけではない。
それにこれは最近分かった事だが、お互いに同じ条件で新しい何かを始めた場合は必ずライラの方が勝つ。しかし同じだけ訓練を積んだ場合であれば、必ずレアの方が勝つ。
ライラはおそらくだが、ずっと昔からそれがわかっていた。
だからこそ、今の状況はライラが望んだ展開ではないはずだ。ゆえに集中できていない。
ライラは動揺している。あまりそうは見えないが。
そこから回復するまえに、速攻で決着をつける。
わずかではあるが、糸を出すのもLPを消耗する。
だからあまり余計な事には使えない。確実に素早く対処する必要がある。
ライラの下半身からは謎のぬめりが分泌されているため、糸による拘束も長くはもたない。
レアは八脚に力を込め、一瞬動きを止めたライラに向けて飛びかかった。
呆然とそれを見上げるライラの上に着地し、そのまま八本の脚でライラの両腕から腰部分にかけてをがっちりと拘束した。
この部分ならぬめぬめもない。レアとライラのSTRの差から言っても、拘束を逃れる事は出来ない。
「オクトーも巨大化で生命力が増えているだろうけど……。知っているだろうけど、弱点部位を破壊されれば、それで即死してしまうことだってある。試してみようか」
レアは鎧の巨人部分の手で巨人ライラの頭部に生えた本体の上半身を握った。
「あ、それはやめて! たぶんヤバいやつ!」
「やめない。ヤバいのは知ってる。わたしにとっても共通の弱点だからね」
ライラの蛇身部分が暴れに暴れ、その尾がレアの鎧の背中を何度も叩く。
それが無駄だと悟るやいなや、打撃をやめて巻き付きと締め付けによってレアの上半身をどうにかしようとしてくる。『邪なる手』も身体に巻きついてくるが、鎧が不快な感触を遮断してくれる。
ライラのSTRではレアを完全に拘束する事は出来ない。とは言え無視はできない力によって徐々になけなしのLPが減っていくが、もうかまわない。それほど時間は必要ない。
レアはライラの身体を握る手に思いきり力を込め、そして手首を捻った。
《──試合終了です! 優勝は【マグナメルム・セプテム】! ご観覧の皆さま、素晴らしい戦いを見せてくれた両選手に拍手を!
そして全ての選手の健闘を、もう一度讃えましょう!》
*
NPCも参加可能と銘打ったせいか、報酬は決勝戦直後のこの場で渡されるようだった。
優勝がレア。
準優勝がライラ。
優秀賞とかいう曖昧なのがバンブとブランだ。
三位決定戦で確定したりはしないらしい。
優勝の商品は驚いた事に世界樹の実だった。
決勝戦で実を使ったアイテムを使用しているので、レアにとってはうさぎの毛皮の分マイナスである。
ため息をつこうと下を向いたら腰でうさぎが揺れていた。
そういえば復活するのだった。よかった。
副賞でアダマスのインゴットもあったが、これも別に必要ない。なんならミスリルの方が欲しかったくらいだ。
賞品については別に今回の目的ではないためなんでもいい。
目的はマグナメルムの力を示すこと。
そして黄金龍の復活と討伐について、「反対しても無駄だ」と広く世界に思わせること。
「──今回の事で、よくわかってもらえたと思う。この世界で最も強い、それでいて理性ある存在がこのわたしだということが。
ゆえにわたしは、理性ある強者の責任として、理性なき侵略者を討つ。
かつて、黄金龍を封印した者たちがいるということは知っている者もいよう。
しかしその中で、今もまだ存命である者は驚くほど少ない。
それは何を意味しているのか。
そう、いかに強い力を持っていても、それが永遠のものであるとは限らないという事だ。
そしてそれは、黄金龍を封じている結界にも同じ事が言える。
ならばこそ今なのだ。今しかないのだ。
今、この時しか黄金龍を滅するチャンスはない。
わたしにならばそれができる。
それはこの大会において証明されたはずだ。
わたしの知る限り、今大会には俗世に「災厄」と呼び称されている者たちも多くが参加していた。
しかし、その全てをわたしは打ち破った。
黄金龍が復活すれば、一時的に世界は大きな混乱に見舞われる事になるだろう。だが今ならば、その混乱も最小限に抑える事が出来る。この戦いに参加した者にならそれがわかっているはずだ。
──今よりひと月後、わたしは黄金龍の封印を解く。
それでもなお、わたしの道を阻むというのであれば、力を以て止めてみろ。
それが可能な者だけが、わたしに意見する資格がある」
盛り上がった空気をぶち壊す、そんな「では優勝者からひと言お願いします!」を残し、闘技大会は幕を下ろした。
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