3-3

 すべてが終わってから、先生は話してくれた。

「私は、人を愛せなかった」

 ポツリと呟く。わたしはわかろうともしていないくせに、相づちを打った。

「誰も愛せなかった」

 小さな先生の背中に、そっと寄り添う。

「何も愛せなかった」

 丸まった背中に浮き上がる背骨に頭が触れて、ズキリと痛む。

「自分すら愛せなかった」

 後ろから、ギュッと先生を抱きしめる。先生は肩を震わせて、

「なのに」

 涙を流して、

「君を愛してしまった」

 その時の先生は、たぶんこの世の何よりも、醜くかった。

 そんな先生が、わたしは大好きだった。


 次の日から先生は学校に来なくなった。夏休みが明けると、先生が急遽移動になったことが知らされた。

 それがわたしの初恋。

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