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 目が覚めた。今日も知らない他人の部屋の天井だった。

 隣でわたしに抱きつきながら眠っているこの人は誰だっただろう。ヒロキ? ヤスキ? いや、ユウキだったかも。名前は忘れてしまった。だって別にどうでもいいから。昨日のわたしのお世話をしてくれた。この事実だけで十分でしょう。うん。

 この人を起こさないよう、自分の身体にまとわりついた手を払いのけて、わたしはベッドから起き上がった。口をゆすぎたくて、電気をつけないで洗面台に移動する。途中、ちらかった部屋の中でいろいろな物を蹴り飛ばしたりしたが、きっとこの人は気づかないだろう。

 寝起きの粘っこい口内はとても不快だ。いっそ新しいものと取り替えてしまいたいくらいに、不快。

 蛇口から流れ出る水をすくって、乾いた唇にあてる。とっても冷たくて気持ちいい。それからゆっくりと口の中に含むと、水はスッととけるように馴染んでいく。飲み込んでしまいたくなる衝動に耐えながら、クチュクチュと水を口内で弄び、それから吐き出す。それを3度繰り返して、水を止めた。

 暗闇にぼうっと浮かび上がる人影。洗面台の鏡に映るわたしの裸だった。寝起きだと夜目が利いて、かなりはっきりと見える。

 貧相なからだ——男はどうして、こんなものに興奮できるのかしら。

 可哀そうなからだ——持ち主がこんなのだから、大切に扱ってもらえないのね。

「ほんと、同情するわ」

 徐に乳房を撫でる。何も感じない。飽きた。つまらないわ。

 わたしは部屋に戻り、脱ぎ捨てられた洋服をつまみ上げて、肌に重ねる。全てが重なったから、部屋を後にした。またいつかお世話になる日まで。

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