悪魔
そしてその晩のこと
「……と言う訳でカイラの祖母の居場所を教えてくれない?」
「いや、教える訳ないだろ」
「何で!?」
……私の思惑は早くも砕け散った。
その夜、結局カイラが退散することで仕切り直しになり私は寝ついた。多分シルアは眠れない夜だと思うけど。夢の中に現れた悪魔に私は即座に頼み込んだのだったが、すぐに拒否された。
「私は君がこの世界であがき苦しむ姿を見て楽しみたいだけなんだ。なのに何で悩んでいるところを助けてやらねばならない。私は君が本当に何の手がかりもなくカイラの祖母を助けるという道を進むのか、それとも二人のうちどちらかを犠牲にするのか悩み続ける姿を見て楽しんでいたいんだ。それなのに君の決断を後押しする情報を渡してどうする」
「そんなあ! 鬼畜! 人でなし!」
「悪魔だからな」
そう言って悪魔はけらけらと笑う。
悪魔に情報をもらうには何か対価が必要なようだ。とはいえ、私が悪魔に物を渡すことは多分不可能である以上、交渉材料として使えるのは私の行動で悪魔を楽しませることだろう。この状況で何か悪魔が楽しむような行動があるだろうか。残念ながら私には思いつかない。
いや、むしろここは逆転の発想である。情報をもらって悪魔を楽しませることは出来ないけど、情報をもらわなかったら悪魔が興ざめするような行動をとる。この作戦で行こう。
「仕方ない、分からないから組織に真正面から斬り込んで力ずくで探すしかないか」
私の言葉に悪魔はげんなりする。もしこんなことをすれば私が救出に成功するか、途中で斬り殺されるかの二つに一つだ。そしてどちらも悪魔にとって見ていておもしろい展開ではない……と思う。
もちろん常人であればそんな選択はとらないし、私も出来るならばやりたくない。しかしこれまでの私の行動から放っておくとそうなりかねないと思ったのだろう、
「そこまで言うならこうしよう。それなら君の一番仲が良かった人の名前を教えてくれないか?」
と謎の譲歩に出た。
「え、どうして急に? もしかして元の世界でその人を殺すとか?」
「残念だけど私にそちらの世界に干渉するほどの力はない。でもその名前を言ってくれたら教えてあげよう」
悪魔の意図は不明だけど、私と仲がいい人を利用して何かしてくるのは明白だった。しかし今更「やっぱおばあちゃんの居場所が分からなかった」では済まない。しかし悪魔に元の世界をどうこう出来る力があるのならば、死にかけの私で遊ぶこともないはずだ。
「桜ちゃん」
私は部活仲間の斎藤桜の名前を出す。すると悪魔は満足そうにうんうんと頷く。
一体何を企んでいるのだろうか。
「分かった、じゃあ場所を教えてあげよう」
「ありがとう、悪魔」
「知ってるか? 悪魔はお礼を言われるより罵られる方が好きなんだ。あと次の生命の実だが、こいつらがいる闇の組織の長が持ってるから。そっちもちゃんと探してくれないと困るぞ」
そう言えばまだ次の生命の実の場所は聞いていなかった。
「ありがとう、それなら一石二鳥だね」
「……こいつ、心が強すぎるな。まあいいか。いずれそれを利用して搦めとってやる。ちなみにカイラの祖母は王都郊外の廃屋に軟禁されている」
その後私が悪魔に詳しい位置を聞いていると、唐突に悪魔の姿が歪んだ。
「ん、どうした?」
「お前が目覚めそうになっているだけだ」
「え、何で……はっ」
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